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依存的な人は自営業に向いていない…と思う

前から言っているように、私は仕事を辞めてから約20年ぶり、50歳でWebライターの仕事を始めた。

これまではあまりそのことについて周囲に話してこなかったが、最近ようやく周囲にもカミングアウトするようになった。すると、特にパート主婦の人が「そんないい仕事があるの?ぜひ紹介してよ!」と、私にその仕事への足掛かりをつけてほしいようなことを言うのだ。

どうやら、前職からかなりブランクが長い私がやっているのだから、自分ならもっと簡単に稼げるに違いないと思っているようだ。

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それについて特に否定するつもりもないが、とりあえず「最初の1年間は月1万円かせぐのに苦労したよ。稼げるようになるまでは少し我慢が必要かも」という事実だけは伝えるようにしている。私がこの仕事を始めるきっかけとなったクラウドソーシングを紹介して、あまりの低単価で逆恨みされるのは嫌だからだ。

すると「え?」という顔をして押し黙り、今度は「今パート代を稼いでいるっていうのもうそでしょ?」とか、「自分より稼いでは困るから紹介したくないのね」という表情でこちらを見る人もいる。中には「ライターやってるならどんな記事を書いているの?見せてよ」と疑う人もいるので、記名記事を書いているメディアとペンネームを伝えるようにしている。

でも、そういうやり取りをしていると、「自分で仕事を探す能動性もなく、安易に人に仕事を紹介してもらおうと思っている時点で、あなたに自営業は務まらない」という言葉がのどまで出かかる。それを抑えるのに毎回すごく苦労してしまうのは困ったものだ。(笑)

また、大変恐縮だが、同業者でも稼ぐノウハウや、仕事を取るための方法を人から教わろうとしている時点で、「あなたにはお勤めの仕事のほうが向いているんじゃない?」と言いたくなる。

自営業はたとえ赤字でも一国一城の主で事業の責任者だ。そのような責任ある仕事を始めるにあたり、人に仕事を紹介しろと言ったり、事業を軌道に乗せることを人に依存している時点で自営業としての心構えがなっていないと思うのだ。

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ライターをやる前に私が一番長くやっていた「仕事」は子育てだが、子育ては自営業によく似ていると思う。

人は、子育てについて何の予備知識がなくても、本人や配偶者が子どもを産んだ時点で親になる。生まれた当初は、自分で命をつなぐための飲食すらできない子どもを死なせないように育て、親がいなくても自力で生きられる程度の社会性や教養までつけなければならない。

そのためには、親が人に依存しすぎず、とりあえず我が子に合った子育てのやり方を見つける必要がある。そして、自らの手で子どもがまともに育つ方向性に道筋をつけてやらねばならないのだ。

もちろん、困ったときは誰かに助けを求めたほうがいいが、原則として自分の子どもは自立まで責任をもって育てるのが親の役目だ。少なくとも私自身はそうやって子育てしてきた。

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自営業における事業も子どもと同じだ。海のものとも山のものともつかない生まれたての事業を育てるのは、事業主自身の仕事。それを人に依存するのはいかがなものだろうか。

もちろん、事業を健全な形で軌道に乗せるには、周囲の様々なサポートを受けたほうがうまくいく。しかし、基本的には自分の責任の下でどのような事業にするかを決め、どんなスタイルで事業を育てて大きくしていくかを自らの手で探っていくのが、その事業の親である事業主の役目だと思う。

そんな大事なことを人任せにし、自分でその事業に責任を持てない人は、育児でいえば育児放棄、つまりネグレクトだ。自分の子どもである事業をしっかり育てたいなら、随時周囲のサポートを受けるにせよ、その事業の成長を自分の目で確かめ、自分の手で丁寧に育てていく必要がある。それができない人は自営業をやらないほうがいいと思う。

当然、事業主として自分で仕事を見つけられないような人はそのスタート時点にも立っていない。これだけネットで仕事があふれているのに、自分で仕事に応募できなくてどうする?それができない時点で自営業という選択肢はないと思ったほうがいい。

人によい仕事を紹介してもらいたいなら、まずは自分が仕事をもらえるだけの実績を積むしかない。私自身、自分でクラウドソーシングのプロジェクトや編プロなどの募集に応募し、単価の仕事で実績を積んだからこそ仕事を紹介してもらえるようになったのだ。たぶん、私と同じくらいこの仕事を続けている同業者も、みんな同じようにして今があるはずだ。

もちろん、自分で事業を育てようと前向きに考える能動的な人に対しては、変なクライアントに騙されないための知恵を伝え、困ったときの相談などにも喜んで応じたい。私も先輩ライターさんにずいぶん助けられているが、それと同じようにできればうれしい。

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私は長く家庭の主婦や母親として仕事から離れており、つい最近仕事の場に戻ってきたばかりだ。だからここまで偉そうに自営業の心得について書いてきたが、実は自分のその考えに多少自信がない。今回書いたことが間違っている場合は、どこがどう違うのか指摘していただければ幸いだ。極力素直にその意見を受け入れ、今後の糧にしたい。


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