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古今集巻第十六 哀傷歌 847番

深草のみかどの御時に、蔵人頭にてよるひるなれつかうまつりけるを、諒闇になりにければ、さらに世にもまじらずして、ひえの山にのぼりて、かしらおろしてけり。その又のとし、みな人御ぶくぬぎて、あるはかうぶりたまはりなど、よろこびけるをききてよめる

僧正遍昭

みな人は花の衣になりぬなりこけのたもとよかわきだにせよ

深草の帝の御時に、蔵人頭として夜昼仕事で仕えていたところ、諒闇になったので、これ以上は世間の交際もせずに、比叡山に登って、髪をおろして僧になった。その翌年、人々は喪服を脱いで、ある人は位階を賜るなどして、喜んでいるのを聞いて詠んだ歌
僧正遍昭
人々はみんな華やかな衣になったようだ、苔色の僧服の袂も、もう乾いてくれ

詞書に僧正遍昭が出家をした経緯が書かれています。
深草の帝は、仁明天皇のことです。諒闇は、天皇の父母がお隠れになった時に1年間、みんなが喪に服すことですが、ここでは仁明天皇の崩御のことのようです。詞書にあるようにこの当時は蔵人の頭(天皇の秘書)で、左近衛少将(禁中の警備)も兼ねて仁明天皇に仕えていました。仁明天皇は祖父が桓武天皇、父が嵯峨天皇で、遍昭も祖父は桓武天皇ですから、二人は従兄弟です。
苔の衣は、僧侶が修行で着る衣服です。

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