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#044【放射線治療終了後43日目】一歩前進二歩退却

2019年6月27日

体調は二転三転して、今はちょっぴり悪い方に傾いている。体調が、というよりは全ては味覚の問題で、食事が思うように摂れないゆえに体調が悪化しているといっても良い。

味覚はここ一週間ほどでまた新たなフェーズに突入し、従来からの苦味に加えて常に酸味を感じるようになった。酸味といっても柑橘系の爽やかなものではなく、簡単にいうと、嘔吐して、嘔吐して、嘔吐して、何も出なくなった後に口の中に感じる胃液のような味だ。何を食べてもゲロの後に残った胃液の苦くて酸っぱい味がして、ここ数日の俺の食欲を更に減退させている。

減退、というか、この苦くて酸っぱい味というのはおそらく本能的に受け付けない味なのではないだろうか。人間は腐っていたり毒が入っていたりして身体に害を与えかねない食べ物を本能的に感じ取り、無意識に吐き出そうとする。この苦酸っぱい味というのは、おそらくその本能センサーに抵触する味なのだと思う。だから何かを食べようとして口に含み、この味を触知した途端に猛烈に吐き気が襲ってくる。その食べ物の体内への侵入を頑として排除しようとしているのだろう。なんという迷惑な衝動だ。その体外排出センサーの誤作動のおかげで、なんの害もない食べ物であるにも関わらず、咀嚼して飲み込むのがものすごく難儀になってしまっている。食べ物だけではない、飲み物だって一緒だ。本来は無味無臭であるはずの水を飲んだだけで吐き出したくなる。今まではここまで酷くなかった。

単に苦いだけならまだよかった。我慢すれば無理矢理にでも飲み込むことはできたし、それは栄養となり、体を巡って確実に体力回復の手助けとなっていたからだ。しかし今はもう、食べ物を口にして飲み込むことが相当に辛くなってしまった。すっかり食欲も減退し、体重も減少の一途をたどっている。そしてその分体力も低下し、疲れやすくなった。一時期はマラソンも再開して少しづつ距離を積み重ねることができるようになっていたのに、今では立って歩くのもだるくてとても走る気にもならない。

いつの間にやら化学療法が終了して一ヶ月半が経った。来週からは仕事の復帰も本格的に控えている。もうそろそろ体調も回復してもおかしくないはずなんだろうけどね。参った。

美味しい食べ物とか、子供達へのおみやげとか、少しでもハッピーな気持ちで治療を受ける足しにできれば嬉しいです。