硝子の箱 ⑦

幼稚園年長さんの頃から受験塾にいくことになった。来年から入る小学校を公立ではなく、バスで通う国立大学附属小学校に入れたい母親の思惑でそうなったようだ。
本を読むことも、字をかくことも計算することも、どちらかといえばたぶん好きだ。でも受験塾は、同い年のこども達がいて大人の目がある。自分より早くできたり、上手にできた子がいてその子が褒められたりすると、すごくイラっとしていた。そう、きっと私は性格が悪い。

間違いさがしのような問題とか、この球根はどんな花が咲きますか、とか買い物している絵を順番に並び替えるとか…そんなことが問題になっていたけどこんなに大人になっても問題を覚えているのだから不思議だ。小さいこどもの脳のどこかに釘をさしたみたいに。

その後無事私は附属小学校に合格した。性格が悪いのは関係ないみたいだ。それでもみんなが喜んででくれたから、よかったみたいと喜んだけど、ほんとによかったことなのか漠然とした不安もあった。路線バスにのってひとりで小学校にいくんだー。知らない街、知らないひと、知らない世界がそこにあって私はそこからスタートするんだー。

附属小学校のマークの入った赤いランドセル、紺色の制服。小学校に入ったら友達とかできるのかな。



いつだってどこかに進むべき道がつながっているはずだ。立ち止まることも後戻りすることも、進んでみることも試してみれば、自然と道が開けてくる。迷いもなく好きな道を突き進む子もいれば、周りの様子をうかがいながら考えぬいて歩んでいく子もいる。問題は何をめざして歩んでいくのかが分からないことだ。…私は何をめざして歩むのだろう。

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