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なじみヨータ『妖のフレンズ』

なじみヨータ先生の縦スクロール漫画『妖のフレンズ』が、Amazonで発売されています。無料ですから、誰でも入手可能です。Amazonは、縦読み漫画にも力を入れているようで、Fliptoonという形で、他にも多数の作品が、用意されています。興味深い試みですので、現状では応援したいですね。スマートフォンやタブレット型はもちろん、パソコンのブラウザでも読めますので。

6年ぶりに故郷の村へ戻ってきた「アキ」は、妖怪が見える少女。幼少期に出会った心優しい妖怪「ぎん」とまた過ごせるのを楽しみにしていた。 しかし、久しぶりに会った彼はアキに冷たく接してきて……。

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妖怪と人間の恋が描かれつつ、でもバトルシーンもきっちり描かれ、チビ妖怪たちのデザインも可愛く。本作はフルカラー漫画なんですが、一部の作品にありがちな、生成AIで衣装を描かせたのかというような過剰書き込みの、煩わしさがありません。

でも、上記カットを見るまでもなく、画力が非常に高く。カラーも派手すぎず目に優しく、これはオススメです。

①縦スクロールの問題点

縦スクロール漫画は、コマやセリフの配置が間延びして、やや読みにくい作品が多い印象です。なので縦スクロールは苦手という人、まどろっこしいという人、読むのにかかる時間の割に情報量料が薄いという人、筆者の周囲の漫画家にも、多いですね。

スマートフォンの小さな画面では、読みづらいという人もいます。確かに、老眼が始まった人間には辛いです。いちおう作りて側も対策として、文字を大きめにしていますが、そうすると吹き出しあたりの文字数が、かなり制限されます。そうすると、情報量も激減。

残念ながらウェブトゥーンは、読者数が多い男性漫画読者を狙った作品作りをしているのですが、男性漫画がアクションを重視。アクションって基本、横スクロールのほうが相性が良いようで。

でもこの作品は、とても読みやすいですね。理由は、感覚的なコマ割りをする少女漫画と、縦スクロールは相性が良いようで。たぶん、ウェブトゥーンの編集部は男性が多く、少女誌出身の編集者や、女性編集者が少ないのでしょうね。

②少女漫画と縦読み漫画

男性師のアクション重視に対して、女性漫画は登場人物の内面の変化を重視しますから。必然的に、モノローグが多めになりますが、これが縦スクロール漫画と相性が良いと、MANZEMI講師陣の分析があります。

本作は、読者の目の流れを理解して、スクロール速度に合わせて吹き出しや絵や擬音が配置されています。無理に縦スクロールっぽいコマ割りではなく、普通の漫画を縦スクロールように配置し直して、再構築した感じです。

ウェブトゥーンの描き方を解説した本を読むと、多くが執筆用の画面を分割し、そこにどう絵を配置するかを解説していますが。漫画って、そういう機会的な作業よりも、もっと作家の感覚的な吹き出しや絵や擬音の配置による、画面構成なんですよね。

韓国のウェブトゥーン作品でも、『シンデレラを大切に育てました』は少女漫画的なコマ割りの縦読み漫画になっており、本家の韓国でも少女漫画との相性の良さと、それを理解した作家が育ってきた感じなのでしょう。

少女誌系は儲けは薄いかもしれませんが、息の長いファンが付くので、編集部の方も、経営戦略を考え直していただきたいですね。

③Amazon Fliptoonとは?

さて、5月6日応募締切で『Amazon Fliptoon 縦読みマンガ大賞』が、作品募集されまして。なんと、賞金総額1億円という大判振る舞い。あまりの額の大きさに、クラクラします。
とても超豪華な内容だったのですが、あまり話題になりませんでしたね。

・グランプリ1000万円(1名)
・準グランプリ各750万円(4名)
・カテゴリー賞各400万円(14~15名)

大手出版社の漫画賞でも、1000万円とか2000万円はありますが、かなり特別な賞で、普通の編集部の場合は大賞でも100万円とか50万円です。しかも、それ自体はめったに出ず、入賞や佳作がせいぜいです。

島本和彦先生の傑作『アオイホノオ』でも、岡崎つぐお先生のデビュー作がネタにされいていましたが。そういう意味では、Amazonは攻めていますね。

漫画家でもまだ、ウェブトゥーンに対して、戸惑っているのでしょうけれども。ウェブトゥーンでも、新しい表現が生まれ、試行錯誤の時期から、確立されれば、興味深い存在になれるかと。


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