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#37 レーティングで見るビリヤード③

連続3回目となる今回は
ビリヤード用レーティング「FargoRate」とレーティングトップ選手のデータから ビリヤードという競技を考えてみます
※前回・前々回まだ読んでいない方 是非ご一読くださいませ

#35レーティングで見るビリヤード①

#36レーティングで見るビリヤード②

★「FargoRate」公式はこちら(英語)

★「FargoRate」の詳しい解説はこちら

※引用 「Billiards Days」さんHPより


★イロレーティングについてはコチラ

※引用 「Wikipedia」HPより


まずは「FargoRate」TOP100から ※2023/10/14現在
No1「Joshua Filler(844)」 
No2「Fedor Gorst(841)」 レート差:3
両者の勝敗比率を見てみます ※以下計算式等は前回記事をご参照ください

・Fillerから見た勝率:Wfg
Wfg=1/(10^(841-844)/332.2+1)
Wfg=0.5051…
であり Filler 対 Gorst は

「Fillerが勝率約50.5%(約1:1)でラック獲得する」

の予測です
「50.5% 対 49.5%」 ですから 
200ラック戦うフォーマットでやっと 
「101 対 99」
という差の試合結果となる可能性があるわけです(大変!)

要するに現在の試合フォーマット(9ラック先取り等)で見れば 間違いなくほぼ「互角」といって差し支えないでしょう

では同じくTOP100から
No1「Joshua Filler(844)」 
No100「Ri Teng Liu(781)」 レート差:63
両者の勝敗比率ならどうでしょうか

・Fillerから見た勝率:Wfl
Wfl=1/(10^(781-844)/332.2+1)
Wfg=0.6074…
であり Filler 対 Liu は

「Fillerが勝率約60.7%(約1:1.5でラック獲得する」

です
9ラック先取りフォーマットでFillerが勝利した時の予測スコアは

「Filler 9-6 Liu」

となります 一見差があるように見えますがこのレベルの選手達なら
スコア「8-6」から3ラック連取の「8-9」逆転勝利
なんて場面も日常茶飯事に見ることができます
実際には1~2球のシュートミス・セーフティミス 後攻で1発ドライブレイクetcという僅かなミスでもあっと言う間に付くだろう点差なのです

さて初回記事(#35)の藤井聡太八冠をもう一度思い出してみてください

藤井聡太八冠(2105)と将棋界No2永瀬拓矢元王座(1925)
レート差:180
「藤井聡太八冠が勝率約74%(約1:2.8で1番勝利する)」
です・・・

1位と2位でこの差です…ビリヤードの1位と100位と較べてゲーム取得差がなんと3.6倍です!
※わかりやすく書くと ビ「10ー15(5点差)」の時 将「10ー28(18点差)」

ちなみに将棋でも2位から見ればもう少し混戦にはなります
しかしながら上記ビリヤードの1-100位と同様の勝率差
に収まる棋士はやはり6名程度しかいません

最近MatchRoom主催で世界転戦型の大規模オープン戦がほぼ毎月ペースで開催されています
トーナメントのベスト64辺りでも FargoRateトップ10クラスの選手が敗退することは本当に良くある話です

それもそのはず
トップから順に64名が出てきたとして その試合フォーマットでは一発逆転を食らってもおかしくない小差の中で戦い続けているわけです

これはビリヤードが持つ競技性が

①2者間で攻守が同数・均等に与えれらるとは限らない
※一応交互ブレイクといったルールもあるが基本的に他競技に較べて攻守交替や局面リセットの頻度がかなり低い
(ビリヤードは一方がほぼ攻撃し続けて試合終了することも普通にありえます)

②1者のミスプレイがラッキーな得点を生むことや ミスプレイがミスにならず相手側に厳しい局面を強いるということが度々発生するゲームである
(たとえばゴルフなら相手がティーショットOBを打った時に 自分のティーショットをそのOB位置から打たされるなどありえない)

③特にトップ層の現状という意味で
現在の競技者レベル向上および競技用具の進化により 一定のレベルを超えてくる選手達に於いてはこの競技が持つ難易度をすでに凌駕している部分が発生しつつあって突出した実力差が付きにくくなっているのかもしれない(あくまで推測の域・・・技術差・知識差が無いとは思っていない むしろ差があるにも関わらず結果に差が出にくいという考え方に近い)

といった点で 「実力差=点差・結果」への絶対的収束を困難にさせる部分を持っているからではと考えている

正直なところ 上記比較でもわかるとおり「同レベル層での対戦」において「勝敗比率が55:45とか60:40」とかであるならば

ビリヤードにおいては「かなり突出して上位の実力を持つ選手」

であるとさえ言えてしまうのではと考えている 逆に言えばそれは同レベルではなく1段上のレベル層にいるべき選手なのである

将棋なら現在は藤井聡太八冠だけがレート突出、過去なら七冠達成時代の羽生善治永世七冠
他なら例えばテニスならジョコビッチ選手全盛期のBIG4(ジョコ・ナダル・フェデラー・マレー)だけが異常にレート突出していた時代がある
実力や結果の差は多くの方々がご存じの通りである!

トップ層でさえ突き抜けた実力や結果となり難いにも関わらず ましてやレーティングの平均値・中央値辺りで最も層が厚くレート差も付きにくい我々一般アマチュア層が
・同じスキル層が集まる試合(「B級戦」とか「JPA〇点以内」とか)
・試合フォーマット(9ボール4点先取りとか)
で戦っていれば
トップ層での結果以上に実力差が出し難い「互角」の戦いであり「運や流れの要素」が影響して試合結果がどう転ぶかもわからない…という可能性をビリヤードという競技では大いに内包していることは容易く想像できるのではないだろうか

そもそもが

「絶対的に勝つ=勝率抜けている=それは同じクラスではない」

まさにこれこそが

「ビリヤードが持つ競技性であり本質そのもの」

なのだと個人的には思っている

よく
A級戦で絶対的に勝つと見込まれる選手を「プロ同等の実力」とか「SA」と言ったりするし
B級戦でかなり強い選手に対しては 「もうAでも良い」とか「SB」などと言ったりすることがある
それは上記のような事を既にプレーヤーは感覚的に気が付いており慣習的にハウストーナメント等でハンデ調整をしていたりするのである
※逆に「プロ・A・B・C戦」とかになれば上下レート差も実際の技術差もかなり開きがあり、多少のハンデ差は意味をなさずに上位選手(特にプロ・SA)が勝ち上がる率が高い という光景も良く見てきているはず
これが本来のクラス差=結果なのでしょう

最後に
この様にビリヤードを捉えてみると巷でよく耳にするような
「たくさん練習したのに勝てなかった・・・」
「上手くて実績ある✕✕さんが1回戦負けしていた・・・」
等の「実力=結果」を期待したが伴わなかった事に対するある種の悔しさや疑問・疑念などを感じているプレーヤーは多いかと思う
それは決してプレーヤー達の練習量が足りないとか実力不足といった部分にのみ原因があるとも言えず

「そもそもビリヤードって差が出にくい競技だから当たり前」

の話なんだと捉えてみてほしい 時にそうすることで
この「ビリヤード」という競技・・・試合での結果だったり自身の実力向上度の認識など・・・に対して
変にネガティブな感情に陥らずに本来の楽しさ・奥の深さを堪能しながら 長く前向きに競技に取り組んでいけるのではないだろうか

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