見出し画像

#021 放射線治療4日目:治すのは俺自身でしかないんだ【入院1日目】

2019年3月28日

いよいよ今日から入院だ。朝から妻と大学病院へ向かい、ひと通りの入院手続きを行う。細かいルールや注意時事項があってなかなか煩雑だけど、かりそめの集団生活をせめて快適に過ごせるようにしっかり覚えなくてはいけない。

ちなみに病室だが、無事に個室に入ることができた。
意外と広くて、2人がけのソファーやコーヒーテーブル、ダイニングチェアまであつらえてある。もともと2人部屋だったのをベッドを一台撤去して改装したような感じ。むしろ一人ではちょっと広すぎるか?

病室でそれとなしにくつろいでいると、聴覚検査があるので耳鼻科へ行ってくださいとのこと。放射線治療の副作用で難聴が出る可能性がある、という話を以前聞いたことがあるが、おそらくその検査だろうか。

耳鼻科に到着して検査室へ入室、ヘッドホンを渡されて音が聞こえるたびに手元のボタンをカチカチと押す。ちょっとしたゲーム感覚だ。自分としてはコンプリートなつもりだったけど、どうなんだろう?残念ながら結果は知らされず、10分足らずで再び病室へ戻る。

放射線治療が午後からと聞かされていたので、それまでに妻と2人でランチでも食べに行こうかと話していると、もう野田さんはお昼も病院食が出ますよ、とのこと。そっか、もう俺は入院してるのか。イマイチ実感が湧いてないよな。しばしの別れに妻とランチでもと思っていたのに、残念だけど仕方がない。

そんなこんなで初の病院食。

スパゲティミートソース250g
ピクルス
ジョア(ストロベリー味)

スパゲッティー250gはそれなりに大盛りだけど、朝食が早かったのもあって瞬時に完食。

妻も帰宅し、暇を持て余しているうちに放射線室から召集がかかる。

今日で放射線治療は4日目。昨日から引き続き患部に腫れと熱っぽさは感じているのだけど、今日の治療ではなぜか昨日ほどの苦しさはなかった。何かほんのちょっとのズレというか隙間が生じるだけで、幾分か気道が確保されるのかもしれない。担当の技師先生によってマスクの被せ方や固定する金具を止める順番などが微妙に違っていて、それが何か影響しているだろうか。明日からもちょっと注意深く観察してみよう。文字通り息の根を止められてしまう前に。


部屋に戻ると看護師が点滴を持って待ち構えていた。
大人しく右腕にぶっとい針を刺されて輸液ルートを確保。この一袋が終わるのは夜の12時半だそうだ。ずいぶんと長い時間かかるのね。

点滴に繋がれたまま、運ばれてきた夕飯をいただく。

米飯200g
ぶり柚庵焼き インゲンソテー
かき玉汁
小松菜胡麻和え
れんこん酢の物
キウイ、りんご

意外と美味かった、完食。


いよいよ今回の入院の目的である点滴がスタートした。しかし今日はまだ抗ガン剤の事前点滴なので、中身は生理食塩水。明日の朝からいくつか副作用を止める薬も点滴に加えて、午後2時にいよいよ本丸の抗ガン剤が登場する。

今回俺に投与されるシスプラチンという抗ガン剤は、特に腎臓に対してクリティカルなダメージを与えるらしく、投与した後にひたすら水分を摂取して流し出さないといけないとのこと。

インフォームド・コンセントとして抗ガン剤のリスクについて書かれた数枚綴りのプリントをもらったが、どれを読んでも恐ろしいことが書いてある。身の毛もよだつような副作用が文面いっぱいに羅列しているくせに、抗ガン剤を投与すればガンが治ります、なんて一言も書いてない。俺の周りにも抗ガン剤の使用に反対意見を持つ人達はたくさんいるが、そんな抗ガン剤アンチな一派が大騒ぎしそうな内容だ。

これを怖くないと言えば嘘になる。それでも俺はこの治療を選択し、そして明日実行する。ガン治療というのがどれだけ大変な道のりなのか、ここ1週間足らずの経験だけでも身に染みてよく分かった。だからこそ自分の信じる方法でしかチャレンジしたくないし、それ以外で上手く行くとは思えない。

この病院でもたくさんの先生や看護師、放射線技師、スタッフの方々などが連携協力して俺の治療に当たってくれている。本当にありがたいし、感謝してもし尽くせないくらいだが、それでも彼らが俺のガンを取り払ってくれるわけではない。

どんな治療法に縋ったとしてもそれがガンを克服してくれるわけではない。とどのつまり、俺の身体に出来たガンを治すのは俺自身でしかないんだ。


美味しい食べ物とか、子供達へのおみやげとか、少しでもハッピーな気持ちで治療を受ける足しにできれば嬉しいです。