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からだのどこかにある引き出しにしまわれたものたち−−台北旅行記

あ、懐かしい。

それが、台北に着いてまず思ったことだった。

漂ってくる匂いとか、バイクの音とか、ごちゃごちゃした看板が連なるのに、どこか統一感がある街並みとか。決してきれいではないけれど、人の気配が感じられる、夜の道とか。

台北は、記憶のなかにある初めての海外暮らしだった。小学校低学年のころだから、全然覚えていないけれど、学校の真向かいにあったアメリカンスクールで食べたピザとか、近くの大きな公園で滑ったローラーブレードのコースとか、トマトベースの台湾麺とか。

そういった、ぽつぽつとしたことは、覚えていた。

当時は行動範囲が狭くて、家と学校のまわりしか覚えていなかったけれど、台北の中心地に行っても、いや、どこへ行っても、懐かしかった。

台湾ではないけれど、その後上海と香港に住んでいたから、広く”中華圏”の、あのてきとうなかんじというか、ごちゃごちゃしたかんじというか、あんまりかまわないかんじが、気づいたら私の一部になってたことに、その場を離れて初めて気づく。

当時住んでいた街の近く。ロイヤルホストにモスバーガーにツタヤ...ん?ここは日本?っていうくらい、台北には日本のものや日本語が多かった。

アメリカ人って海外に旅行するとこんなかんじなのかなあ、なんて思う。アルファベット表記があり、自分の国のポップソングがかかり...。

ジブリのBGMや君の名はのRAD、そこかしこで見かける日本語...台湾は親日とは聞くものの、こんなに日本のものがあるとは、知らなかった。(忘れていた、のかもしれない)。

台北でも懲りずに本屋めぐり。村上春樹や夏目漱石の翻訳本、台湾の本屋さん特集の雑誌を買ってみる。その後、Esliteという大きな書店へ。

写真はNGだったから撮れなかったんだけれど、入ったところに大きな雑誌コーナーがあって、飛び込んできたのは日本語だった。え!日本語の雑誌そのまま置いているの?と思ったのもつかの間、あるわあるわの日本語本。

なんたって文学セクションに「日本文学コーナー」があるんだからすごい。

Eslite、雑貨とかも置いてあり、テーマごとに棚づくりされているのが蔦屋書店みたいだなあと思ってググってみたら、蔦屋がEsliteを参考にしたらしい。ごめんなさい、Esliteさん...というか、台湾の書店文化が先端を行っていてすごい。

ちなみに本屋の写真はすべて閲楽書店のもの。水辺のそばで、木のぬくもりに囲まれて、ゆっくり本を選ぶことができた。

そして幻のトマト麺。幻というのは、小さい頃住んでいたときに家の近くでよく食べていて、その味が忘れられなかったからだ。トマト麺、トマト麺、トマト麺が食べたいと言い続けて17年。やっと再び、その味にめぐりあうことができた。

そのお店があった付近を歩いてみたんだけれど、なかなか見つからない。なんせ店名を覚えていないし、17年前のことだから、誰かに聞こうにも聞けない...そう思っていたんだけれど、隣にいた母が本領発揮というか、嬉々として道端で回転焼きを売っているお兄ちゃんに聞き込みを始めた。水を得た魚のよう、とは、このことか。

そうしたらなんと「トマト麺のお店」でわかったらしく、近くに引っ越した、との情報をもらった。高まるハート(心)を抑えながら向かったけれど、その通りであったのは小さな麺屋さんくらい。

おかしいなあ...と目の前にあった今どきカフェのお姉さんに聞いてみると、今はお昼休憩中らしい。

1時間ほど待って再び行ってみると、やっとお店が目の前に現れた。開店してから10分くらいしか経っていないのにもうお客さんがちらほら。

17年ぶりに対面したトマト麺は、思っていたよりもずっとシンプルで、でもトマトの自然な甘みがきいていて、美味だった。私はあんまりグルメでなく、食にこだわりがないんだけれど、こんなに追い求めた食べ物はたぶん、これが初めてだ。

母が注文した牛肉麺も小さいころはたいして好きでもなかったのに、こんなに美味しかったっけ、と驚く。

お店のおばちゃんと話して、「昔住んでいたんだよ」「17年ぶりだよ」「懐かしいよ」みたいなたわいもない話をした。

私はすっかり中国語を忘れているので、ところどころしかわからなかったけれど、台湾の人ってこんなに気さくだったっけ、とここでまた驚く。香港・上海の印象の方が強くて、台湾もそちらの印象に引っ張られたんだけれど、台湾人は全然違ったんだ、ということに気づかされる。

結局トマト麺は2回食べ、牛肉麺は3回食べ、肉まんにマンゴーかき氷と、ひたすら食べたので写真を全然撮っていなかった。

こんなに近場で安くて美味しいものがあるんだから、高い飛行機代払って15クローネ払ってオープンサンドを食べている場合じゃない、なんて思う(いや、デンマークのサーモンオープンサンドもおしゃれで美味しかったけれど、でもそれでも)。

ちなみに上のトマト麺で有名な店はこちらです。中心地から離れているけれど、他のお店で食べたトマト麺よりも美味しかったし、牛肉麺も3日間でベストでした。googleで評価が4.2という...台北に行かれる際はぜひ。

それでは、また。

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