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好色開ヶ原合戦

頃はちんぽうしゞう始終したい(四十四代のもじり)、ひりつく疳瘡かんそう(性病による陰部の腫物や潰瘍。ここは天皇のもじり)の御宇ぎょう、さらに夜もねん(四年のもじり)、うづき(卯月=疼き)はじめつかたのことなりしが、開が原にはなさけ有馬之助好成すきなりをはじめとして、左右にひかへたる遊女には、淫の乱平・巾着しめ右衛門・上つき上開・かはらけ左衛門なんど、いづれも白湯具・緋湯具に身をかため、腰を左右に打振りて、曲取せんとぞ相待つたり。さてまた古疾こしつの国、鼻落ち峠のこなたには、雨の森の住人・膏薬播磨之助吠升ほへますは、六寸胴丸の大鎧に、膏薬打つたる兜をちゃくし、ひきき紙の上帯引締め、つぶじ毛のむまに打またがり、ゑぢかり股にて出立ちたり。それと見るより吸付くたこ之進、「ヤア、よき敵ぞござんなれ。我こそは開が原の身内にて、蛸と名を得し助平なり。細長まらの傷物は、我にはいさゝか食い足らねど、たゞいよ(只今の誤記)よりは白まらの、イザ雁首かりくびを給はらん」と大の字なりに突立つたり。播磨之助打笑ひ、「さらば覚への指二本、くじり殺してくれんず」と、猿猴手練の小手細工、上段下段とあへまはす。こゝぞ一世の瀬戸ぎはと、蛸之進も天井板、睨みつめてぞ食ひしばる。こなたも指の折れるまでと、大汗になつてこねまはす。蛸もせはしき息遣ひ、こゝと早める指の曲、「どうじゃ、ゑいか」の一ト声に、さすがの蛸も黒みより、白み吹出すばかりなり。「しすましたり」と白紙に二本の指を引つしごき、立上がつて呼ばはりけるは、「ヤア/\開が原に名を得たる吸付く蛸之進を、膏薬播磨之助が討取つたり」と、ぐはさ/\紙をもみたてしは、事すさまじく聞こへける。かゝる所へ巾着締右エ門、素肌武者にて馳せ来たり、「ヤアしほらしき播磨之(ママ)、指には爪の大毒有り。いで此の上は照れ付く(男根の異称)の、無二むにかうまくつて勝負あり、我が巾着の上開に一ト締め締めて成仏させん。早く/\」と呼ばはつたり。播磨之介立上がり、「ヤア小ざかしき奴ばらかな。傷は有る共、長まらの、穂先にかけて巾着の、底突抜いてくれんず」と、膏薬まくつてつつ立ちしは、竿竹まら共言いつべし。こなたも湯具を引つぱづし、「長命丸(男性用の性薬)や肥後ずいき(同じく性具)の、道具持つにも及ぶまじ。いざや組まん」とどつさりと、真仰向けにぞ広がつたり。「コハにつくき広言かな」と、其まゝ腹へ乗つかゝり、ぐつと突かんと思へ共、元(より)手負ひの其の上に数度すどたゝかいし事なれば、かの一チ物はぐにや/\、たゞ芋虫の如くなり。かくては果てじと下つらを、撫でゝみつ/\いかなこと、進みかねてぞあい見ゆる。「いゝ甲斐がひなし」と締右エ門、すぐさま上へ乗つかゝり、「いで此の上は茶臼攻め、入れて廻そか、苦しくば、降参するか」と言ひければ、播磨之介も茶臼には、しんぎ(神器か)のちんぽ弱ければ、「此の上へつては叶はじ」と、先づ此度このたびは降参する。

へき=女陰

《立田土瓶戯作》

いれて❤️