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太/細/厚/薄/


よく考えると珈琲というのは黒汁苦汁、イカれております。しかしそれでも世の中には珈琲を振る舞うことでcal、いやkcalを入手する者が存在します。また時に彼らは組織化し、一致団結して黒苦汁を売ります。組織化したのがドトールタリーズエクセルシオールサンマルクベローチェプロントコメダ星野上島スターバックスベックス猿田彦等々です。


ところで
恥ずかしながら私の家族の収入源はお釣りだけですので
一度も黒字になったことはなく、
そのため自分の財布は一度も太く厚くなったことはありません。
「ホストが履く黒スキニー」のように細く
「無添加を謳い1200円くらいするやたらと清潔なラーメンのスープ」のように薄く



このような状況でアイスコーヒーSすら高く感じた私は
レジで「アイスコーヒー 2滴」と執拗に注文してきた結果
現在ドトールタリーズエクセルシオールベローチェプロントコメダ星野上島スターバックスベックス猿田彦から出禁をくらっています。
一度日焼けを活用してカカオ豆に変装して入ってみたのですが、
バリスタの右フックにダウンし、
気づいた頃には焙煎されていました。



そんな私を唯一許してくれたのがサンマルクカフェです。
通い詰めた結果私も流石にコーヒーSを頼むようになり、今では主に吉祥寺と阿佐ヶ谷のサンマルクカフェを使っています。



阿佐ヶ谷のサンマルクは、駅から徒歩1分のところにあり、
どんな季節どんな曜日の、どんな天気の時に行っても繁盛しています。
商店街の中という土地柄か、後ろから数えた方が近い年齢の方が多いです。
店に入ると、上着は後ろから数えた方が近い年齢の方まみれになります。

ここのサンマルクには他のコーヒー店にはない緩さがあります。
コーヒーというのはこちらがサイズと温度感を指定するものですが、
ここでは「コーヒー」と言っただけでホットコーヒーSが手に入ります。
また、アイスコーヒーも薄いと思います。
頼むと、赤土みたいな色のアイスコーヒーが出てきます。
だんだん薄くなっている気もします。
数年後には、アイスコーヒーは水になってると思います。
【超長期間アハ体験】を生業とする
冷静沈着なおばさんが
「アハ! えっ これ アハ!!! ¡AHA!  
いや、コーヒー→水 だわよ!!!」
と言って初めて、水がコーヒーに戻ります。
僕はこれを、パリ五輪より楽しみにしています。


店員さんもずっと喋っています。
おしゃべりしながらレジを打ち、コーヒーを淹れます。
大抵3人の女性がやっているのですが、
一人が固定の女性で、後は大抵学生くらいの若い人です。
レジでの受け渡しは大体固定の女性がやってくれるのですが、
こないだ彼女が客の目を1秒たりとも見ていないことに気づきました。
そんな女性が固定されているのです。


一方吉祥寺のサンマルクは二つありますが、俺はよりでっかい北側の方を使います。
三階建てで、高校生などの若い人も多いです。
平日には必ず「コーデュロイおじいさん」がいます。
おしゃれで太くて太眉の黒コーデュロイを履いたおじいさんはサンマルクの2階にくるや否や
見知らぬ若い女性の隣に座り
1時間強のトークライブを開始します。
先日は女子高生が餌食でした。
トークライブを終えたお爺さんが「じゃあね」と言い席を立ち階段を降りるや否や
女子高生は10分弱の苦笑い愚痴ライブを開始します。
彼女達が苦笑いを発現したその瞬間、トークライブが糞だったことが確定します。
加害者と被害者が生まれます。
その瞬間を目撃するのが、すごく嫌です。

吉祥寺に店を構える古着屋の店主も、たまに二階にいます。
なんで俺が店主の顔を知っているかというと、彼は小youtuberだからです。
決して大youtuberではありません。
彼は柄本時生に似ています。
細い柄本時生です。
そのせいで彼が視界に入ると毎回、0.5秒くらいドキッとするのです。
柄本時生の太い本家の方が細くなってしまったらこれが50秒くらいに延びると思うと、マジでやってられねぇです。
迷惑な話です。
しかしよく考えてみると俺は別に柄本時生のファンではないのです。
佑はまあ、。
明も、いや明は、、いや、まあ、。
それなのにドキッとするということはつまり俺は「有名人」にドキッとしているということ
ここまで考えを巡らせて初めて、
俺が有名人を見ただけでテンションが上がってしまう愚人であることに気づくのです。
それを思い知る瞬間も、すごく嫌です。


ということで、この世のサンマルクカフェは全てイカれています。
しかし、洗練されたカフェだと気軽に大なり小なり、用を足すことができません(スタバにいる客の82%は排泄そのものを行わない)
なので、やっぱりサンマルクに通い詰めてしまうわけです。


将来、日頃使っているサンマルクカフェへの恩返しとして、まともなサンマルクカフェを作ろうと思います。
理性を保った大工が建設したビルを借り、開くか閉まるかだけのドアを取り付け、通信簿がオール4の店員を3人並べ、サイコパス診断オールセーフの客だけを招き、
そこで黒くて苦い、イカれた汁を売り捌き、kcalを得ようと思います。


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