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#027 【放射線治療10日目】いきなりステーキで塊肉と格闘する

2019年4月5日

体重が減り続ける日々。退院した今週の月曜日には74kgだったのが、今朝計ったら70.5kg。1日1kg近くの減量だ。ダイエットならば軽くメディアで数字の取れる結果と言えるが、問題なのは体脂肪率は全く変わっっていない、むしろ若干増えているということ。見事なまでに筋肉だけが落ちている。

荻窪駅の反対側に渡ろうとして階段を降り、登ったところで肩で息をするほどの疲労。マジか。つい半年前にはフルマラソンを4時間切るペースで走ることができたなんて信じられない。味覚障害と食欲不振の影響で食事量が減っているのは自覚していたが、ここまで如実に数字と体力に現れるとは思わなかった。

鏡を見ても顔色は完全に土気色で、全く活力を感じない。死相すら出てんじゃねえのかこれ?流石に危機を感じる。まずは良質なタンパク質を摂取しなければ。やっぱり肉か?味覚が狂って以来、肉関係は苦味を強く感じる素材となってしまったためどうしても及び腰になっていたのだけれど、ここまできたら四の五の言ってる場合じゃない、早急にタンパク質を補給しなければならない。

病院の後に意を決して高円寺で途中下車し、かつて足繁く通っていた「いきなりステーキ」へ辿り着く。やはりここで試してみるしかない。あのレアなステーキが今の味覚でどんな味に感じるかは全くの未知数だ。ひょっとしたら口に含むことすら憚るほどの苦味を感じるかも知れないし、固い肉を噛みしめているうちに当たって口内炎の引き金になるかもしれない。完食できずに残してしまう可能性すらある。残すだけならまだいい、もし食事中に肉の匂いを受け付けずに耐えきれない吐き気が襲ってきたらどうする?あまりにもリスクが高いんじゃないのか?

しかし考えていてもしょうがない。とりあえず入店・着座し、ランチメニューの200gを注文。いつもは300gか450gがデフォなのに、200gなんて注文するのは初めてだがしょうがない。はじめにサラダとスープが到着。サラダにたまねぎベースのドレッシングをかけてひと口。これが失敗だった、いきなり苦い!やっちまった。慌ててスープを流し込むと、さほど味は感じないものの幾分マイルドな口当たり。このスープはいける。スープでドレッシングを洗い流すような感じで交互に飲み込みながらかろうじて両方を完食する。

そして肉が到着。200gてやっぱりちっちゃいな。でも今の俺には大物だ。

はじめのうちに細かく切り分けて満遍なく火を通し、なるべく焦げる部分ができないように配慮する。しかし習慣というのは恐ろしい。いつものくせでステーキをソースを回しかけてしまい、かけ終わった瞬間に失敗に気づく。このステーキソースはダメだ、めちゃめちゃ苦い。もう行儀もへったくれもないが、ペーパーナプキンを大量に使って肉に絡んだステーキソースを拭き取らせてもらうことにする。みっともねえオッさんだなオイ。

再度チャレンジ。まずはシンプルに醤油をかける。これはイケる!日常の食事でも不思議と醤油の味というのはしっかり感じることができていて、とりあえずこれなら間違い無いと思ってトライしてみたもの。しかしやはり噛み続けているうちに肉の苦味が徐々に感じられてきて、長時間は噛んでいることができない。かといって醤油の量を増やすとそれはそれで苦く、バランスがなかなか難しい。

続いてトライしたのは甘口ソース。ちょこんとボトルに入って目の前のスパイスボックスに鎮座している、普段は使ったこともない一品だ。しかしこれが良い!ソース自体の味も結構しっかりと感じられるし、噛み続けても肉の苦味をうまく押さえ込んでくれているようで最後までしっかり噛み続けることができる。普段使ったことがないので元々がどんな味なのかはわからないが、おそらくフルーツベースで甘みがしっかりしているソースなのではないかと想像。それならなんとなく理解できる。結局この後は下手に冒険することなくひたすらこの甘口ソースで邁進し、最後まで不快な味に屈することなく食事を終わらせることができた。


とりあえず完食できてよかった。まずはこの一言に尽きる。200gとはいえ味覚障害と口内炎が進行している中でのステーキはかなり勇気がいったのだが、結果として食べてよかった。やはり人間は好きなものを食べている時が幸せだ。理不尽に我慢を強いられていたここ1週間はなんとも塞ぎがちな毎日だったが、今日で少し吹っ切れたかもしれない。久しぶりに食べる楽しさを思い出すことができたような気がする。

とりあえずこれで、明日は少しでも体重の減少が防げているといいのだけれど。まだまだ癌との戦いは長い。負けない気力と体力を今のうちからしっかり養っておかなくてはならない。頑張ろう。


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美味しい食べ物とか、子供達へのおみやげとか、少しでもハッピーな気持ちで治療を受ける足しにできれば嬉しいです。

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野田 力(Chikara Noda)

2児の父。産前産後の女性の身体を整えたり、整え方を教えたりするのがおしごと。2019年2月に中咽頭がんの告知を受ける。自分を見つめ直しながら癌を乗り越え、克服していく過程を綴っていけたらいいなと思います。
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