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連載小説「瑠璃よりも青く白金よりも眩いもの」第1話

昨年、お知らせした小説の連載をスタートします。

霧島の故郷、北海道を舞台にした作品です。

ー1998年、旭川から1974年の留萌へ。

あの日の私が交錯する。

カントオロワ・ヤクサクノ・アランケプ・シネプカ・イサム
(役目なしに天から降ろされたものなど、何一つ無い)

私が天に帰るとき、胸を張って役目を全うしたなどと、どの口が言えるだろうか。

※有料販売のため1話につき、100円です。よろしくお願いいたします。

第1話  「8月の鎮魂歌」


従兄の訃報を受け取ったのは、庭のタチアオイが丁度てっぺんまで花を咲かせた頃だった。

「夏の花が好きな女は夏に死ぬ」

そんな台詞を残したのは太宰治だっただろうか。

タチアオイの天辺、最後の一輪が咲けば、北国の夏は峠を越える。

夫の家を飛び出したときも、薄桃の花が連なり揺れていた。

嫌いな花だ。

家人には命あるものを始末してくれともいえず、こうして今日も私が世話をしている。

庭から戻ると、圭祐が珈琲豆を陪煎していた。

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1,436字

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