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BTS:JIMIN 『約束』のストーリーとNEVER MIND

2020年12月31日。今日はBTSのジミンちゃんによる初の自作曲『約束(약속)』が誕生してからちょうど2周年。

彼がこの曲で約束を交わしている相手は他でもない【彼自身】であり、ストイックで自分に対して厳しかったジミンちゃんが「どんなに辛い状況でも、僕が自分を辛くしないようにしよう。自分を悪く言わないようにしよう」と、困難な状況に置かれても、自分を責めずに自身を愛することを誓う意味が込められています。

完成に7ヶ月もかかった事に本人も笑っていたけど、この曲のビハインドストーリーを知れば、それだけの時間が必要だった事がよく理解できます。

ジミンペンの方を中心に多くのARMYが既に知っている話だとは思いますが、2020年に公開されたブレイク・ザ・サイレンスでも『約束』について一部触れられていたので、2周年を期に『約束』が作られたヒストリーを改めて振り返りたいと思います。

『約束』を作ったきっかけ

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ジミンちゃんが『約束』を作り始めたのは2018年の5〜6月。その頃、彼の気持ちはとても沈んでいた。

ご存知の方も多いと思いますが、BTSは2017年の後半〜2018年の中旬にかけて、解散を考えるほど精神的に追い込まれていて、同時に色々なことが重なったそうですが、ビルボードで受賞したり、世界的な大スターと自分達が並ぶ機会が増えて、本人達が自覚している『自身のキャパを超えるような"高いところ"まで来てしまった事による重圧』が大きな原因と後に本人達が明かしてくれました。

その渦中にいたジミンちゃんは、気持ちに余裕がなく、彼いわく「自分のすごく優柔不断で正直じゃない部分」が嫌で「なんで僕は自分の思ってることを正直に言えないんだろう。大変なら大変だって言えばいいのに…」という思いを抱えていて、凄くもどかしさを感じていたみたい。

仲間に対して優しく、いつだって気配りを忘れないジミンちゃんだけど、周りが辛そうにしている時に「自分も辛いんだ」という事を打ち明けられずに大丈夫なふりをして過ごしていたんだなと思うと心が痛みます。。

そこで、何か解決できる方法はないか?と1歳年上のナムジュンに相談をしたら「そうゆう事は音楽にして解決してきた」というアドバイスをもらったそうで、彼も曲を作る事で辛い思いを解決しようと考えたのがきっかけだったと語っていました。

そのため、作り始めた当初は『約束』のような慰める曲ではなく、暗い内容で自分に文句を言う曲だったそうで「お前どうしたんだ?」というような悪口寸前の歌詞だったんだとか。

優しいメロディの『約束』からは想像ができなくて、初めて聞いた時はとても驚きましたが、ここからの展開が私はすごく好きです。

ジミンちゃんの『変化』

フェスタ

曲作りを初めてから数ヶ月、書く事はたくさんあったけど、キーになるような具体的な単語が思い浮かばずにずっと悩み続けていたジミンちゃん。

思ってることを素直に言えず、一人でモヤモヤを抱えていた彼は心のどこかで「自分が一番大変だし、寂しい」と感じていたみたい。

でも、友達と一緒にお酒を飲んだり、メンバーとたくさん話したり、公演を重ねる度に

「世の中には自分の話を正直に話して、楽に生きてる人が何人いるんだろう」

「自分よりもっと大変な人がいて、自分の話を素直に言えない人がどれだけ多いんだろう」

と考えるようになったのだそう。上記は本人の言葉ですが、きっと身近な人たちと会話を重ねるうちに少しづつ素直な思いを打ち明けられるようになったんだと思う。

自分が一番大変!って思っている時は中々周りを見渡す事が難しいけど、少し落ち着いて周りを見渡すと、人それぞれ【大変】を抱えながら生きている事が理解できるようになるもの。

そうしているうちにメンバーの状況も良くなってきて、雰囲気は良くなった反面、今度は沈んでた時の感情が出てこなくなって、曲作りの新たな壁にぶつかる事に。作り始めた時と心境に変化があって、辛かった時の感覚が掴めなくなってしまったのだそう。

曲作りのプロジェクトは初夏に始まったけど、気がついた時には夏が終わり、すっかり秋になっていた。

君との『約束』

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"その時の感情"が思い出せなくて悩んで頃、2018年10月にシティ・フィールド公演(アメリカのNY)があった。

シティ・フィールド公演は数あるBTSの公演の中でも【歴史的】と言われていて、アメリカでのスタジアム公演は韓国人アーティストとして初めての事。韓国人に限らず、シティ・フィールドでのコンサートはアメリカ人はもちろん、世界中の歌手が夢見る大舞台です。

そのスタジアムを埋め尽くしたARMYを見て、最後に感極まったジミンちゃんの目にはたくさんの涙が溢れていた。

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感情が豊かなジミンちゃんは色んな公演で泣いてるけど、シティ・フィールドの泣き方は少し異なっていて、何かを噛み締めるように大粒の涙をボロボロ流していた。

拭っても拭っても涙が止まらない様子で、見てる方も思わず泣いてしまうくらいの号泣っぷりなんだけど、その瞬間、ジミンちゃんは舞台上で『自分との約束』をしていたのだそう。

ジミンちゃんは元々『人からどう思われるか?』をすごく気にする性格だし、『かっこいい僕』をみんなに見て欲しい願望が強く、常識では考えられないくらいストイックで完璧主義な面がある。

それらは確かに彼を成功に導いた要素の一つではあるけれど、『彼にとって完璧』でいるためには、少しの失敗やミスも許せず、周りがいくら褒めても満足する事はないし、気軽に弱音を吐くこともできなかったと思う。

約束ができる以前、WINGSツアー中の彼らを映したドキュメンタリー映画、バーン・ザ・ステージの中で、ジミンちゃんは誰もが気づかない些細なミスにも関わらず、ステージの裏でうな垂れて、今にも死んでしまいそうなくらい自分を追い詰めていたシーンがあった。その姿が今でも脳裏に焼きついている。

私自身がかつてそうだったので、つい重ねてしまうのですが、おそらくそういうタイプの人は些細な事ですごく自分を責めるし、常に頑張っていないと自分の価値が無いように思たり、目標を達成する為には自分を極限まで酷使することも厭わない傾向があって、LoveMyselfとは程遠い生き方をしてしまいがち。

白と黒しか存在しない極端な生き方だし、ある意味ずっと飢えている状態なので心理的な負担はかなり大きいです。

そんな彼が世の中には頑張っても努力してもどうにもこうにも上手く行かない事があると知り、仲間に弱音をさらけ出せるようになり、少しづつ心の雪が溶け始めた頃、

異国の地で4万人以上の観客から熱い眼差しを向けられた時に、初めて今まで頑張り続けてきた自分を認めてあげる事ができたんだと思う。

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ジミンちゃんはボロボロ泣きながら

「大変な状況になっても、僕が自分を辛くしないようにしよう。自分を悪く言わないようにしよう。」

と自分に誓いをたてて、そこから『約束』という単語が思い浮かんだと語っていました。

まだ頑張れる、もっと上手くできる。そんな風に自分に重圧を与え続けてきた人が「自分は十分頑張ってるじゃないか」と本心から思えた時、自分に対して申し訳ない気持ちと愛しい気持ちがドバドバ溢れてくる。

これは甘えではなくて、カッコ悪い・情けない自分も自分だし、だからといって、それが"自分の全て"ではないという事を学ぶ自己受容であり、大人になる過程で経験する心の成長の1つです。

あの涙が特別なのは、彼の人生の転換期とも言えるとてもとても貴重な瞬間だから。

この先、ジミンちゃんはまた沢山泣くんだろうけど、私はあのジミンちゃんの涙を決して忘れないし、困難な時期をしっかり乗り越えた彼をとても誇りに思う。

偉大なるナムジュン 

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シティ・フィールドで大きな気づきを得たジミンちゃんは「この思いを多くの人に聞いてほしい!伝えたい!」と思って、すぐにナムジュンに相談をしたのだそう。

「そうゆうときは今すぐ作業したほうがいい」とアドバイスをもらって、そこから1〜2ヶ月で曲の完成を迎えます。



「自分の思いを伝えるのと同時に、この曲がみんなにとっても慰めになってほしいと思った。
そうやって正直に言いたいことが思い浮かんで、約束が誕生した」とジミンちゃんは語っていていた。

『約束』というワードが出てから急激に進んだと言っていたので、少しスピっぽい言い方になってしまうけど、きっとしかるべきタイミングまで待たされていたんだね。

そして『約束』は確かにジミンちゃんの自作曲ですが、この楽曲の完成に欠かせない存在がRMことキム・ナムジュン。

約束は(僕)が(君)に語りかけているユニークな内容になっていますが、僕も君もジミンちゃん自身のことで、僕=君の発想はナムジュンが与えてくれたもの。それと、歌詞に登場する英語は全てナムジュンが仕上げてくれたのだそう。

詞の作業だけでは無いかもしれませんが、サビを作るだけで3日もかかり、ほぼ徹夜で「作業室に住んでた」と表現したジミンちゃんw 「サビには約束する内容を入れたい」と後のドキュメンタリーで語っていたので、それだけ思い入れのあるパートなんでしょう。

そこで「僕は君が君自身を愛することを願う、という内容でサビを作りたい
」とナムジュンに相談をしたところ、数十分で以下の詞を作ってくれたそうです。

I want you to be your light baby
君は君の光になってほしい
You should be your light
君は君の光になるべきだよ

I want you to be your night baby
君は君の夜(闇)になってほしい
You could be your night
君は夜(闇)になれるはず

君は君の夜になれる。君が君の夜であってほしい。

君の光も闇も全て君なんだということをわかってほしい。そういう内容を入れたかった

。

光(希望)も闇も全て自分なんだ。それを認めずに過ごしてしまったら、ほんとの自分ではいられないと思った。

付加的なものだけど、太陽が沈めば夜がくるし、夜が終われば太陽が上がるように、痛みも悲しみもすぐに過ぎ去っていく。

こうゆう意味も持たせたかった。

この歌詞にはそんなナムジュンの思いが込められているのだそう。

ジミンちゃんは特に夜の詞に心を奪われたようで「意味も響きも綺麗でほんとに感謝した。それにどうしてそんな言葉が思い浮かぶんだろうと尊敬した」と言っていた。

『約束』でジミンちゃんが経験した事と、ナムジュンが彼に伝えた言葉はMAP OF THE SOULシリーズの基盤とも言えるもので、

自分を愛するためには、いい部分・よくない部分どちらも自分自身だと認める必要がある。それに、人生には上手く行く時と停滞の時がある事を知り、どんな時でも自分自身を大切に扱ってあげるべきなんだ。

と私は解釈しています。多くの大人ARMYは深く頷く言葉だと思いますが、まだ若い世代のARMYは、いまいちしっくりこない方もいるかもしれません。よくない部分は克服するべきなんじゃないの?そんな事を思う方もいるんじゃないかな。

でも、自分が大人になってからつくづく思うんだけど、大人は自分が子供の頃に思っていたほど【大人】でも【完璧】でもない。実際は穴だらけだ。でも多くの大人は弱い自分がいる事をわかっていて、隠したり否定するのではなく、【扱い方】を学ぶ考えに成長の過程でシフトチェンジしていくんだと思う。否定するよりも、その方がずっと幸せな生き方ができるから。

彼らは普通の人と違う世界線で生きていて、華やかに思えるけど常に堕落への誘惑に囲まれている。そんな環境の中でも、自分を見失わず人として成長している彼らを誇りに思うし、ナムジュンやユンギといった言語化の達人たちによる貢献がかなり大きいと感じます。

彼らがそこに至るまでの過程が『MAP OF THE SOUL 7』に描かれているので、また別の機会に解説したいと思います。

『焼酎』にならなくて良かった(笑)

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ツアー先(日本!)のホテルのベッドでナムジュンと一緒にゴロゴロしながら曲作りをしている様子がドキュメンタリー編のブレイク・ザ・サイレンスに入ってる

のですが、その様子がすごく微笑ましい。

ジミンちゃんが「サビで約束する内容を入れなきゃいけない。状況は変わらなくても、自分を傷つけないって内容だった」と当時感じたイメージをもとに"いつか全てが平気になる君のために"と言う歌詞をナムジュンにみせるんだけど、

「かっこ良く聞こえるけど少し唐突に感じる。"全てが平気になるだろうか?"はどう?こうゆう時間は流れるのかな?この辛さはなくなるのかな?僕も平気になるのかな?」とアドバイスを送る。

「君が嬉しいなら僕も嬉しい、だろ?→でも、よくなれないのになんともないよ、そういってる→君だって辛いんでしょ?うん、

これがいい流れだね」と瞬時に組み立ててしまうナムジュン はやっぱり天才だ。

「メロディや編曲が"君と焼酎を1杯飲みながら話し合う"感じ。格好つけたりじゃなくて。焼酎で一杯やろうみたいな」そんな風にナムジュンが続けると、ジミンちゃんは笑いながら「タイトルを焼酎にするのはどうですか?」←とまさかの返答をするwww

(自分を責めて)それで解決できるわけないでしょ〜〜??あははーーー!!

と二人で飲んでるフリをしながら楽しそうに語っていた。お酒が大好きなジミンちゃんにぴったりだ。

2人のジミンちゃんがお酒を飲みながら「君を見捨てないって僕に約束してよ。一日に何度でも」と語り合ってたら可愛すぎて泣ける。

だけど、もし『約束』が『焼酎』だったら、飲んでキャッキャしているジミンちゃんばかりが脳裏によぎって、こんなに風に入れ込んで聞く事ができなかったかもしれないw

曲名を『約束』にしてくれてありがとう、ジミンちゃん。笑

NEVER MIND:幸せの第一歩

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『約束』が完成してしばらくたった後、ジミンちゃんの体にNEVER MINDの文字が刻まれた。サイン会で「NEVER MINDはとても自分にとって意味がある言葉」と語っていて、2014年はペイントだったけど、タトゥーにしたのはこの頃だと思う。

NEVER MINDは『気にするな』という意味だけど、心配しなくても大丈夫ですよ、と人への気遣いである『気にしないで』とは少しニュアンスが異なり、『そんなのどうだっていい。大したことじゃない。関係ないよ。だから気にするな』というdoesn't matterに近い意味を持つ言葉です。

かつてのジミンちゃんは「自分が幸せで楽しい事が一番大事。自分を誰よりも愛してくれるのは自分しかいない。自分が大切だから、自分に幸せを与えてくれる周りの人を僕も大切にする」というスタンスで生きている長男・ジン君と度々衝突をしてきたのだそう。

一見、自分勝手に聞こえる発言だけど、ジン君の考え方は人生を豊にする為には必要不可欠だ。自分を大切にしない人は、人を大切にする事も決してできない。


『約束』を仕上げた後のジミンちゃんは「ジンヒョンの言葉が合っていていたと感じるようになった。今思えば、(自分勝手な発言ではなくて)僕のためを思って言ってくれていた。そんな風に考え方が変わった」と話してくれた。

体にNEVER MINDの文字を刻んだジミンちゃんは、バンステで膝を抱えて泣いていた彼とはもう違うはず。

2021年も一緒に*

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「曲の制作に7ヶ月もかかったし、僕は創作に向いてない。でも作るのが楽しくて、こうゆうのをもっとみんなに聞かせたいと思った」とはにかみながら語ったジミンちゃん。

「曲作りを経験して感じた事は、ヒョン達は1ヶ月で何曲も作る。同じ作業をしてみて、ヒョン達の凄さと感謝を感じた」

「普段のアルバムにも自分の意見を入れるけど、(ミックステープは)もう少し正直にみせられる。これからも機会があればみんなに聞かせてあげたい」

そんな事も語っていた。

それから約2年後の2020年12月24日。クリスマスイブに『Chiristmas Love』という、とっても可愛くて優しい曲をまたプレゼントしてくれた。

2020年は彼らにとっても大変な年だった。彼らの原動力になっている公演が行えず、自分達を支えてくれる大切なARMYに殆ど会う事ができなかった。

たくさんたくさん苦しんで、辛かったはずだけど、あんなにも優しい曲を作れたのはきっと『約束』の経験があったからだと思う。

2020年を迎える前に、彼が自分と約束を交わす事ができて本当に良かった…!と、これを書いていてつくづく感じたよ。

今回書いたまとめは2019年の1月のVLIVEで彼が直接語ってくれたエピソードが元となっています。

その時、視聴者のARMYから届いた「ジミンの放送をもっと見たいけど、お母さんが寝ろっていう

」というコメントを読み上げて「お母さんのいうことは聞かないと。お母さんみたいな人はいないよ。お父さんみたいな人もいない。お母さんのいうことを聞いて早く寝てください」と優しい眼差しで話してくれた事と、「人生は楽しく生きなきゃいけません」と微笑みながら言っていた彼の姿を私はずっと忘れないと思う。

ジミンちゃんと私の世界線が交わる事はないだろうけど、彼の成長にかつての自分を重ねてしまう事があり、どこか他人事に思えない・放っておく事のできない不思議な感情があります^^;

2020年はどこにも行けなかったけど、生活の中にずっとジミンちゃんの存在があって、すごく救われたし、楽しかった♡

今回まとめた『約束』は、仕事や家族との衝突で(些細な喧嘩だけど)追い詰められて、うまく立ちまわれない時に何度も救ってくれた。

あと数時間でやってくる2021年も、きっと彼らは私たちに色んなものを与えてくれると思う。そんな彼らを来年もずっと見守り続けます*

個人的な解釈を含むので、読みづらい箇所もあったかと思います。最後まで読んでくださり、本当にありがとうございました♡


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