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十二月手鞠唄

トントントン
先ず初春の〔正月〕
暦ひらけば
心地よいぞや
皆姫始め〔一月二日〕
ひとつ正月
年を重ねて
弱いお客は
つい門口で
御礼申すや
新造禿しんぞかむろ
例の土器かわらけ
とりどりに
なずな七草〔一月七日〕
囃し立つれば
心いきいき
ついおえびすと〔一月十日〕
じっと手に手を
〆/注連しめの内とて〔一月五日〕
奥も二階も
羽根や毛毬けまり
拍子揃えて
音もドンドと〔一月十五日〕
突いてもらえば
骨正月に〔一月二十日〕
こたえかねつつ
いく如月の〔二月〕
れて流るる
水はたきぎ
能恥ずかしや〔二月七日から〕
摩耶まやも祭か〔二月初午〕
初午はつうまそうに
抱いて涅槃ねはんの〔二月十五日〕
雲に隠るる
屏風の内で
床の彼岸か
聞くも聖霊しょうりょう〔二月二十日〕
アアよい弥生やよいと〔三月〕
指で悪洒落わるじゃれ
憎くとふっつり
桃の節句は〔三月三日〕
汐干というて
痴話の炬燵こたつ
足で貝踏む
衆道好きとて
高野御影供みえくや〔三月二十一日〕
さて水揚げの
卯月うづき疼きも〔四月〕
後にゃ広々ひろびろ
釈迦も御誕生〔四月八日〕
息も当麻たいま(絶間)の
床の練供養〔四月十四日〕
くや夜明けの
鐘の響は
権現ごんげん祭〔四月申の日〕
濡れてしっぽり
五月雨月さみだれづきとて
道鏡どうきょうまさりの
幟竿のぼり立て〔五月五日〕
兜ずいき(頭巾)の
まくやちまき
節句御田おんだの〔五月十四日〕
紋日もんぴ喜契紙
長命くすり
いくをやらじと
止めてこらえりゃ
つい林鐘りんしょうに〔六月一日〕
愛染あいぜん
涼み祇園ぎおんは〔六月六日~十四日〕
ほこ々饅頭
子供時分は
よい夏神楽〔六月十七~二十一日〕
過ぎたしるしか
いかい提灯
地黄じおう玉子で
精をつけては
皆おはらいや〔六月三十日〕
うわさなかばへ
つける文月ふみづき〔七月〕
折にふれての
七夕客も〔七月七日〕
盆の間は〔七月十三日〕
踊かこつけ
よねや/むすめ 仲居を
口説きとるのが
音頭とことよ
肥えて むっちり/むっつり
白き太股
通をうしのう萩月〔八月〕
さても頼もし
血気盛りの
きおぐちには
姥名月も〔八月十五日〕
ぐっと月見りゃ
十六夜いざよい気味と
又とりかかる
二度目の彼岸
これも成仏じょうぶつ得脱と
いとし可愛いの/憎い可愛いの
声も菊月〔九月〕
節句せっくや〔九月九日〕
茶臼ちゃうでするのが
豆の月とや〔九月十三日〕
祭しまえば
皆片端みなかたはし
(二折三折の)
のべをきらして
紙なし神無月よ〔十月〕
の子餅とて〔十月亥の日〕
大人も子供も
名号みょごのあたりを
も十も〔十月五日~十五日〕
突いてもらえば
ほんに誓文払〔十月二十六日〕
強いお方じゃ
もそと霜月〔十一月〕
泡を吹き矢の
ふいご祭か〔十一月八日〕
加勢をしたさの/顔は上気の
ほんの御火焚
つい大師講して〔十一月二十四日〕
すすめられつつ
つい師走しわすれの〔十二月〕
男愚かや/乙子おとごおろかや
よい事始め〔十二月十三日〕
陽気浮気の
ほうき客とて
中/西 や南を
掃いて廻るや
すす取り
のちにゃくたびれ
ほんの餅つき
はや節分の
穢れ不浄の
厄を払うて
豆の数々
ちょと三百六十余ついた

いれて❤️