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盛岡西廻りバイパスの謎(1)半世紀前の構想を探る

盛岡市と矢巾町を結ぶ国道4号のバイパス「盛岡南道路」が事業化された。そう遠くない将来、移転した岩手医科大学附属病院の近くから直接、盛岡市本宮地区に向かえるようになるという。

本宮にはイオンモール盛岡南をはじめとする郊外型商業施設が立ち並び、JR盛岡駅前に続く市道のほか、盛岡インターチェンジや雫石・秋田方向に繫がる国道が接続している。市内に住む一サラリーマンとしては、利便性の向上に繫がると好意的に受け止めた。

先般、盛岡南道路のルートについて、各種行政資料を基に拙文をまとめた。どこを通るルートなのか、現地の状況はどうなっているかを適当に確認し、既存の道路と未完成道路をうまく繋ぎ合わせて作る道路であると強引に結論付けた。所詮、素人が書く記事なんぞ、こんなもんである。

盛岡南道路の北端となる盛岡市永井。ここで既存の国道46号盛岡西バイパスに接続する。

ただ、資料を漁るうち、ある事に気付いた。盛岡南道路の事業化に向けた調査・検討が本格化したのは2018年のこと。ところが、構想自体は以前からあったようなのだ。資料を遡って行くと、遅くとも1974年には具体的なルートの構想が明らかになっている。また、必要性自体は1969年の時点で指摘されていた。東北新幹線開業はもちろん、東北自動車道の開通もなされていない、今から半世紀前の話である。

そしてそれは、南道路よりももっと巨大な構想だった。
盛岡に長くお住まいの方であればご存じかもしれない。私はビギナーであるため知らなかった。

勿体ぶっても仕方ない。
どうやら、矢巾町から滝沢市に至る「盛岡西廻りバイパス」という構想があるらしいのだ。

西バイパスではない。西廻りバイパスだ。
盛岡南道路も、盛岡西バイパスも、この構想の産物だったのである。

西廻り構想のあけぼの

1974(昭和49)年の正月、当時の滝沢村発行の「広報たきざわ」に、以下のような街路網計画図が掲載された。

『広報たきざわ 特集号』1974年1月20日付p.2(滝沢村発行)より街路網計画図(原案)を引用。

「西廻りバイパス」の文字がはっきりと見て取れる。

これは盛岡市、滝沢村、都南村、矢巾町の各市町村をエリアとする「盛岡広域都市計画区域」の都市計画道路の原案である。

漢字が続く言葉は難解だ。都市計画について、誤解を恐れずに説明すると「街が健全に栄えるように、土地の使い方や必要な道路などを決めた計画」のこと。上の広報によれば、盛岡近郊は1970年、県によって当時の4市町村の一部が都市計画のエリアに定められた。以降、土地利用などに関して順次定められ、いよいよ街づくりの上で重要な道路「都市計画道路」も決めていきましょう、との流れになったようだ。

上の広報の内容は「その原案ができました。説明会もするからみんな見てね」というのが趣旨である。同じ月、都南村や矢巾町の広報にも同様の記事が載っているが、滝沢が最も分かりやすかったので引用した。

※5/7追記:ただし、都南村や矢巾町の広報には西廻りバイパスの線が破線となっているか、記載自体がないため、都市計画道路の素案とは別であった可能性がある。第3回参照。

半世紀前に原型が存在

現在ある建物等を目印にしながら、当時の原案ルートを見てみる。

紫波町方向から来ると、矢巾町に入ってまもなく左にカーブする。現在の南部屋敷がある辺りの少し南側だろうか。そのまま線路の西側に出て、右カーブして真っ直ぐ北上。今のスターバックスコーヒーの手前で左に直角カーブし、飯岡十文字の辺りで北に進路を変える。東北自動車道に並走して前潟、鵜飼と北上し、最後は滝沢分レに至るルートだ。

多少の差異はあるものの、前潟以南は既成、または計画中のバイパスのルートと基本的な考え方は同じだ。矢巾で線路と交差し、本宮・向中野で直角に折れ、前潟に至る。約半世紀前から、この道路の構想があった訳だ。

現在も計画が無いのは前潟─分レ間だが、この区間を整備する計画がもしあったとするならば、現在の西バイパス(国道46号)は本来、国道4号として建設すべき道路だったようにも思える。

オイルショックに見舞われた年が終わり、新年とともにもたらされた壮大な構想。1月に明らかになった原案は、ちゃんと都市計画道路として決定されたのだろうか。ここは、3回目以降に触れる。

次回は少し時代が前後するが、西廻りバイパス構想に至るまでの前史(盛岡の4号線の歴史)を少しだけ紹介する。

第2回に続く

※以上は素人による考察です。出典の資料を基に記述し、必要な時は引用しておりますが、正確な情報についてはご自身で行政資料や報道をご確認ください。この記事の内容に関して、関係機関に問い合わせることは、汗水垂らして日々働いている皆さんの仕事を増やし、迷惑千万かと思いますのでお止めください。本当に。

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