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古今集巻第十三 恋歌三 671番

題しらず

よみ人しらず

風ふけば波打つ岸の松なれやねにあらはれてなきぬべらなり

このうたは、ある人のいはく、柿本人麿がなり

題知らず
詠み人知らず
わたしというものは風が吹くと波打つ岸に生える松なのか、ただ黙って波で根が洗われる松と同じだ、恋の噂が流れても良い知らせを待つだけのわたしは音を上げて泣いてしまうだろう

風は噂、松も波も男の自分。松は待つ、根は音(噂)に掛けています。波は寄せては返すだけで岸の上にいる女性のところまでは届きません。
「べらなり」は平安初期に流行った表現で、おそらく「べし」「らし」「なり」を繋げたものと思います。そういうことであるだろう、ぐらいの意味です。
その「べらなり」を使っているのであれば、奈良時代の柿本人麻呂の歌ということはないように思います。ただ、万葉集に人麻呂は海岸で亡くなったと書かれていますので、この歌にはそういう伝承が関わっているのかもしれません。

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