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瞽女万歳(柱立て)

〈太夫〉
春のはじめの めでたさは
鶴よ亀よ いちぎょうかさねて
おんとくわかには ご万歳とは
君に栄えておわします
あいぎょうありけるあらたまの
としとるそのひの あしたには
水もわかゆる きのめもさく
きんそうこうの 玉の冠こうべにみんす
がくやがうったる つるぎはり
ゆづりはをば口にふくませ
五葉の松をば おんてにもち
まことにおめでとそうらいける

まずはここらで才蔵が番だ
ああいいとも才蔵やっとくれ
才蔵がやるのはどうでもいいぞ
しっかりはやせやはやせや才蔵

〈才蔵〉
ほらこい ほらこい
ほらこいてばなんでもこい
今年ゃ豊年だ豊年だてば万作だ
兄の田が千刈りで かかの田が万刈りで
千刈り万刈り刈りこんで
それをみでもってすくいこみ
枡でもってはかりこみ
このや俵にみとこばかりもゆわいて
ぎっしらぎっしらぎっしらと
大八車におんのして
押してくれや引いとくれ
うんとこしょーのどっこいしょ
押しても押しても入らぬ
倉の戸前が狭くて
押しても押しても入らぬときゃ
つばきつけて押し込め
ヤットコサで奥まで押し込んだというたが
さあさ お祝いだが太夫さんの番だ

〈太夫〉ハァようしたようしたよした才蔵

まずはこれより柱立てをばなさりける
柱立てのみごとさは
一本の柱をば いちぶつ薬師泉の金銀
使えど尽きせぬお守り神
二本の柱をば 仁王権現 錦の巻物
切れど尽きせぬお守り神
三本の柱をば 山王権現 酒は泉で
飲めど尽きせぬお守り神
四本の柱をば しめし四天の士農工商
子孫繁盛のお守り神
五本の柱をば 牛頭王天王 五穀豊穣
食べれど尽きせぬお守り神

まずはここらで才蔵が番だ
ああいいとも才蔵やっとくれ
才蔵やるのはどうでもいいぞ
しっかりはやせや どうでもいいぞ

〈才蔵〉
ほらこいほらほらほらほらこいてば
やれこらこいてばなんでもこい
どうだいところがきいとくれ
きくともなんでもやっとくれ
才蔵なんぞは喋くりだしたらとめどがない

めでたいなかのそのなかで
七福神が寄り集まって大変だ
七つの蔵をこの屋敷
きりりしゃんとおったった
豆ゾが豆蔵おったった
大黒米蔵おったった
弁天砂糖蔵おったった
布袋様質蔵おったった
お恵比寿さつ蔵おったった
長者が酒蔵おったった
才蔵なんぞはいいもんだ
信州の諸白 越後の菊酒
才蔵なんぞは長柄の銚子をたずさえて
いっぺーにーへーさんべー飲んで
のりつけほーせほーほーてってっぽっぽゎいうたが
さあさこれから太夫さんの番だ

〈太夫〉ハァ才蔵ようしたようした才蔵

六本の柱をば六地蔵が
ろくをかたねておわします
七本の柱をば七福神が
宝を積んでおわします
八本の柱をば
初瀬の観音かみにとりては八百ばんずい
夫婦妹背のお守り神
九本の柱をば熊野の権現 蔵にはお荷物
出船入船お守り神
まずはここらで才蔵が番だ
ハァいいとも才蔵やっとくれ
しっかりはやせやはやせや才蔵

〈才蔵〉
ほらこいほらこいてばなんでもこい
また出た才蔵だ
とんと隣の藤兵衛が
たんだひとつのすり鉢を
いつのまにやら借りてって
ついたちにとりにいったれば
ついもないこというてくるなとそうこいた
ふつかにとりにいったれば
ふっつりやらんとそうこいた
みっかにとりにいったれば
見もせぬこというてくるなとそうこいた
よっかにとりにいったれば
用もないのになぜまたきたやとそうこいた
いつかにとりにいったれば
いつ俺かりたとそうこいた
むいかにとりにいったれば
無理をいうなとそうこいた
なのかにとりにいったれば
なんでもないのになぜまたきたやとそうこいた
ようかにとりにいったれば
薬師如来の命日で今日はやれんとそうこいた
ここのかにとりにいったれば
ここではやれんとそうこいた
そうしてとおかにいったれば
とんでもないこというてくるなとそうこいた
才蔵なんぞはあんまりたまげて
つっつらつうとつんぬけたというたが
さあさこれから太夫さんの番だ

〈太夫〉ハァようしたようしたよした才蔵

十本の柱をば十らせつがじゅうぶん
子種をさずけたまいける
十一本や十二本
十二の薬師が十二カつきの悪魔を払い
十三本や十四本
三十六本千本あまりの柱をば
ちぎりしゃんと立て並べ

〈太夫才蔵〉
昔古人の建てたる家なれば
雨は降れども雨漏りゃせない
日は照れども日割れはせない
風は吹けどもお宝風
沖をとおるは大鯛に小鯛
酒の肴にお皿が千枚だ

にしんからりんかずのこかまくら
いいりのごまんの長者
上には鶴 下には亀
めでたいところのご万歳

〈才蔵〉別ver
長いもんで申そうか
短いもんで申そうか
どうせ申すなら長いもんで申しましょ
京都で三十三間堂
お江戸で三十三間堂
あわせて六十六間堂
こいつがべらぼうに長いな
まだも長いのはなんじゃいな
牛の小便 十八ちょう
朝から晩まで だらだらだーらりだーらりと
こいつがべらぼうに長いな
まだも長いのはなんじゃいな
年寄り衆の前では
大きな声では申されぬ
小さな声で申しましょ
八十ばかりの婆さんと
八十ばかりの爺さんが
三反夜着のそのなかで
朝から晩までしっくりむっくりしっくりと
こいつがべらぼうに長いね
まだも長いのはなんじゃいな
奈良の大仏さんの
背の高さが五丈と八尺八寸八分
お魔羅の長さが六尺六寸六分というたが
さあさこれから太夫さんの番だ

あぶくたった煮いたった
おろしごろなら食いごろだ
今年ゃ豊年だ
あねさのしんげえさくも豊年だ
かかさのしんげえさくも豊年だ
今年ゃ豊年だ
何がまた豊年だ
おわた人参牛蒡いんげん十六ささぎ
いもなんざ豊年だ いもなんざいいもんだ
親食うて子食うて
ずき食うて葉食うて
あとに残るのは
けっけらけんのけばかりだというたが
さあさこれから太夫さんの番だ

今年ゃ豊年だ
豊年だてば万作だ
兄の田が千がりで
かかの田が万がりで
二千がりの作で
かまの前の三助なんぞは
三日月なりの鎌もって
いっちゃあよせごわっぱ
ごわよせ三十ぱ
八海山から妙高山
富士の山のすっぺらぺんのてっぺんまで
さあさ積み上げたというたが
太夫さんの番だ

かいかい尽くしに申そうか
ないない尽くしに申そうか
どうせ申すならかいかい尽くしに申しましょ
大きな貝にはほうらの貝
小さい貝にはちぢみ貝
お前は旦那のお供かい
そばにあるのはお荷物かい
あんさん買うのは女郎買いかい
お金がなくては買われるかいとはいうたが
さあさこれから太夫さんの番だ


かいかい尽くしに申そうか
ぼうぼう尽くしに申そうか
とても申すなら かいかい尽くしに申しましょ
棟かい梁かい 船頭かい
船頭が持つのは櫂棒かい
山伏吹くのが法螺の貝
結ぶのむのは せえないかい
おめさんたまにはてんがいかい
ところでこのしょは兄弟かい
先に立った旦那かい
おあとにつくのがお供かい
街の兄ちゃん女郎買いかい
お金がなくては買われぬかい
××××鮑の貝ではないかいな
それでもちんこはデッカイかい
それでもちんこはデッカイかいというたが
さあさこれから太夫さんの番だ


越後で名物 面倒症
信州信濃の鬼ころし
酒蔵菊酒ほうれん草
おととの鮑が千年しよう
おかかの鮑が万年しよう
才蔵が脳にも失念症
才蔵が知ったじゃなけれども
向かいのお茶屋で聞いてきた
十七、八の姉ちゃんが帯まで解いて
こんなのでやってくれと(?)
でっけえまんこつけたというたが
さあさこれから太夫さんの番だ

才蔵嬶嬢さんだ
ちんちんが×××でいいもんだ
おやか間違うた
ちんちんが×××××××××
親の馬鹿めが腫れたと思て
三十五文の五香買って飲ました
ないばなおらば(?)
夕べ夜小便に出たしょの罰だよ
さあさこれから太夫さんの番だ

才蔵が嬶 十三だ
乳がちっくりゆいぼんだ
親が間違うたコラ 乳がちっくり結ぼうた
親の馬鹿めが腫れたと思うて
三十五文の ごこう買って飲ました
何が 治ろば
ゆうべ ヨシビに出たしょの罰だよ
さあさ これから 太夫さんの番だ

才蔵嬶もーてがのうて
×××××毎晩屋敷を貸したれば
くろいとちょうまんだしかけた
かみの方にも しもの方にも
とりあげ婆さんのおったらてーのてえもんだ
とりあげ婆さんのないときは
八束藁に腰かけて
モヤシ縄にふん掴まって
あっちー見ちゃ うんすら
こっちー見ちゃ うんすら
うんすらうんすらうんすらと
玉のような元気な子
キンキラキンとひり出した
旦那の目にも見ーてくれ
かかの目にも見ーてくれ
こんないいことせぇぜねえ
せーぜーあっては大変だ
才蔵なんぞはいいもんだ
あったかまんまにほおづけだ
てての椀にも十六杯
ははの椀にも十六杯
都合あわせて四八しは三十二杯まで食べた
才蔵が身上ぴっこした
おやおや才蔵なんぞはあんまりたまげて
へそが病めて眠らんねというたが
さあさこれから太夫さんの番だ

エーあっちへ通れば東海道
こっちへ通れば南海道
南海道には讃岐の国から
野暮くら坊主が三人いたりて
一人の坊主が経よんだ
一人の坊主が衣の袖で鼻かんだ
一人の坊主は仕事がねえ
西に向かって踏ん張らかって
小便ちょと垂れたれば
蜂にチンコ刺された
あいたったチンチンの皮ペロリと剥けた
お医者さんにとんでって
お医者さんに見したれば
お医者さんのいうことに
若ぇもんのこんだから
コリャおおかたヨコネのはじまりだ
さあさ大変だ
チンコの裏へ膏薬ベタベタベタベタはったれば
十日も廿日も小便づまりでこいつに困って
眠らんねぇというたが
さあさこれから太夫さんの番だ



いれて❤️