ウマ娘の精神分析 第15回  マチカネフクキタル -シラオキ様のお告げを信じる占いウマ娘-


 
 
●実在馬
 
サラブレット オス 栗毛
 
1994年5月22日 - 2020年7月31日
 
北海道浦河町で生まれました
 
父クリスタルグリッターズはアメリカでそこそこの活躍をした後フランスで種馬となり、更に日本に輸入され、数々の好成績を上げる子供を作りました。
 
注目すべきは、母アテナトウショウが、子孫に非常に多くの優秀な馬を生んだ、シラオキという母馬の血をひいていたことです。シラオキの子孫には、スペシャルウイーク(第1章)やウォッカもいます。
 
マチカネフクキタルの兄にあたる馬には、将来を非常に期待された馬がいましたが、早くに亡くなってしまいました。
 
マチカネフクキタルという名前は、公募で選ばれたものです。同じ厩舎の同期には、血のつながりはないものの、マチカネワラウカドという馬もいました。
 
3歳になって、日本ダービーの前哨戦で、サイレンススズカ(第2章)に続く2着となります。
 
4歳となった菊花賞の前哨戦のGIIで、サイレンススズカを差し切り優勝。菊花賞も制します。
 
それ以降は、蹄(ひづめ)の病気に悩まされ、2着2回など、上位入賞することはありましたが、ついに優勝することはできませんでした。
 
通算成績:22戦6勝 2着4回 3着1回
 
騎手は、上村洋行、柴田善臣、武豊、南井克巳、佐藤哲三など。
 
 
●ゲーム・アニメの声:新田ひより
 
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茶色の短髪、目が金色に輝き、耳に小さなだるまさんをつけています。
 
勝負服は基本セーラー服調ですが、腕に数珠、腰に絵馬をぶら下げ、背中に大きなまねき猫の形をしたリュック(にゃーさん)を背負って走ります。
 
神社の生まれ。姉は優秀だったようですが死んでしまいました。その姉と比べられてしまうのを気にして、ひけ目を感じていました。
 
子供の頃、かけっこが遅かったのですが、夢の中に「シラオキさま」が現れ「走りなさい、さすれば道は開かれる」とのお告げを受けます。すると一等賞になれました。
 
それ以来、シラオキさまの夢の中でのお告げを信じ、さまざまな占いに凝りはじめ、開運グッズを集めるようになります。
 
方角や色やラッキーナンバーなど、縁起にひたすらこだわり、日々の生活の指針としています。
 
ウマ娘の様々な物語の中では、「シラオキさまのお告げを受けた」とふれ回るバイプレーヤー(脇役)として大活躍しています。
 
開運グッズはトレセン学園の相部屋に、山のように貯まっています。それらは既製品を購入したものもありますが、実は子供の頃から自分に開運をもたらした小物なども多く、自分の足の代わりに「依代(よりしろ)」なって三輪車に踏まれてくれた人形や、プッチンブリンの容器すら含まれています。彼女はそれを全然「断捨離」できないでいます。
 
このようにして、他の人からすれば価値がないものを、赤ん坊の頃からの親との間の大事な記憶の絆としたり、心の支えとして、手放せないでいることは結構多いのですが、こうした品を、精神分析家のウィニコットは、「移行対象」と呼びます。
 
トレーナーは、その日の朝にシラオキさまのお告げを受けた運命の人として、神社で出くわした途端に、あっさりと選ばれてしまうのです。
 
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彼女において特徴的なのは、縁起をかついで自分の運勢にはこだわり抜き、他のウマ娘の占いの求めに応じたりはしますが、占いの結果を、自分の方から他のウマ娘に過剰に押し付けすぎないことです。
 
占いや開運グッズに凝り出したり、オカルトに関心を持つようになった人は、得てしてそれを家族や他人にも勧誘し、押し付けようとします。中にはマルチ商法に巻き込まれているケースもあるわけです。
 
こうしたマルチ商法に引っかかった場合には、科学的根拠のない商品を、時として深刻な身体の病気に関わることまで盲信して使ってしまい、人にも勧めてしまう場合もあることは大きな問題です。
 
縁起をかつぐこと、開運グッズに凝ることを、自分の運ばかりを信じ、努力をしないと批判する向きもあるでしょう。しかし、そもそも努力しさえすれば自分の人生が開けるという信念にとりつかれているのもどうかと思います。それもまた、ひとつの「宗教」に過ぎないという見方もできるかと思います。
 
自分の人生の現状は、さまざまの運やめぐり合わせなど、自分ではコントロールできないものによって成り立っているという側面も、確かにあると思います。
 
もとより、様々な社会的・家族的な問題を、運のせいにしてしまうというのは問題もあるかと思いますが、そうしたことを考慮に入れても、人生には、努力や才能や財力だけでは決定づけられない要素があることを否定できないという人は少なくないと思います。
 
現代では、占いの結果や縁起物の購入などによって、実際の自分の運命が予め決められているとか、変えることができるとは思えない人も多いでしょうが、いい運勢と出たことによって元気を出す人もあるでしょうし、悪い運勢が出れば、そのぶん気をつけてものごとを行なう人もいるでしょう。
 
多くの人は、そのような心持ちでおみくじなどを理解しているでしょうし、良心的な、害のない占い師は、そうした勘所をわきまえているものだと思います。
 
年中行事で厄を払うために特別な品を買ったり、捧げたり、行事に参加することは、たまったストレスを浄化し、心機一転する効果もあるでしょう。
 
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ただ、敢えて言いたいのは、運勢や縁起ものにこだわる人の中には、人とのつながりを感じられない、孤独な人も結構含まれているのではないかということです。
 
こういう人は「運命の人」と出会ったと感じると、その人のことを盲信しようとし、仮に様々な疑念を感じたり、ひどいことを言われたり、強制されたりしても、押し殺して屈従してしまう場合もあるのではないかと思います。
 
DVや、金の無心を繰り返しされる場合が典型でしょう。完全に洗脳状態にはまりこんでしまうのですね。何をされても、自分が悪いのだと思いこんでしまうようになります。相手が謝ってきたら、それですぐ許してしまう。でもしばらく経てば、同じことの繰り返しになるわけです。
 
相手に対して感じた違和感は、それが言葉でうまく説明できないものであったとしても大事にし、その相手に直接問いただすことはできなくても、だれか信頼できそうな人にまずはうち明けてみるだけでも大事かもしれません。
 
時には、そうした問題に詳しい弁護士などを含む専門家に相談するほうがいいケースもあるでしょう。
 
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現実世界での深刻なケースにまで話題は飛躍してしまいましたが、ウマ娘のストーリーの中でのマチカネフクキタルの人との出会いは、たいへん幸せなものであることは強調しておきましょう。
 
キャラクターストーリーの第7話を開放できるところまで、ゲームを楽しんでください。素敵なオチが待っています。
 

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