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質問箱012:デビュー2作目が描けなくてまいっています

※Twitterの質問箱に寄せられた質問を、別途アーカイブしておきます。また随時、加筆修正を加えていきます。

【質問】


【解答】

①80年代ジャンプの傾向

ひょっとして、デビュー作が即連載になった方でしょうか? 週刊少年ジャンプの連載作家でも、投稿作が即連載になって大ヒットしたけれど、二作目でつまづいた……なんて作家は多いですね。

・キャプテン翼→翔の伝説
・キン肉マン→ゆうれい小僧、蹴撃手マモル
・北斗の拳→サイバーブルー
・風魔の小次郎→男坂
・よろしくメカドック→ロードランナー

80年代作品だとこういった作品に共通するのが、ヒットした前作と似たようなジャンルや、傾向の作品を始めて、苦戦するパターンでしょうか。編集者は前作のヒット幻想を追いかけて、無難な似た傾向の作品を求めがちですから。そして作家の側も、ついそうなってしまいがちですね。

鳥山明先生のDr.スランプ→ドラゴンボール、北条司先生のキャッツ・アイ→シティハンターは、稀有な例ですね。

②読者に熱いお茶を出す

目先を変えるというのは必要で。例えば、あだち充先生は得意の野球漫画の長期連載のあとは、水泳や時代劇など傾向の違うジャンルの作品を挟みましたね。例えば、お寿司屋で熱いお茶を飲むことで、舌の脂を溶かして流し、リフレッシュするように。このような目先を変える戦略は、有効でしょう。

ここで重要なのは、『ラフ』も『虹色とうがらし』も『QあんどA』も、それ自体は6〜12巻の長さに収めている点です。2作連続の長期連載の大ヒット作を狙わず、程よい長さで切り上げる上手さですね。もちろん、あだち充先生ほどの実力があってこその、長期戦略でしょうけれど。参考になります。

もっとも、『KATSU!』は16巻と、やや中途半端な連載期間になってしまった感はありますね。このあと、『クロスゲーム』が17巻と、分散した印象です。もっとも、発表の媒体を週刊少年誌から月刊誌へ変えた『MIX』は、20巻を超える長期連載となって、安定しています。媒体を替える、というのも一つの戦略かもしれません。

③アイデアを貯金する

以上のような点から、前作の影を引きずって、次の作品が描けなくなってる方には、以下のような方法が有効と考えられます。

・前作と傾向を変える
・長期連載を狙わない
・発表の媒体を変える

作品と商品の間で、作品作りに苦しんでいる面もあるかもしれませんので。商品ではなく作品として、自分で描きたいものをSNS上で発表するのも手かもしれません。

受けを狙わず、あくまでも軽い気持ちで、楽しんでやるのが大事かと。受けても、長期化を狙わず、一旦きれいに終わらせる。そうすると、次々作がコケたときの保険にもなります。しかしそのためには、日頃から読み切りのためのアイデアを、ストックしておくのが有効でしょう。

④具体的実践方法として

例えばX(旧Twitter)なら、1コマ漫画や四コマ漫画やショート漫画と、とても相性が良いので。もし質問者さんがストーリー漫画のかき手ならば、そのような作品を発表するのも良いかもしれません。適当なところで切り上げるのも、大事ですね。

ちばてつや先生の『のたり松太郎』も、最初は短期で終わらす話として、ちば先生らしからぬ破天荒なキャラクターを造り、最後は刑務所に入るという落ちだったのですが。けっきょく、ちば先生の作品の中で、最も長期間に渡る連載になりました。

そう考えると、連載中の作家が別の読み切り作品を発表する、というのを人造的にやっていたのが、ジャンプの愛読者賞だったんですけどね。あれも、友好な方法論だったのですが。1973年 - 1983年まで続けられたこの制度が終わった(1997年に一度だけ復活)結果、作家の負担は減ったけれど、一発屋が多くなった印象ですね。

こういう戦略論は、投稿者には遠い話ですが、プロには切実ですね。多少は参考になれば幸いです。


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