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子どもオンブズパーソン欧州ネットワーク(ENOC)、ウクライナから避難してきた子どもの保護に関する新たな声明を発表

 ロシアによるウクライナ侵略で始まった戦争は依然として終息の兆しが見えず、子どもをはじめとする民間人にも甚大な被害を及ぼしています。ウクライナの子どもたちの3分の2が国内外で避難を余儀なくされており、ユニセフ(国連児童基金)のアフシャン・カーン=欧州・中央アジア地域事務所代表は、6月14日、同国における「子どもの権利の危機」をあらためて訴えました(日本ユニセフ協会による発言抄訳参照)。

 欧州評議会加盟国(47か国)の34か国から43の機関が参加するENOC(子どもオンブズパーソン欧州ネットワーク)も6月24日付であらためて声明を発表し、加盟機関の知見や経験を踏まえ、ウクライナの戦争から避難してきた子どもの権利の保護に関する詳細な勧告を提示しています(ENOCの対応については3月1日付3月19日付の投稿も参照)。

 全9ページからなる声明は、次の各分野について、避難してきた子どもの受入れ国や欧州諸機関がとるべき対応を明らかにしたものです。

1)避難してきた子どもの登録
2)保護者に付き添われていない子ども/保護・養育者と離れ離れになった子どものための緊急対応
3)これらの子どもの後見
4)受け入れ・生活条件
(保健ケア、心理的支援、教育、十分な生活条件等へのアクセスを含む)
5)子どもにやさしい手続
6)子どもの性的搾取および人身取引
7)最初の受入れ国に対する金銭的・物質的援助

 たとえば教育については次のような勧告が行なわれています。

-戦争から避難してきたすべての子どもが、乳幼児期(赤ちゃんのための保育、幼稚園、就学前教育施設)から高校に至るまでの公式・非公式の無償教育に直ちにアクセスできるようにすること(第1次受入れ施設でのアクセスを含む)。このような教育は、とくに、子どもの人格、才能および能力の発達ならびに子どもの親、文化的アイデンティティ、言語および価値の尊重を志向して行なわれなければならない(国連・子どもの権利条約29条)。
-ロシア語/ウクライナ語を話す子どもにとっての言語上の障壁が取り除かれ、かつ学校制度を含むコミュニティへの子どもの適応が促進されるようにするための方法に関するツールとガイダンスを、教育スタッフに提供すること。同時に、子どもがeラーニングおよび学校での対面授業を含むロシア語/ウクライナ語の学習教材にアクセスできるようにすること、および、これらの教材へのアクセス(たとえばラップトップコンピューター、インターネットに接続されたデバイスなど)を妨げる障壁を速やかに取り除くことが欠かせない。このことは、戦争終了後に子どもがウクライナに帰国して再統合できることを促進するために、きわめて重要となる。

 声明の末尾では、次のとおり、差別が行なわれないようにすることの重要性も強調されています。日本でも真剣に受けとめるべき指摘です。

 ウクライナの戦争から避難してきた子どもたちの権利を保護するために上記の勧告を実施するよう、受入れ国とEU諸機関に呼びかけつつ、私たちは、子どもに提供される支援の水準に関して、子どもまたはその親もしくは法定保護者の人種、皮膚の色、性、言語、宗教、政治的意見その他の意見、国民的、民族的もしくは社会的出身、財産、障害、出生またはその他の地位に基づくいかなる差別も行なわれないようにすること(国連・子どもの権利条約2条)の絶対的重要性を再確認する。この目的のため、移動の状況にあってEU域内で国際保護を求めるすべての子どもに対し、ウクライナの戦争から避難してきた子どもと同一の支援(たとえば住居、保健ケアの提供、金銭的支援等)および同一水準の保護を受ける資格が認められるべきである。

 最後に、私たちのもとには、ロシア人・ロシア語話者である子どもおよびウクライナの戦争から避難してきたロマの子どもに対して行なわれた多数の民族差別の事案(いやがらせ、攻撃および集団的襲撃を含む)に関する、憂慮すべき報告が届けられてきた。そこで私たちは、国内当局および欧州当局に対し、これらの案件を適正に調査するとともに、このような事案を強く非難するよう求める。このような行為は、国民的マイノリティの保護に関する枠組み条約諮問委員会が最近発出した声明で指摘されているように、欧州の価値観および人権原則と一致しないからである。

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