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ジャスミン色の記録

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中国にいた頃の記憶や、思ったことをつらつらと。
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色メガネを外すことができなくても

色メガネを外すことができなくても

帰国子女にたいするイメージって、どんなものですか?

私自身、今までの人生で幾度となく仕事の話とセットで『10代の頃上海に住んでいまして…』という自己紹介をしてきました。そこで高校時代の話をすると、こんなイメージをぽっと口にされた方が居ました。

そんなにたくさんの外国人と一緒に学んでいたのなら、本当に偏見なく外国人のことを見れそうだよね!

何気ない会話の中で出てきて、すぐにすっと溶けてなくなっ

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月が愛を知っている

月が愛を知っている

月が綺麗に見える夜が、人生には何度となくありますよね。

そんな夜だけ、私は今見上げているものが空なのか何なのかわからなくなるのです。

まんまると大きな月が浮かぶ夜空はいくつもの色が透けていて

まるで海のようだし、果てしない闇にも見えるし、どこか別の世界に繋がっているようで、少し紫で、不思議な色。

本当はこんなに丸くはっきりと見ている月が、普段は満ち欠けのように見えるなんて。月に数日しか、そ

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北朝鮮から来たあの子のスピーチ

北朝鮮から来たあの子のスピーチ

「私の通っていた学校は、朝鮮の中でいちばんの学校なんです。」

彼女は、流暢な中国語で話し始めた。

その子の名前はミニョン。私の唯一の、北朝鮮人の友達だ。

もう何年も前、私は中国にいた。

国際理解の授業で、私たちはミニョンをぐるっと輪で囲んで、スピーチを聞いている。 その輪は実に国際的だった。日本人が私の他にあと1人、韓国人も何人か、マレーシア人も、エジプト人も、イタリア人も居た。

良く

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【ラジオトーク】
昨日から施行された香港の国家安全維持法について、ラジオトーク公式とーかーのテリーさんとお話ししてきました。香港の友人のリアルな反応は?なぜ中国は強権化している?日本への影響は?などお話ししてます。
https://radiotalk.jp/talk/318968

宇宙を潤す砂漠   #ブリリアントブルー

宇宙を潤す砂漠   #ブリリアントブルー

本文に入る前に…

【この文章は2年前に書いた「砂漠を愛している」という文章を「ブリリアント・ブルー 公開フィードバック」というオンラインイベントでフィードバックしていただき、リライトしたものになります。】

砂漠の、どこまでも緩やかに続いている砂の波を見たとき

人はどうなるか知っているだろうか。

ただ、歩き出すのだ。

砂の上を歩くと滑らかに足をとられ、柔らかく半歩引き戻される。

それでも

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レインボーカラー🏳️‍🌈の国籍

レインボーカラー🏳️‍🌈の国籍

起き抜けの目に、このツイートが刺さり込んだ。

悲しい。辛いけれど現実だった。水原希子さんはまだこんなことを言われてるのか。
このツイートのリプ欄には国籍とアイデンティティに関する辛辣な言葉がずらっと並んでいた。
日本に育ったからって関係ないと、パスポートに記載されている国籍だけで全てを判断するような言葉が多かった。

彼女の詳しい生い立ちや事情はわからない。けれど、29年間命を育んだ土地の名前を

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夜明けの隣で会いたいな  #磨け感情解像度

夜明けの隣で会いたいな  #磨け感情解像度

蒸し暑い夜更けだった。

ぼうっと赤白く光るランプの光を、眩しいから眠れないと思いながらも消せない。消したら完璧な暗闇に放り出される。あの時に1番こわいものは暗闇だった。

今夜の暗闇は底も前も後ろも天も見えない。幾人の人がおやすみを送ってくれようと、私のいる世界にはおやすみなんてもう訪れない気がしてならないんだ。

だって、サヨナラなんて一切してないのにもう貴女に会えない。

落ちたらすぐに夢に

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歴史を学ぶ意味

歴史を学ぶ意味

中国の上海にいたとき、街中でたまに差別に遭うことがあった。

「日本鬼子(日本の鬼の子)」という差別用語が中国に存在する。世界大戦時に日本が攻め入り、鬼のように酷いことをしたというのが所以であるらしい。私は鬼滅の刃を見ると、一瞬、薄らとそのことを思い出す。あれは鬼退治の話だが、人間を鬼と表現するなんて、よほど怨念の絡んだ歴史だと子供ながらに理解した。

当時は特に日中関係が悪い時期だったからだろう

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感性の自衛

感性の自衛

10代の頃、毎日を生きるのが苦しくて苦しくて悟りを早く開きたいと思っていた。

悟りを開けば、とんでもなく日本人差別してくる教師の態度も一瞬で受け流せる。小うるさい小学生にも何も思わない。絶賛反抗している親にも腹は立たない。自分の悪口を裏で言っているかもしれない友達も笑って一瞬で捨てれる。曖昧でどうなるかもわからない恋愛だって余裕で流れに任せられる。

そう思っていた。

そう思っていたら、本当に

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フェイクに踊らされないで

フェイクに踊らされないで

言いたいことを言ってしまってごめんなさい、と常に思います。ですが、この事は書かずにはいられないのです、とも思います。

それはきっと、これを読んでくださる方々への免罪符でもありますし、言葉は自分に返ってくるものですから。どんなふうに帰ってきても、自分の発信は自分で受け止めるという気持ちでもあるのです。



新しいウイルスがもたらしたのは死への恐怖や経済への影響、人との断絶だけではございません。

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‪一生エッセイを書き続けていたい。真実の中で嘘しか書けないから、エッセイしかきっと書けない。真実の中の真実なんて書いてしまったら爆発してしまいますもの。‬

在上海活下记录 1

在上海活下记录 1

芥川龍之介 「上海遊記」に寄せて

私の支那国上海での初日は冷めざめと降り頻る雨であった。

飛行機を降りる前、父が初めて私に教えた支那語は【不要(ブゥヤオ)】であった。ニィハオでもシェシェでもない、ブゥヤオ。意味は見ての通り必要ないという意である。何故と訝しがる私に父は一言「降りたら分かるさ。追いかけてくる男たちに言うんだよ」

機場の外に出たか否か、何十人もの車屋が私たちを包囲した。何かわぁわ

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在上海活下记录 2

在上海活下记录 2

芥川龍之介 「上海遊記」に寄せて

この記事は、前日の在上海活下记录1の続きになります。

悉くしつこい車屋の間を抜け切り、父の会社が用意した車までたどり着いた。そこの車はピカリと太阳を反射する白金色で塵ひとつついていない。ふっと後ろを振り返ると、数かずの車屋の其れは全て黒いがそこにはびっしりと黄砂が付いている..いま自分が立つ白金の車の近くは、突然にそことの空気が隔絶されたような気になった。不相

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中毒性のある街

中毒性のある街

「下を、見てみなよ」

その人は言った。

地上31階から眺める地上には、そびえたつ何棟ものビル。どれも色を次々に変え、ときにはビルをまたがって流れあう電飾が光っている。その右手側には堂々と立つテレビ塔。

川を挟んで左手には、植民地時代に建てられたというヨーロッパ風の建築物が、街中の博物館のように並ぶ。それを下から、その威厳を支えるように白いライトが照らした。その屋上には大きく居座る時計と、中国

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