牡蠣とワンピースと私

久しぶりに飲む約束をしていた親友が清水ワンピースを読み、「飲みに着ておいでよ!二の腕なんてもう出したもん勝ちだよ!」とLINEをくれた。




二の腕なんて出したもん勝ち。何と無くそういう気もして来た。前にも書いたが、元気に過ごせる残りの人生10年として、この清水ワンピースをあと何回着られるのだ?もちろん棺桶には清水ワンピースは入れてもらうつもりだけれど、「二の腕太くて着れなかった…」という強い心残りから夜な夜なワンピース着たばーさん幽霊として都市伝説になるのも嫌だ。



ということで思い切って清水ワンピースで飲みに出かけた。どきどき。


ただやはりシラフのうちはたくましい二の腕を出して闊歩するのがどうしても恥ずかしく、カーディガンを羽織った。冷房の効いた電車内、自分、グッジョブ。


17時半。最近オープンしたばかりの、生牡蠣とお寿司がメインのお店に。当たりにくい安全な生牡蠣であるのに味も抜群、メチャクチャ美味しい!!!!クリーミー!!!いやこれならもし当たってももう文句は言わない。トイレで泣きながら「もう2度と生牡蠣など食いませんのでどうか治してくださいィィィィ」などと神様に謝ったりしない。たぶん。




あまりの美味しさと久々の外飲みにテンション爆上がり、わたしは勢いでカーディガンを脱いでやった!!!!!!ジャケットプレイの郷ひろみ気分で!!!!そう、こういうのは勢いが大事なのである。

ついでに初恋の彼にも写メってLINEした。



突然送りつけられる、生牡蠣とたくましい二の腕の元カノの写真。

「変わらないね!」これ以外返答しようがない満点の返事に「んなわけねーだろ!」と送った。ヤダ何て迷惑……恥ずかしい……ああ、もうついでにビールもガブ飲みだ。ああ,うまい…牡蠣とビールのマリアージュ……ああ生きてて良かったと心から思える瞬間……

一瞬の恥は一杯299円と激安価格の泡と共に消えた。1番搾られた。


多幸感に包まれながら、二次会は立ち飲みバーへ。地元では有名なタレントさん親族がやっているお店だ。たまたま通りかかったら2名空きがあったのでお邪魔した。


カウンターと長い机が2つ並んでおり、テレビではバスケの試合が映っていた。それを観る人と歓談する人の半々。



バスケの試合展開が盛り上がったのがきっかけで、隣の男性二人組と話し始めた。30代も50代のおふたり。バスケの話から出張で来熊、ゴルフをして来たんです等々、なんてことない話から、独身と既婚者の結婚観の話まで、多岐に渡り歓談した。


……いや、これが思いのほか非常に楽しかった。



たまたま隣に居合わせた男性と何の色気もないただの世間話をしただけ。連絡先交換もしていないので本当に一期一会。しかし私の心の枯渇した部分が大変満たされた。偶然隣り合った全く知らない殿方と会話する。これで何が満たされたのか私的にも全くわからないのだけど、ヒジョーーーに楽しい気分で帰宅した。


私は知らない人と喋りたいだけだったのか????いや知らない人と話すということが脳の刺激になったのだろうか????


ただ、相手が非常に紳士的な方々だったのも幸運だった。
地方都市の大衆酒場には珍しい(失礼)まともな一般男性で、きちんと知性のあるお人柄。初対面の会話や距離感を理解しておられたのもラッキーだったのだ。

これがもし、地方都市に多い(失礼)酒の勢いに乗じて初対面から失礼極まりない下ネタ爆裂を浴びせてくる酔っぱらい殿方だったならば……

ババア歴46年で培った知性と、なめんなよの圧を武器としたそれ相当の下ネタを繰り出し返り討ちにした上で、「とうとうこの伝家の宝刀、二の腕を使う時が来たか……」とたくましい二の腕でねじ伏せてやらねばなるまい。そんな惨劇にならずに本当に良かった。


シメのお茶漬けをたいらげ、楽しかったね!キャッキャ言いながら帰宅。
大変良い気分で眠りに着いた。



翌日。さわやかな朝だ。
ここ最近の高カカオチョコレートのおかげか、二日酔いも全くない。(肝臓の機能が良くなるらしいよ)



朝、起きて清水ワンピースを洗濯した。


日当たりのいい庭で、特別扱いの良いハンガーにかけられた清水ちゃんは青空のもと風にそよそよと気持ち良さそうに揺れている。なんだかそれがいまの私の気持ちみたいでとても嬉しくなった。


清水ワンピースを着て行って良かった。清水ワンピースは幸せをくれる。
清水ワンピースを着ている時の自分はやっぱりちょっと普段の私より堂々としていてちょっとだけかわいいのだ。


ワンピースばーさん幽霊として化けて出ないためにも、今後も積極的に着ていきたいと思う。そのために「鬼の二の腕痩せ」YouTubeいってきます。

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