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Webデザイナーはインハウスか?アウトソースか?〜事業会社のマネージャーが経験してきたWebチームの組織変遷〜

事業会社でWebサイトを持っていると、果たしてWebデザイナーはインハウスで持つべきなのか、はたまたアウトソースするべきなのか迷うことがあると思います。

サイボウズは、以前だとインハウスのWebデザイナーが新規制作から、既存サイトのメンテナンスまでを全て担っておりましたが、現在はその両者ともアウトソースしております。

両方の運営を経験した中で見えてきたメリットやデメリットなどを紹介し、会社のどういったフェーズで使い分ければいいのかを自分なりに考えてみました。

◯インハウスWebデザイナーに頼んだ場合

メリット
・気軽に依頼できる
この一言に尽きると思います。デザイナーが常に社内に居ますので、いつでも気軽に相談できます。また、社歴が長い方ですと、自然と社内事情にも詳しくなってきますので、色々と忖度してくれたりもします。「よきようにお願いします」が通じる世界ですね。

・費用が読みやすい
インハウスだと、基本的に費用としてかかってくるのは人件費です。毎月おおよそ固定ですので、費用としては読みやすいですね。これがアウトソースだと、ボリュームなどによって大きく費用が変わってきます。また、見積とって値段交渉して、最後に請求書を発行してもらって…といった事務コストもかかってきますね。

■デメリット
・関係が慣れすぎて事故る
メリットである「気軽に依頼できる」の裏返しですね。依頼者とデザイナーの関係が親密になると、相手がどういうものを欲しているのかが何となく見えてきます。そして、あまりコミュニケーションも取らないまま制作が進み、気がつけば「◯◯だと思ってたのに…」と、想定とは違ったアウトプットになったり…。

・デザインテイストの固定化
常に同じデザイナーが制作しますので、どうしてもデザインテイストは固まり、バリエーションの種類が限られてくる傾向にあります。もちろんデザイナーのスキルや、依頼の仕方によってはテイストを変えることも可能だとは思いますが、限定的ではないかと思います。

・採用と育成
デザイナーが有期雇用であれ無期雇用であれ、退職のリスクは付き物です。インハウスだと退職者が発生した場合、引き継ぎの対応、新規採用段取り、OJTの準備など、多くの業務が発生します。そして長期的には、その方のキャリアプランや成長についても考えていく必要があります。

いかがでしょうか。これはあくまで当方が経験してきた中でのことですので、会社やマネージャーさんによっては他にもありそうです。メリットの部分がデメリットだったり、またその逆も然りだと思います。

◯いま流行りのAIに助言を求めてみたところ…

余談ではありますが、いま流行りのChatGPTに、「Webデザイナーはインハウスで持つべきですか、それともアウトソースすべきですか」と質問したら、検討すべきポイントが的確にまとめられて返事されました。もはや時代は判断材料をチャットから教えてもらえる時代なんですね。

Q:Webデザイナーはインハウスで持つべきか、それともアウトソースするべきか

A:Webデザイナーの雇用形態には、インハウス(社内)で直接雇用する方法と、アウトソース(外部委託)する方法があります。インハウスのWebデザイナーを雇用するメリットは、以下の点です。

チームとの密なコミュニケーション:社内にデザイナーがいることで、開発チームやマーケティングチームとのコラボレーションが容易になります。
タスクの優先順位を制御:社内のデザイナーは、プロジェクトの優先順位を直接管理し、リソースを効果的に配分することができます。
企業文化に適合:社内のデザイナーは、企業のブランドや文化に精通しており、それを反映させたデザインを提供することができます。

一方、アウトソースする場合のメリットは次のような点です。

コスト削減:アウトソーシングにより、雇用コストや設備費用などを削減できます。
柔軟性とスケーラビリティ:外部のデザインエージェンシーやフリーランサーに仕事を依頼することで、必要なときに必要なだけのデザイナーを利用することができます。
専門知識と経験の利用:外部の専門家によるデザインは、幅広い経験と知識を持っていることが多く、新しい視点やクリエイティブなアイデアを提供してくれます。

最適な選択は、企業のニーズや予算、プロジェクトの性質によって異なります。一部の企業は、戦略的なデザインの要素を社内で保有することを選択し、他の部分を外部に委託する方法を選ぶこともあります。また、一時的なプロジェクトや限られた予算の場合は、アウトソーシングが適しているかもしれません。

最終的な判断には、企業の要件や目標、リソースの可用性などを考慮し、内部リソースと外部リソースの利点と欠点を比較することが重要です。

ChatGPT

◯サイボウズの体勢はどう変わっていったか

さて、サイボウズでは現在、新規制作もメンテナンスもアウトソースしております。元々は完全インハウスだったのですが、20年以上も会社が続いてきた中で、その時々の状況に合わせて組織も変わってきました。その途中、新規に関してはアウトソース、納品後のメンテナンスはインハウスで、といったハイブリッドな体制だった時期もあります。しかし、この体制も長期的には色々な問題が発生しました。

・必要とするスキルの調整が困難
Webサイトのメンテナンス業務は、日常的には文言や画像の修正といった簡単な作業が中心です。しかし、何かしらトラブルが発生すると、求められるスキルレベルが一気に上がります。特にJavaScript周りのトラブルは困難で、例えば計測用のJSと画面操作用のJSでコンフリクトを起こした時は、発見するのに丸1日を費やしたこともありました。

・スキルの高い人がすぐに辞めてしまう
いざという時のために、スキルの高い方を採用していたこともありました。しかし、上記のようなトラブルは日常的に発生しているわけではありません。普段はテキストや画像の修正といった作業が中心となってきますので、スキルを持て余すことになります。結果的に「これは私の仕事では無い」という感じで退職された方がいました。ほんと仰る通りです。

・経験の浅い人でもすぐに辞めてしまう
「どっちにしろ辞めるがな」ってツッコまれそうですが(笑)、逆もまた然りなんですね。経験の浅い方でも、業務をコツコツと続けていくと、飲み込みの早い方はメキメキと成長していきます。そうすると、やはり次のステップへ進みたくなるのが人情というもの。しかし、サイボウズだとインハウスはメンテナンス業務が中心ですので、その次のキャリアを提示することができませんでした。結果、ご退職されるというケースもありました。

1年のうちにデザイナーの入退社が何度か続き、そのたびに受け入れの段取りをしておりましたので「どうしたものか」と困っていた折、トドメを刺す出来事が起きました。7年もの間、サイボウズWebサイトのメンテナンス業務を支えてくれた方が退職することになったのです。

完全に詰みです。これは当方が猛省すべき点なのですが、Webサイトのメンテナンス業務は、ほとんどその方にお任せしておりましたので、ノウハウが完全に属人化していました。これも仕方ないところはありまして、定期的に人の入れ替わりが発生していたチームですので、自然と社歴の長い方にノウハウが溜まってしまいます。

そんな状態で引き継ぎが始まるのですが、問題は「誰が引き継ぐのか?」です。順番でいくと次に社歴の長い方になりそうです。ところが、それに該当する方は、サイボウズに来てからわずか1年足らず。そしてご本人からも直接「重責すぎて引き継ぐのは無理です」というお話を頂きました。

もはや背水の陣で決断に迫られ、インハウスだったWebサイトのメンテナンス業務も、アウトソースへと移管します。その直後に得られたメリット・デメリットをご紹介します。

◯アウトソースWebデザイナーに頼んだ場合

■メリット
・マネジメントが不要になった
デザイナーの入退社時にまつわる業務や、日常的に発生していた時間およびリソースの管理など、多くの業務が削減されました。しかし、マネージャーとして大きかったのは、成長しているデザイナーに対して、スキルアップできる機会が提供できないジレンマから開放されたことでした。

■デメリット
・依頼者に求められる「説明力」
Webデザイナーをアウトソースしたことで、新たな課題が出てきました。インハウスだと、依頼者による作業への説明が少なくても、意図を汲み取って適切なアウトプットを出してくれましたが、その効果が無くなり、依頼者とデザイナーの間で齟齬が頻発しました。もちろんこれはある程度は想定していたことですので、Webチームにてフォローしました。依頼内容を確認し、いわゆる作業に着手できる説明になっているかどうかをチェック、説明など足りない部分は依頼者に情報の追加をお願いしたりしました。これはアウトソース化して数年が経った今でも実施しております。当たり前ではあるのですが、人によって説明スキルにバラツキがありますので、それをいかに標準化するか。目下の課題です。

◯結果、どっちが良かったんだろう?

さて、まとめに入るのですが、果たしてインハウスとアウトソース、どっちがよかったのだろうかと振り返ってみると、どっちが良かったというより、会社の状況に合わせて変化させていくことなんだろうな、と思いました。ありきたりな結論で申し訳ないです。

では、どういう状況が最適なのか、ざっくりではありますが考えてみました。

◯完全インハウス型
会社のスタートアップ時には最適かと思いました。パッと思いついたアイデアをすぐに伝えて形にしてもらい、速攻でローンチするスピード感はインハウスならではのメリットかと思います。アウトソースだと先方のリソースが必ずしもリアルタイムで空いてるわけでは無いので、まずはスケジューリングから始まり、どうしてもアウトプットまでに時間がかかりがちです。

◯ハイブリッド型
会社の規模が大きくなってくると、製品ラインナップが増えたり、公開すべき情報が増えたりと、Webサイトに対するリクエストが増えてきます。それに応えるべくWebデザイナーを増員するにしても、そう簡単には増やせません。現場が悲鳴を上げる前に、インハウスでやる業務とアウトソースする業務を切り分けた方が良さそうです。

◯完全アウトソース型
さらに企業規模が大きくなってくると、インハウスメンバーも、それなりの組織にする必要があります。チームリーダーを確立して作業の割り振りやリソースの管理などを委ねるのも手かと思いますが、いったん立ち止まって「自社のWebチームがコアとしている業務は何か?」を考えてみるのも良いかもしれません。サイボウズのWebチームは、当時は社内各部からWebサイト関連の相談を受けるコンサルティング業務と、サイトをメンテナンスする業務があったのですが、上述の通り主たるメンテナンスチームの重鎮がご退職という運びになりましたので、コンサルティング業務をコアに位置づけるよう舵を切りました。

以上です。いかがでしたでしょうか。事業会社のWebデザイナーはインハウスで持つのか、アウトソースするのか、個人的な経験談を書いてみました。


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