見出し画像

鬼滅は宗教・宗教の役割3つ・アニ「メ」ズム信仰

今回はこのツイートの詳細について語っていきたいと思います。

鬼滅の刃最終巻23巻を読み終えての雑感

鬼滅の刃最終巻まで読んだ後、「これ現代における宗教の代替的な役割を果たしているんじゃ…」と漠然と感じました。

なぜそう感じたのか考えを巡らせていくと、逆に既存の宗教がこれまでに人類に果たしてきた役割が3つ頭に浮かび上がってきました。

これは鬼滅を読んで浮かんだ個人の意見です。ちなみにこんな記事もありますがひとつはほぼかぶって思います。
世界のどの宗教にも共通する3つの大事な役割

では僕が思った宗教の役割3つとは

①共同体の維持
②魂の救済
③死の解釈

です。一つずつ解説します。

宗教の役割①共同体の維持


「秩序をもたらす」とリンクした記事で書かれているのとほぼ同じです。微妙に違いがあるのは宗教によって共同体の規模が全然違うということです。
キリスト教、イスラム教、仏教など、あえてグローバル宗教と呼んでみますが、それらグローバル宗教にとっての共同体は全人類もしくは信者です。基本的に多人種、多国籍が想定されています。共同体の規模がでかい。

逆に共同体の規模が最小な例は台湾やインドネシアにいた首狩り族の信仰になると思います。共同体の規模が自分の部族だけで、隣の山の部族は別人種みたいな感覚なんじゃなかろうかと推測します。
首狩りなんて野蛮でとんでもないですが、山奥のジャングルで人間の住めるスペースが分散したような環境では、部族を存続するための合理的な戦略と言えるのかもしれません。

オタクが好きな北欧神話では、戦場で勇敢に死ぬと戦乙女ヴァルキリーがヴァルハラに導いてくれるとかなんとからしいですが、これも外国で略奪を繰り返すバイキングのライフスタイルを維持するのに実に合理的です。

宗教は争いの元になって秩序を乱していると批判的意見もありますが、共同体の範囲のズレが原因とも言えるんじゃないでしょうか。

というように宗教にはその共同体を維持するための、価値観、規律、ポリシーなどを提供しています。

宗教の影響力が弱体化した現代では、「倫理」「道徳」といった言葉に置き換えられ、法律を聖典のように解釈したり、資本主義によるパワーバランスを信仰したりといった、宗教よりは信頼度が高そうだけど根拠が危ういものが跋扈している状況だと思います。

宗教の役割②魂の救済

「この苦難は神の試練です。」「神に祈れば救われます。」
的なことを宗教は言ったりしますが、こういった類のものを魂の救済と呼ばせていただきます。平たく言えば「お悩み解決」の重め深めバージョンかもしれません。
①は共同体を大事にし、ややもすれば全体主義になりがちですが②は個人の心の問題です。

この魂の救済に関しては仏教が原点にして頂点の解答をしているのではないかと個人的に思ったりします。ただこの「あらゆる人生の悩みを解決するブッダメソッド」は普通の生活でなかなか実践できるものじゃないようです。結局、数週間か場合によっては数年籠って修行生活しないと実感として伴わないとか。
そこで面倒くさいから意味分かんなくもお経唱えておけばOKと日本ではアレンジして派生していったようです。

現代日本でも宗教は多少その役割を果たしていると思いますが、自己啓発本やら心理学からスピリチュアルやら色々代替手段がありますね。

宗教の役割③死の解釈

これは要するに「人は死んだらどうなるの?」に対する解答です。
善行を積むと天国に行き、悪行を重ねると地獄に落ちる。輪廻転生する。先ほど書いた北欧神話もその一例ですね。
イスラム教ではジハードで死ぬと天国で若く美しい処女複数人とハーレム生活ができるというエロゲ業界もびっくりの信仰があるとに書いてあった気がします。

宗教は死と強く結びついていて、結果として葬式の実務も宗教に準拠してますね。
多くの日本人は普段は無宗教だと自覚していて、親族の葬式で初めて宗派を知るという完全に形骸化した状態にもなっていると思います。逆に言うと現代日本では宗教の役割の①②は他のものに奪われ、③の実務的な側面の葬式の作法にしか残ってないと言えるかもしれません。

鬼滅は宗教の3つの役割を満たしている!?

以上3つの要素を踏まえると鬼滅を全巻読んだ人ならもうピンときているんじゃないでしょうか。この3つの役割を鬼滅が満たしていると…!
※ここから先最終巻までのネタバレ含むので注意
一つずつ検証してみましょう。

①共同体の維持

現代では倫理や道徳に置き換えられていると書きましたが、鬼滅にもバッチリ描かれていますよね。
それこそ煉獄さんのノブレス・オブリージュ的思想であるとか、炭治郎の素朴な家族愛とか
そしてお館様から柱たち、次の当主、古くは継国縁壱まで遡る、託されてきた想いを繋ぐこと。炭治郎が何気なく富岡義勇に「なんで想い受け継がないんですか?」と聞いて義勇がはっとするシーンもあったと思います。(漫喫で読んだ箇所なのでうろ覚え)多分鬼滅のメインテーマは想いを繋ぐ、託す、ことなんでしょう。
まさに共同体を維持するための価値観、思想、指針。

こうしたテーマはへたっぴな作家が扱うと「説教臭く」なってしまい面白味にかけ、うすら寒くなったりしがちなものですが、鬼滅では圧倒的説得力で描かれています。

さらに言えば「想いを繋いでいく」ということは以前書いた記事で「生命の本質は循環と型の維持により時間の流れ(エントロピー増大)に抗うこと」

と重なる部分もあり、共同体の維持どころか生命の本質がテーマになっているという見方もできるんじゃないでしょうか。
ちなみに鬼はエントロピーから外れた存在ですね。

②魂の救済

これは一般化されたブッダメソッドみたいな描かれ方はされていませんが、個別具体的に実に丁寧に描かれています。(そもそも名作漫画は大体そういうキャラの深掘りがあるので鬼滅に限った話じゃありませんが)

キャラクターそれぞれに、コンプレックスやテーマがあり、それとどう向き合い、どう乗り越えていくか?それこそ柱一人ひとりも千差万別ながら濃い人物像が描かれていて、どんな人が読んでも思わず「このキャラは自分だ!
!」と自分事として読める設計になっています。それは人によっては鬼のキャラかもしれない。

そしてそれぞれのキャラに救いが示されている。鬼であっても。
それは正に魂の救済ではないでしょうか?

③死の解釈

これは実は作中でずっと描かれてはいなかったんですが、最終話で満を持して描かれましたね。

みんな輪廻転生しました(泣き)

シンプルにそれだけだけど、鬼滅を宗教たらしめる最後のピースを最後の最後で持ってくるとはよもやよもや…

この最終話、推しの幸せな顔が見たいという気持ちに応えるファンサービス的な展開とも思われかねない、下手すると世界観をぶち壊しかねない最後ですが、僕としては何とも言えない素晴らしい最後だと思いました。全くのフィクションだけど、今、現実を生きている読者につながっているんだよと吾峠先生から託されたメッセージだと思います。

鬼が一人も転生していないのも、ひとつのメッセージだと思います。生命の循環から外れてしまったから輪廻転生の循環からも外れてしまったのかもしれません。

ということで③死の解釈も描かれました。
そういうわけで最終巻まで読んだ時、「これは宗教だ!」と感じたわけです。

他作品は3要素あるのか?比較してみる

長々書きましたが、自分の中の自己批判的人格がこう言いました。
「その3つの要素って別に鬼滅以外にもあるんじゃね?」
商業漫画に限ってもコンテンツ量が膨大なので、たぶん探せばあると思いますが、メジャーなジャンプ作品を幾つか比較検証してみます。読んだり見たりことない作品は入ってません。(例:ナルト)

ざっと表にしました。超ざっくりでそれぞれ補足します。あくまで僕の主観ですが。唐突にディズニー映画一つ入ってますがそれも後で捕捉します。
ちなみに作品の面白さや良し悪しを評価したものでないので誤解しないようお願いします。宗教の役割3つを満たしているかどうかのみで検証してます。また完結していない作品や途中までしか見てない作品もあるので、その時点までの検証です。

ドラゴンボール
①共同体の維持:△
漫画が面白いのは間違いないですが、悟空の倫理観がぶっ壊れてて平気な顔して「ドラゴンボールで生き返せる」と人の死をぞんざいに扱ったり、いかがなものかと思います。唯一ピッコロさんからは学べる面があると思います。やっぱ神さまやね。
②魂の救済:△
これも悟空が悩まなすぎて…。ブウ編でベジータが悟空を認める所でちょっとだけありますかね。
③死の解釈:〇
死後の世界についてありえんぐらい丁寧に描かれているwwwwwけど現世と同じ物理法則が働いてたり無茶苦茶wwww圧倒的な空間作画力があってこそ描けた世界だと思います。ただ人々が求める死の解釈とは違いますね。

ジョジョの奇妙な冒険(5部まで)
①共同体の維持:◎
ジョナサンの紳士たる振る舞いだったり、ジョルノの黄金の精神だったりふんだんに散りばめられていると思います。
②魂の救済:〇
あまり自信ないけどナランチャや吉良の息子と最初に殺された女の子とかで描かれていたと思います。独特な内面や心理を持つキャラが多くて評価が困るところがります。
③死の解釈:〇
4部で幽霊が出てきたり…。5部のボスは最後どうゆうことだっけ…(汗)。死について描いているけど理解するのが難しい印象があります。

スラムダンク
①共同体の維持:〇
スポーツ漫画を比較対象にするのは適切じゃないけど名作なので入れました。不良少年がバスケットマン、アスリートになるという点で、狭い世界ながらもそれなりに描かれていると思います。
②魂の救済:◎
これはガチでしっかり説得力を持って描かれていますね。湘北の5人だけでも満足だけど、ライバル校の描写もエグイ。最近の漫画でもなかなかここまでは到達できないと思います。
③死の解釈:×
スポーツ漫画なので特にないです。

ワンピース(70巻ぐらいまで)
①共同体の維持:◎
仲間の大切さ、誇りを持つことの大切さ、等々明確に描かれています。明確過ぎてやや押しつけがましく感じることも無きにしもあらず。
②魂の救済:◎
い゛き゛た゛い゛!!などで象徴されるようにメインでしっかり描かれていますね。
③死の解釈:×
意外と死んだ人少ないような…ナミの義母ぐらい?あとロジャーか。あまり扱ってないですね。

ハンターハンター(蟻編)
ハンターハンターは編によってテイストが様変わりするので対比できるようわけてみました。
①共同体の維持:〇
〇にしたけどかなり△よりだと思います。基本的に個人の在り方の方が重視されてます。共同体を意識してるのはイカルゴぐらい?
②魂の救済:◎
蟻編自体がメルエムの魂の救済。それに尽きますね。
③死の解釈:〇
蟻化することが半分転生のように描かれて、最後のカイト。明確ではないですがやんわりと死の解釈が描かれていました。

ハンターハンター(GI編/会長選編)
蟻編の前後が実に対照的だと思ったので、この二つをチョイスしてます。
①共同体の維持:△
とにかくゲームに勝つこと選挙に勝つことが一番で倫理や道徳とかあると損しちゃうような世界観。一時期多かったデスゲーム系はこういうノリが多いような。
②魂の救済:△
ほぼそういう話もない。予想だけど蟻編が少女漫画も引くぐらいエモエモのエモだったので富樫先生が照れ隠しでドライにしたんじゃないかと思っちゃいます。
③死の解釈:△
これもたぶんない。「死んだヤツからカード奪える!」ぐらいのドライ感。

僕のヒーローアカデミア(アニメ4期まで)
①共同体の維持:◎
もうワンフォーオールが名前から能力の特性からど真ん中でド直球で描いてるやん。そもそもヒーローは共同体のために戦うもんだし。
②魂の救済:◎
これも丹念に描かれています。かっちゃんの内面に徐々に迫る所とか最高。スラムダンクや鬼滅に比べると敵側の描き方が弱いと思ってましたが、ジェントルで巻き返してきました。
③死の解釈:×
ワンピース同様意外と死なない。サー・ナイトアイぐらい?

リメンバーミー(ディズニー映画)
なぜここで唐突にディズニーかというと自分の記憶の中で3つとも◎になる作品ないかと考えてたらぱっと浮かんだからです。
①共同体の維持:◎
割と規模が小さいですが(家族、村?)どうあるべきか描かれています。
②魂の救済:◎
見た人は分かる。言わずもがな。
③死の解釈:◎
こんなにも鮮やで生き生きして説得力のある死後の世界は見たことないです!!

ということで他作品と比較してみました。異論反論は色々ありそうではありますが、宗教的な役割を部分的に満たしている作品は多いですが、全て満たしてるのはやはり鬼滅ぐらい。海外ではリメンバーミー。あと何年か前に見てちょっと記憶が怪しいですが「若おかみは小学生」も3要素◎になりそうです。

鬼滅ヒットの理由を色々な人が色々な角度で分析していますが、ずっと供給不足だった宗教的ニーズを気持ちよく全て満たしてくれる作品という説をこの記事で発信することとします。

日本人は宗教を○○として親しんでいる??

tiktokでこんな動画を見かけました。

日本人が信仰している宗教トップ5。1位は62%でAtheism(無神論者、無宗教)

このシリーズを色んな国でやってましたが何故か日本は割とバズってましたね。無神論が多い国は珍しいからでしょうか?

しかし日本人の62%は神はいないと思ってるというのは何か違うような…。いうて神社にお参りとか普通にするし…。一粒のお米には神様がいるから残しちゃいけないみたいな話を割と受け入れるし…。

よく聞く話ですが、八百万の神々≒アニミズム信仰が色濃く残っていて仏教もブレンドされ、ちょいちょいキリスト教のイベントも取り入れごちゃまぜ状態という説がなんとなく腑に落ちると思います。

この動画でこんなコメントもついてます。

『神道で生まれ キリスト教で結婚式を挙げ 仏教で葬式を行い死んでいく』宗教については特段考えず生きている 年に数回神社やお寺で 御先祖に対して感謝し子供の安寧や平和を祈っている 日本人としての道徳は教育や社会から自然と学んでいるんじゃないかな

ここまでは定説と言ってもいいものかもしれません。
本記事ではここからは一歩深めて僕個人の説を上げてみます。それは…

日本人は古来から宗教はフィクションとして受け入れ親しんでいる説。

キリスト教他グローバル宗教はまず「信じる」「聖典に書かれていることが真実」とガチ感が半端ないです。

一方日本の場合、古事記の神話からして既に荒唐無稽。書いてる人は歴史的事実だと思って書いていたんでしょうか?書く方も読む方も「正直ファンタジーって分かってるし、そこに事実と違うといちいちツッコミ入れるのは野暮」という感覚じゃないでしょうか。

真実じゃないしフィクションだけど、そういうもんだと受け入れ、それで丸く収まって、日々の生活はよくなるんならいいんじゃない。というメンタリティ。これは日本人特有なのかもしれない。

日本で生まれたアニメズム信仰

フィクションをフィクションとして受け入れ楽しむ。
この表現、以前noteで書いていました。

日本のオタク的には「フィクションをフィクションとして楽しめないやつは頭がおかしい」と言いたくなるのでは。神はいっぱいいる。聖地巡礼も行く。フィクションだから意味ないだと?二次元は我々を裏切らない!(cv櫻井孝宏は別らしい)
ハラリよ。イスラエル人からしたら…ユダヤ教徒からしたら…物語を信じるのよくないと言うのなんとなく分かる。多分周りの友達も知的エリートばっかりでそういう思考になるんだろう。でも物事には色んな面がある。
アニメを見ろ。フィクションを楽しめ。そしてバ美肉化しろ。世界が広がるぞ。次はもっといい本が書けるぞ。

何故かユヴァル・ノア・ハラリ氏に喧嘩腰ですが、先述した日本人のメンタリティと同じ特徴を書いてます。

そしていよいよ、ここで鬼滅の話、漫画アニメゲームといったポップカルチャーが「ポップ」じゃなく宗教的役割果たしているという話につながってくるのです。

ツイッターでチラ見した程度なのでやや不確かですが、島本和彦著「アオイホノオ」の中で「オタクは漫画やアニメから正しさや倫理観を学ぶ!(非オタはどこで学ぶんだろう?)」といった内容があったと思います。

言い換えると「オタクは共同体の維持を漫画アニメから得る」となるし

先ほど上げたYouTubeの「アニミズム・神道が根付いている?日本人の独特な宗教観」についたコメントに加えるなら

日本人としての道徳は教育や社会からそして漫画アニメから自然と学んでいるんじゃないかな

となっていきます。

これが日本人のアニミズム信仰ならぬアニメズム信仰!!!

改めて整理しますと

日本人は古事記の時代からフィクションをフィクションとして親しんでいた。

仏教など海外の神もフィクションの新作、新キャラ的感覚で受け入れる。

徐々に既存の宗教の影響力が弱まり、第二次世界大戦後で決定的に。

手塚治虫が現れ日本人が渇望していた宗教的役割…共同体の維持、魂の救済に漫画で応え始めた。

更に漫画アニメ文化は発展し、鬼滅の刃が死の解釈も含め大ヒットを起こしたことでアニメズム信仰となる。

言いたいことはざっくりとこんな感じです。

アニメズム信仰はグローバル宗教となるのか

日本のアニメ漫画が海外でも人気というのはネットが発達し、より可視化されてきたと感じます。

にしてもリアクション良すぎるwwwwこういう人がいるのは想像できますが人数や割合がどんなものかはちょっとよく分からないです。
ちなみに鬼滅は黒人系に人気があるような

アメリカではヒロアカが圧倒的人気と噂を聞いたことがあります。

海外の人メンタリティとか想像つかないし、今後どうなるか予想もつきません。

日本から送る宗教の3要素を満たした鬼滅の刃。もし海外でも大きなヒットとなれば。アニメズム信仰はグローバル宗教となり。それは人類の宗教観にも大きな影響を与え。ブッダ、キリスト、ムハンマド、の次に竈門炭治郎の名前が刻まれる…なんていう可能性が…

…あるわけないでしょう。
しかし鬼滅だけでなく日本には八百万の漫画アニメが有ります。総力として信者を増やしていき、世界中のAtheismがAnimesmに進化して勢力図を塗り替えてしまう。そんな日が来ることも遠くはないかもしれない…。

無職(2019/10/01~)のポッティにご支援お願いします。