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#01 新しい日常、されどそれはいつもと変わらない日常

2019年2月16日

ガンになろうが何だろうが、朝は同じように訪れる。

夜が明けて日はのぼり、いつもと同じように目覚め、食事を取り、身支度を整えて出勤し、そのまま日常の慌しさに組み込まれ、時間は滔々と流れていく。

ガンの告知を受けて新しい人生の始まりを心に刻んだところで、そのサイクルは変わらない。
それがどんなにドラスティックな体験だったとしても、夜が明けて訪れるのは普段と何ら変わらない日常だ。

しかしその変哲もない日常を当たり前に迎えることができているということ、そのこと自体がすでに今の自分にとっては有り難い事なのかもしれない。そんなことをぼんやりと考えながら今日のクライアントへの施術を淡々とこなしていった。

施術の合間にパソコンを立ち上げて、様々な取引先や提携先にガンである旨を伝える。
メール越しなので表情は見えないが、明らかに動揺しているのは返信を見ればわかる。申し訳ない、本当に申し訳ない限り。

本当だったら今日から京都入りしていたんだよな。
夕方に時計を見ながらふと思う。
明日は京都マラソンだ。京都マラソンは前日エントリー必須なので、出場するためには今日から京都入りしてエントリーを済ませなくてはいけない。

京都は大好きで、何だかんだで年に1〜2回は訪れている。例えマラソンを走ることができなくても京都に足を運ぶだけで気分転換にはなるだろうし、元々仕事のスケジュールも空けていたのだから行くだけいっても良かったかもしれない。

しかし京都が好きで訪れているといっても、いつも行くのは伏見の酒蔵訪問、あるいはお気に入りの蕎麦屋とか飲み屋とかを巡るばかりで、酒も飲めないこの現状で京都にいっても満喫できずに単にフラストレーションを溜めて帰ってくるだけなのは容易に想像がつく。

このガンが治ればいつだって京都は行けるんだ、そうだな、ガンを治したらまた京都で呑んだくれてやろう。そう考えることでせめて自分を慰め、奮い立たせることにする。
エントリーしてる皆さん、僕の分まで楽しんでください。

京都に行けなかった代わりに、明日は僕の実家に帰省する予定。
帰省といっても電車で30分くらいだから大した距離ではないのだけど、一応両親にガンになった報告だけはしておかなくてはならない。

正直あまり気が進まない。
いやだなぁ。ウチのお袋、絶対に泣くんだろうなぁ。

美味しい食べ物とか、子供達へのおみやげとか、少しでもハッピーな気持ちで治療を受ける足しにできれば嬉しいです。