2019年3月29日

5時過ぎに起床。早い時間に寝たから目が覚めるのも早い。

トイレの鏡に映った俺の顔はパンパンに腫れている。そりゃ昨日の夕方から今までずっと食塩水を点滴されていればいやが応にも浮腫むだろうが、ここまでなるか、と言った感じの膨張っぷりでとても自分の顔とは思えない。グルメリポーターの彦摩呂みたいだ。今日は面会を全て断っておいてよかった。間違いなく知り合いには見せられない。

朝食を食べ終わって点滴をさらにもう一本追加。そして朝イチから放射線室に向かうよう伝達される。げげげ。今日も放射線治療があるのは知っていたけど、まさか朝イチで来るとは思わなかった。ただでさえも患部が腫れてきて苦しくなっているのに、この彦摩呂みたいに浮腫れ上がった顔のまま、あのマスクを被って治療を受けるのか？一気に憂鬱が俺を襲う。

そして憂鬱は現実となる。結論からいうと過去最悪の辛さ。呼吸ができずに途中で二度中断した。
あまり陰惨な状況をつらつらと書き連ねても仕方がないので省略するが、点滴で浮腫んだ状態であのマスクを被るのは相当に厳しいと言っていい。

マスクの喉仏に当たる部分に穴を開けられないかとか、頚椎のカーブを維持するために使用しているプラスチック製の枕を高さの低いものに変えてもらえないかなど、こちらからもいくつかの改善案を提議してみた。しかしどちらも放射線の照射部位に影響を与えてしまうので対応は難しいとのこと。ううむ、完全に詰んでいる。

とりあえず週末は放射線治療は休みなので、明日と明後日はこの苦しみから解放される。それまでに少しでもむくみが解消されることを切に願う。

治療が終わってエレベーターに乗り込む。中には大きな鏡があって、ふと見ると俺の顔にウロコのような網目模様がびっしりと付いている。マスクの網目が押し付けられて顔の表面にハッキリと跡が残っているのだ。

まさに怪人トカゲ男。みた瞬間思わず吹き出してしまったが、正直言ってかなりキモい。キモいどころか何か致命的な伝染病患者のようで、正視するに耐えられない痛々しさだ。もしこんな顔で満員のエレベーターに乗り込んだら軽くパニックになること間違いなし。全然気づかなかったけどマジか。ひょっとして今後ずっと、放射線治療後にはこんな顔になるというのか？

放射能の影響で怪人トカゲ男に変身、なんて冗談言ってる場合じゃない。なるべく誰とも顔を合わせないようにこっそりと病室に戻る。

そして放射線治療の後に待ち構えていたのは点滴フェスティバル！

まずは点滴用のポンプを2台に増やして、吐き気止めと利尿剤を同時進行で俺の身体に流し込んでいく。

なんだか並んでいるとメカメカしくてかっこいい。点滴ハイブリッドツインターボ、と言った感じか。コイツによって各々に最適なリズムで排出された2つの薬剤は最適な配合にブレンドされ、チューブを介して右腕の静脈に注ぎ込まれていく。吐き気止めの方が量が少なく、その分排出されるペースが早い。吐き気止めが全てなくなればついに抗ガン剤の登場だ。

オレンジ色の包装フィルムに包まれたその風貌からは、禍々しいオーラを放っているようにすら感じる。これが今回使用する本丸、抗ガン剤のシスプラチンだ。実際は生理食塩水で希釈されている。こいつを先ほどの吐き気どめを取り外した点滴ポンプに接続し、さらに2時間かけて俺の静脈へと注ぎ込む。

2時間が経過して無事に終了。打たれてる感じも特に普通の点滴と変わらないし、外した直後もどうということはない。もちろんそんなに副作用ばかりすぐ出てくるわけもないのだけど、心の奥で軽くビビっていただけにちょっぴりホッとしたような、拍子抜けしたような。

ここ数年ですごく効果のある吐き気止めの薬が開発されて、副作用の程度もだいぶ下がったんですよー、中には全く副作用が出ない人もいて、そういう人にとってはのんびりできていい入院ですねー、とは俺の担当の看護師さんのお言葉。
放射線治療ではトカゲ男に変身する問題を抱えている俺としては諸手を挙げてのバカンス気分とはいかないが、もし副作用が限りなく少ないのであれば万々歳だ。ビバ最先端医療。医学の進歩って素晴らしいですね。

この日記を書いているのは午後の8時だけど、少なくとも今の段階で不快な症状は感じられない。夕飯もバッチリ完食。一日明けてどうなるかはまだなんとも言えないが、とりあえずこのまま良好な体調を維持できることを願う。

【今日の食事】

朝食
パン2個
ブルーベリージャム
スクランブルエッグ
コールスロー
マンゴー
牛乳

昼食
ビーフカレー
米飯200g
ブロッコリーサラダ
ノンオイルドレッシング（ごま）
フルーツポンチ

夕食
鮭の味噌焼きと枝豆
米飯200g
味付け海苔
里芋汁
筑前煮
トマトフレンチサラダ