乾燥地帯(1)

男の女の駆け引きが行われる街の物語。

きらびやかなネオンが輝く街の中のなかでは、男と女の交渉が行われている。
有名企業が連なるビジネス街、大阪・堂島。そこに隣接している繁華街、北新地。そこに集まる人々はごく僅かの種類の人間に限られている。まず、若い男のすがたはほとんど見当たらない。スーツに身をまとった四十五十を過ぎ、厳しい顔をほころばせた男たちがほとんどである。
空に闇がかかる夕暮れどきには光沢を放つドレスに身を纏い、髪をまとめ上げ美しさに隙のない女たちが携帯電話を片手に足早に歩いている。
彼女たちは毎日美容室で髪型の美を追求する専門家たちの手を借り、彼らの顧客の女としての美を完成させる。化粧はやや落ちた照明でも映えるように濃く、他の女たちに埋もれないように試行錯誤を重ねる。彼女たちの美は一点の隙も無い。仕事がはじまるまでの間、かのじょたちは自分の中から最大限に女を引き出し、女を完成させる。首筋、細く滑らかな指先、そして足の先まで。

(つづく)

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