隣国とのアレコレ、全部相手が悪いのか

 ツイッターで「GSOMIAについてどう思うか」という体のあのマシュマロが来たので、それに関して思うことを書き留めとこうと思う。

 今回のゴタゴタ、始まりを思い出してみると徴用工の賠償請求を韓国の大法院(最高裁みたいなもん)が認める判決を出したことに始まっている。(本当の始まりはもっと前だと思っているけれど)
 それを受けて、日本がホワイト国から韓国を除外することを発表した。これについて日本側は現在は「韓国の貿易上のやり方がマズくて安全保障上云々」という理由付けをしているが、タイミング的に徴用工問題への報復なのは明らかだった。初期の首相コメントでも徴用工問題が下敷きにあることは述べられていた。
 それが「経済に政治を持ち込むべきではない」という国際的認識で風向きが悪くなったため、急に後付けで安全保障にシフトさせたにすぎない。ここに日本側の対応の問題点の一つ目がある。

 第二に、まさしくここまでの「態度」そのものが問題と思う。話し合いの会議に倉庫のような部屋をあてがったり、服装や言葉遣い、会場の旗を日本のものしか置かないなど、誰がどう見ても失礼でしかない。これが交渉の常識だとか言うなら、あー日本代表の人たちって非常識な世界で生きてるんですね、と言いたくなる。河野太郎外相は相手の言葉を遮って「無礼な態度」と非難した。話し合いの場においてどっちが無礼なのか…仮にこれが日本人同士の話し合いだと見ると明らかに河野が無礼だ。よくいる横柄なオッサンのマウント取りにしか見えない。
 とにかく日本側の態度はどう見ても交渉する気があるようには私には見えなかったし、韓国側の見方もまあ同じだと思う。

 というか自分で提示しておいてナンだけど「日本人同士の話し合い」に例えなければいけない状況が既に問題である。
 「日本にも見えにくい形で蔓延する韓国への蔑視」。これが第三の問題だと思う。(第二と根本は同じかもしれんが)
 ワイドショーやネットで今、ごく普通に語られる「韓国はヒステリックな国民性だから」という論調や「反日」という単語…正直ヘドが出そうだ。
 今日本側の態度に両手を挙げて喝采を送る記事やコメントを注意深く見てほしい。そこには韓国に対する「毒」が忍んでないだろうか。日本人は概ね自信がないくせに、ことコレに関しては「自分は何の蔑視も含んでいないニュートラルな視点である」という自信がどっから湧いてくるのか問い詰めたい。いやむしろ自信と自身の無さの裏返し防衛本能かな。しらんけど。

 国際的な交渉において(個人的の人間関係でもだけど)相手をあなどり、こちら側からの一方的な視点のみで相対するのは下策中の下策だと思う。これは「韓国に味方する」とか「思いやりのお花畑思考」ではなく、交渉相手の立場でモノを考えることは交渉手法として基本じゃないんですかね。
 なぜいつでも日本側が(また日本政府が出す情報が)正しいと言い切れるのか、盲目的になってはいないだろうか。

 そして根本的な問題が最初に挙げた「歴史問題」だと思う。
 これに関して「もう既に国家間の協定で解決済みなのに韓国がゴタゴタ言う」とムカついてる人もいるんだろうけど、いやいや解決してませんから。
 前の朴槿恵政権と日本が結んだ協定はあくまで「国家間」の妥協であって、被害者個人の賠償請求権とは別の次元の話だ。殴られた人が自分の損害賠償請求したら「あ、ソレもう自治体同士で解決したから」て言われて解決したなと思うかね。…という感情論を抜いても、この「個人の請求権」は法的にも認められている。

 ここでよく聞く反論は「日本はもうお金を渡している!」という論調なんだけども、結局その時の金は韓国政府が使い込んだり、被害者も受取り拒否をしたりできちんと行き渡っていない。(ここは当時の韓国政府が良くなかったとこではある)
 第一、被害者の主張はお金というよりも「過去の過ちに対する日本の国としての謝罪」が第一である。受取りを拒否した人達の意図はそういうことだ。
 村山談話、河野談話でこれらの罪を認めているものの、談話はあくまで首相の個人的見解であり、国としての謝罪ではない。おまけに安倍談話では過去の談話内容を帳消しにするような内容が含まれていた。

 またまたここで出てくるのが「そもそも大戦中の日本の罪などない」だけど、これを書いたら文章量がスゴイことになるので、いずれ別項で書けたらね…てかその論はネトウヨ間でしか通じないよというレベルの話なわけで、ここでは徴用工や慰安婦の存在は日本政府も認めてますよ、というとこまでに留めておく。

 GSOMIA破棄にここでやっとたどり着いたけど、この一連を始めたのは日本だしここまで見てきて交渉を蹴ってるのは明らかに日本だ。
 解決には問題の最初に戻って交渉するしかないと思う。向こうにもまあ、国益とか支持率とかあるんだろうけどそれはどこも同じ。日本だって輸出規制の開始日を参院選にかぶせてるし。
 あとGSOMIA締結を要望したのそもそも日本だから。自国レーダーでミサイルを捉えられなかったので韓国に情報共有を求めたものらしい。韓国損するザマァwとかいう自己満に浸ってる場合じゃない。
 2016年に結ばれたGSOMIAに関してどっちが困るかという水掛け論よりも、そこに載せられた両国の感情や信頼関係の損失がむしろ問題なんだと思う。

 ともあれ、安全保障をタテに対立することは非常に危険であるし、双方にとって何の利益もなければ実質的な不利益以上に対立感情が高まってしまうことは非常によろしくない。
 韓国側にも大人の対応をしてもらいたいけど、何分日本がメチャクチャ子供だから相手にムカつくなと要求するのも気が引ける。別に韓国を庇っているわけではない。前述のように韓国側の反応もちょっとちょっと…と思うけど、それ以上に普通に見て日本の様子が圧倒的におかしいと思うだけだ。

 韓国社会にもいろんな問題があるんだろう。ただ今、相手の瑕疵をあげつらったり無理矢理ほじくることに日本の政府とメディアは血道を上げているけど、そんな暇があるならもっと自分自身を振り返るべきだ。公文書もまともに残せない国になっとるぞ?君らの愛し方はで徹底的に何がなんでも子供を甘やかすことなのか。

 国同士の決裂にはほとんどの場合、上滑りした交渉の末の誤解と、深い歴史問題が関わっている。
 根っこの問題である徴用工や慰安婦についてどれだけの日本人が名称以上のことを知っているのか?
 原爆に関してアメリカ人はほとんど無知だ。未だに半分以上は「正しかった」と信じているという。めっちゃ腹が立つ。が、ここに殴った側と殴られた側の違いがある。ドイツのように、殴った側が意識的に向き合わなければいけない。
 日本はずっと逃げてきた。それどころか今、教科書からもワードすら消し、なかったことにしようとしている。若い人は慰安婦という言葉すら知らないという。不可逆的解決?そんなものはない。歴史の過ちは繰り返し顧みなければ確実に繰り返す。
 今回の対立は、これ以上この問題を無視して進むことはできないということかもしれない。

 ともかく、韓国と隣国であることは変えられない。嫌だからと引っ越しはできない。相互理解と、誠実かつ前向きに付き合うことしか道はない。「日本は困らないから韓国なんか切り捨てればいい。ジーソで困るねハッハー(^o^)」なんて、そっちの方が子どもっぽいお花畑思考である。北朝鮮が不安なら、なおさら手を携えるしかない。

それこそが現実的な安全保障じゃないかな。