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ペルーのシャーマンと 植物から知恵を得る儀式ディエタ 〜①〜


これを読んでいる貴方へ、
すでに貴方はアヤワスカに呼ばれているのかもしれない。

アヤワスカとはアマゾン北西部で伝統的に先住民が儀式をする際に用いる幻覚剤。
ペルーの国家文化遺産にもなっている
一般的にはカーピとチャクルーナという植物を組み合わせて煎じて作る茶。
Wikipedia & 幻覚剤は役に立つか マイケルポーラン著


"アヤワスカに呼ばれていたんだろうか"

私はジャングルの中で一人自問自答していた。


時を振り返ること2日前、
フランス経由で20時間以上の旅をしてから
ペルーに到着した私は、
5日間ほど首都リマで観光を楽しんだ後
アヤワスカを用いるシピボ族のシャーマンが行う植物の精霊から知恵を得る儀式
ディエタを行うべく
イキトス空港に到着した。

イキトス空港にて


リトリートセンターのファシリテーター
ブラスとメッセージをやりとりした通り
イキトス空港にカフェは一つだけ。
その場所で13時に待ち合わせをしていた。

大体10人くらいいるだろうと思い
まわりを見渡した、みんなその施設に行く人たちのようにも思えた。
大きなバックパックを背負ってる人たち。

ブラスから事前に、してはいけない注意事項や
必要なものをメールで送ってもらっていた。

薬、赤い肉、塩、砂糖、コーヒー、チョコレート、sex(マスタベーション含む)、toxicなSNSや映画は無論禁止。

施設に向かう途中はジャングルの中を20分ほど歩くのでバックパックで!ということだった。
私も言われた通り重いバックパックを背負っていた。


背の高い男性がやってきた、

"psychonauta fondationに行く人たち!"

彼の名はブラス。ポーランド人でその施設のファシリテーターの一人だ。

彼が名を呼ぶとそこにいたのは私を含め5人だけ。
これから10日間、彼らも共にアヤワスカで旅をするのかと思うと私一人じゃないと心強く思えた。

ブラスが用意したバンに乗り込むと
そこにブラスの奥さんジュリアと2歳くらいの女の子がいた。

"これから2時間かけてバンで移動してから
tuktukで30分、目的地付近からは20分の歩きになるよ!長いように感じるかもしれないがあっという間さ!"

とブラスは緊張する私たちに安心を与えてくれる。

バンに乗り込むと隣の席になった
NY住みでエクアドル出身のアメリカ人
エミリーと仲良くなった。

彼女のお姉さんは数週間前に
psychonauta foundationでディエタの儀式に参加して彼女に最高の体験だったとすすめてくれたらしい。

私の右斜め後ろにイスラエル出身のクールな女性、スタブ。
後ろにウクライナ系アメリカ人のマイク、
それからポーランド人のクリスがいた。


2時間のバンで移動してから
tuktukに乗り込む、スペイン語が堪能なエミリーと二人で乗った。


tuktukを楽しんだ後は
ジャングルの中をみんなで歩く。
荷物は10ソル払えば持ってくれる。
現地に貢献するなら払った方が良いと思い、もってもらうことにした。
蚊に刺されやすい私は一番蚊が心配だったが
アマゾンの蚊は日本にいる蚊よりも
全然弱く心配する必要は全くなかった。


そうこうしているうちに、
目的地に到着した。

"疲れたでしょ、ココナッツジュース用意したから飲んでね!"

ファシリテーターのナタリーが出迎えてくれた。

ここにある小屋に壁はない。
すべて下にある写真のような作りになっている。

アヤワスカを経験した人が描いたアートと亀の甲羅、少し前までここはセレモニー会場だったが今は集いの場になっている


手に取った竹のストローがピーピー音が鳴って恥ずかしかったので交換した、どうやら虫が食っていたようだった。

お昼を過ぎていたので
みんなお腹ぺこぺこでしょ?と
お昼ご飯が運ばれてくる。

ビーンズカレーにサラダ、白ごはん、カボチャカレー。どれもベジタリアン料理で美味しかった。

ご飯を食べた後、ブラスに質問する。
マイクが"普通のルーティンに戻るまで大変?"と尋ねていた。

ナタリーとブラスは目を合わせ
"戻るのは簡単だよ、同じパターンをずっと繰り返してきたんだから。
でも自分を変えたいなら別だね"と言う。

しばらく休んだ後、くじ引きで泊まる小屋の番号を引いた。私は3番だった。

ブラスが小屋まで案内してくれた。

ディエタは1人隔離された小屋で過ごさなければならない


"薄暗くなったらヘッドランプ付けてさっきの場所に集まってね、そしたら儀式の説明始めるから"と言う。


正直方向音痴な私は、
一回教えられただけのジャングルの道を覚えられるか不安だった。

有難いことに私の小屋は覚えやすい木があったりして薄暗くなったジャングルの中
命の綱であるヘッドランプ一つで歩いて、
最初に集まった小屋に戻ることができた。

陽が沈んでいく、蝋燭の火を灯す、
蚊取り線香をたく、

変わった鳥の鳴き声と虫達の大合唱
慣れ親しんだ生まれ故郷と同じような音。

平和な時が流れ本当に心地よかった。

会話をしながら5人集まるのを待つ、
どうやらエミリーとスタブは道に迷ったらしい。
笑いながらやってきた

"道忘れちゃったわよ!笑"

みんなで笑いあう、

外はすでに真っ暗になっていた。

ブラスが説明を始める、
"シピボ族のシャーマン(呪術医)は
僕たちをpassengerと呼ぶ、みんなヒーリングの旅をしているからね。
ゲストでも患者でもない、それがいいよね"と彼は言った。

そしてディエタ中は、もちろん携帯などの電化製品は禁止のためファシリテーターが管理する鍵付きの箱に預けた。

なるべくディエタ中は他の参加者と話してはいけないとも言われた。
自分と、そして精霊と向き合うためである。

またカウンセリングカードを事前に配るので
何か悩んだりしたら食事が小屋に運ばれる際に、
Serverに渡せばカウンセリングに来てくれると言う。

アヤワスカ儀式とディエタの違い

近年流行しているアヤワスカ儀式は西洋人が幻覚植物アヤワスカを用いるシピボ族を知り、アヤワスカに精神への効果を発見しアヤワスカだけを行うリトリートを組むようになった。

ディエタとはシャーマンがシャーマンになるための儀式であり、シャーマンによって方法は少し異なる場合があるものの、基本的にシピボ族で古くから伝わるものである。
それは植物の精霊から知恵を得る儀式であり、なるべく孤立した空間で植物と自分自身と向き合う。
アヤワスカを摂取することはもちろん、自分が向き合う植物も摂取することで植物の精霊とのディエタが始まる。
ディエタをする植物は精霊が選ぶため、人間が決めることはできない。
そして植物の精霊は夢を通して語ってくるので、夢を必ず重要視することが必要になってくる。
古来から植物の精霊によってシャーマンは呪術医としての治療法やイカロ(歌)を得ることができたのである。


一通り禁止事項や注意事項が終わり
契約書にサインを終えると

蝋燭が灯る中、天狗が持つような葉っぱを持ち
一人一人、名前とどんな意図でここに来たか、今の気分と明日の意気込みを発表した。

私は幸せを感じるけど同時に空っぽに感じて
私の中で何かが引っかかっているのを取り除きたいと言った。
今の気分はrelax, chill、そして明日は最善を尽くすと、
適当な宣言だったかもしれない。

5人とも各々、問題を抱えながらここに来たんだなと知ることができた。
クリスは持病を治したい、マイクは鬱病で悩んでるというような具合に。

ファシリテーターのナタリーは

この場所に来た人たちの中で
西洋医学で治せないと言われた病気が完治した人もいた。でもそれはディエタにコミットしたから。プロセスの間は辛く苦しい時もあるかもしれないけど必ず終わるから、そのプロセスを楽しめるようになってほしい。
最後は必ず得られるものがあるはずだから。

と私たちに温かい言葉をかけてくれた。


ミーティングを終え、暗闇の道を通って個人の小屋に帰る。

真っ暗になって出てくる出てくる、ゴキブリ達。笑
しかも見たことのないオレンジのゴキブリで
毒を持つのか分からなかったので
ひとまず蚊帳が付いているベッドに避難した。

半泣きでベッドに逃げたが夜になると
トイレに行きたくなった。

寒さとトイレ VS ゴキブリ

でもFace to fear 自分の恐れと向き合わないと思い、蚊帳から出て
暗闇の中ヘッドランプをつけ、トイレ用のバケツで用を足した。

バックからジャンパーを取り出し、ベッドに戻り眠りにつく。
その日は10日間の内で一番、夜が長く感じた。
人生で一番長く感じたかもしれない。

なぜなら壁がない網戸のようなネットの壁で
何かが外を飛んでいる
バタバタバタバタ、
でも音が通過して外なのか小屋の中に入ってきたのか分からないくらい近くで音がする。

真っ暗で何も見えない、音だけ鳥ではないような羽がバタつく音。
これ襲われることとかあるのかなとか
不安が頭によぎる。

その時もFace to fearという言葉が再度、頭によぎった。
手元にあったヘッドランプで勇気を振り絞り照らした。何も見えなかった。
それからほっとして眠ることができ、気づいたら夜明けになっていた。

早朝、昨日は最も長い夜だったと振り返りながら
2日目に初めて体験するアヤワスカセレモニーに緊張しながら心躍らせた。


パート2に続く



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