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説明の難しさ

X(旧Twitter)を見ていると、蝉川夏哉先生の、こんなポストが流れてきました。

オタク、Eを話すために「ABC……」と話し始めて結局D辺りで聴いて貰えなくなることが多く、「最初からEを面白く伝えるにはどうすればいいか」という別の手立てを考えないといけないが、それが苦手なのもまたオタクらしさであり……みたいな難しさがある。

https://x.com/osaka_seventeen/status/1727406281257087131?s=20

「Eを面白く話すのが苦手なのがオタクらしいとはどういうことだ?」というと、ある物事のルーツや直接の引用元に関心を持ち、それ故にある単独の事物がそれ単体で生起したのではなく、大きな連続性の中に生じたという認識を持ち、その前後関係から説明しなければならないという感性こそがオタク的。

https://x.com/osaka_seventeen/status/1727408451868115034?s=20

①1000ページの大作を書く前に

これ、学生や受講者を指導していても、本当に多いですね。これが説明ならば、単に聞いてもらえないで、自分の説明の下手さに気づきますが。ときどき、1000ページの作品を書いちゃって出版社に持ち込みする人間とか、います。

もちろん、その行動力自体は、素晴らしいのですが……。投稿者に求められているのは、まずは30〜45ページの読み切りで、面白い話を作り上げる力です。

それがたった30ページの作品であっても、読者は数ページ読んで面白くなければ、途中で投げ出します。いわんや1000ページの超大作をや。だからこそ商業作家には、読んだ読者に次のページをめくらせる力が必要なのですね。

②ページをめくらせる力

面白さを伝えるために、いきなりEから話して、話を遡っていく倒叙。ABCを思い切って削ってしまい、DEと語る引き算パターン。ACEと飛ばす一個飛ばしにするモンタージュ、方法は多種多様です。

MANZEMI講座で、まずコマ割りの文法と演出から教えるのは、この点を踏まえているからです。

コマ割りの文法とは、単にページを埋めるための手練手管ではありません。どうやったら読者に、次のページをめくってもらえるか、そのための演出と不可分一体のものですから。そういう ページをめくらせる力の積み重ねが、1000ページを超える大長編さえも、最後まで読み終わらせる力になります。

③構成力のあれこれ

みなもと太郎先生はまさに、坂本龍馬というEを描くために、関ヶ原の戦いというAから説き起こして『風雲児たち』という、1979年から2020年の長きに渡り、江戸時代の通史を描かれたのですが。

これも、ギャグ漫画の短いページで 読者を引き付ける力を持った、みなもと先生の力量ゆえかと。各章の登場人物も魅力的で、そうやって田沼意次や林子平など、教科書とは違う人物像が浮かび上がってきました。

これが『北斗の拳』の週刊連載版の第1話場合は、時系列から言うならば、A+DEFのパターンでしょうか。

A:発端の核戦争
B:戦後の混乱
C:シンとユリアとの因縁
D:モヒカン跋扈の現状提示
E:北斗神拳炸裂アタタタタ!
F:バットとの旅立ちとリンとの再会の予感

Aで発端の核戦争を描き。
BCをバサッと削って、Dで世界の変化を見せ、ついでにここで北斗神拳の予兆を示し。
Eは主人公のキャラクターと、その回の主役の少女リンの問題を見せ。敵を倒す中で、彼女が言葉を取りもどし、また北斗神拳の攻撃面と治療面も見せ。モヒカンもバシッと倒し、次回への期待を高める。

とてもハイレベルな構成ですね。Eの中でも、いくつかの構成が見えます。

④最適の文字数は?

ここから派生して。
小説の場合、投稿作品でも一般に400字詰め原稿用紙250枚から350枚が要求されるわけですが。これって、漫画だと200ページから400ページぐらいの内容でしょうか。かなり膨大な分量です。

逆に言えば小説は、ABCDEF……XYZみたいな、高い構成力が求められるんですよね。8万文字から10万文字の中でACEGIKMOQSUWYなんて、一個飛ばしの構成が、必要かもしれませんから、もっと大変でしょう。再び、蝉川先生の指摘を転載。

「web投稿作が書籍化されるようになってラノベ作家が激増した理由」には無数の理由があるけれど、その中の一つに「ほとんどの人間は10万字の整合性のある文章をいきなり書くことはできないが、2500字を40回書くことはできる」ということもあると思っている。

https://x.com/osaka_seventeen/status/1730493563283419474?s=20

2500文字は、400字詰め原稿用紙だと8枚ぐらいでしょうか。ちなみに、当方の漫画原作だと24~36ページ想定のものだと6500文字ぐらいでした。小説にすると地の文が増えるので、8000文字から10000文字でしょうか。2500文字は漫画だと6~9ページぐらいですかね。

カクヨムやアルファポリスで発表した小説の感触だと、もうちょっと多いですね。だいたい、16~18ページの漫画ぐらいのイメージでしょうか。週刊連載漫画のページ数に近いですね。

⑤短編~中編小説メソッド

個人的には、漫画の16~30ページに該当する、掌編や短編の修業の場があまりないのが、けっこう問題と言うか。最初から高い構成力の才能があるタイプしか、小説界は求めていないのか……と、思ったりします。

推理小説の始祖エドガー・アラン・ポーの短編主義の信者からすると、短編から長編を書くメソッド化できれば、もっと才能を拾えそうなんですが…。ここらへんに関しては、MANZEMI事務局のスタッフや、他の講師とちょっと話し合っていることなのですが。

300文字・3000文字・30000文字とステップを踏んで、構成を学ぶプログラムを、2024年は試してみたいところです。

筆者の小説(電子書籍版)でございます。お買い上げいただければうれしゅうございます。

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