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盛岡西廻りバイパスの謎(3)計画化には早過ぎた?

盛岡市周辺で進むバイパス事業の原型となった半世紀前の構想について調べるシリーズ。3回目は、西廻りバイパスの構想ルートのうち、都市計画道路として決定された区間と決定されなかった区間について取り上げる。

前回はこちら。


1回目の内容を再確認

記事の1回目で、盛岡広域都市計画区域の都市計画道路について、原案が構成市町村(盛岡市、滝沢村、都南村、矢巾町)の住民に示されたことを説明した。引用した1974年1月の広報たきざわの図では、西廻りバイパスのルートが太い線で書かれていた。

【再掲】西廻りバイパス概略図

都市計画道路が決定されると、その計画線上に一定規模以上の建物が建てられなくなる。都市計画法54条では、以下の建物のみ、行政から許可を得た上で建てても良いとされている。

三 当該建築物が次に掲げる要件に該当し、かつ、容易に移転し、又は除却することができるものであると認められること。

イ 階数が二以下で、かつ、地階を有しないこと。
ロ 主要構造部(建築基準法第二条第五号に定める主要構造部をいう。)が木造、鉄骨造、コンクリートブロツク造その他これらに類する構造であること。

都市計画法(昭和43年法律第100号)第54条より引用

住民への制約が生じる可能性もあることから、広報で広く説明し、説明会等もなされた訳である。

計画化せず構想止まり

説明が一通り終わった後、原案は計画になったのだろうか。
以下は、広報たきざわの1974年10月号に掲載された計画図である。

「広報たきざわ No.131」1974年10月5日付p.2(滝沢村発行)より引用

凡例の通り、点線は「構想路線」であり、都市計画道路として決定されないことを示している。

この年の正月にあれだけ太い線で示された西廻りバイパスは、ほとんどが点線である。構想である以上「ここに作れたらいいな」というレベルであって、建築制限などができる法的な担保はないのだ。

なぜここで計画決定に至らなかったのかは不明だ。ただ、正月の時点で、都南村の広報は計画化された区間以外は点線になっているし、矢巾町の広報には構想の点線も記載がない。滝沢村が若干勇み足をして、正月の広報で太い実線を使って書いた(計画路線と構想路線を同じ線で書いた)のかもしれない。

上記の広報発行後、11月26日の県都市計画審議会で(図の実線で書かれた)都市計画道路が正式決定されている。いずれにせよ西廻りバイパスは、まだ都市計画道路として決定するには早過ぎたようだ。

決定された区間もある

西廻りバイパスの構想線のうち、都市計画道路として決定された(いずれ作りますよという担保を得た)区間もある。

一つは、現在の盛岡友愛病院付近からスターバックスコーヒー前の区間。この区間は開運橋飯岡線(開運橋ー永井)として計画に取り入れられた。開運橋飯岡線は戦前の1938(昭和13)年に一部が既に都市計画決定されていたが、ルートが永井まで延長され、南端部が西廻りバイパスの構想線と重なる形になった。

開運橋飯岡線の南端。当初の西廻りバイパスの構想線と重なる区間は、ちょうど盛土になっている。

もう一つは土橋白沢線だ。矢巾町の紫波町境付近から国道4号現道を離れ、線路と立体交差した先の白沢地区に至る区間である。これは盛岡南道路の記事で少し触れたが、東北新幹線工事の高架橋を建設する上で立体交差を考慮しなければならず、先にこの区間だけ決めたものであろう。

計画決定時の岩手日報の記事には、新規決定される路線を説明する段落で以下のように書かれている。当初から西廻りバイパスありきで決定されたことが分かる。

西回りバイパスの南入り口になる道路として土橋白沢線を計画している。起点は矢巾町大字土橋で終点は同町大字白沢。延長は一・三キロ。幅員は四十三メートル。

岩手日報 朝刊 1974.11.27付 4面記事「高速化へ新街路造り/盛岡周辺/37路線を延長新設/県都市計画審が決定/36年ぶり大幅見直し」
より引用

なお土橋白沢線は、先日発表された盛岡南道路のルートからも分かるように、国道4号にはなれなかった。現在も、国道はおろか町道としての工事すらされていない。幻のルートとなったのである。これについては別の回で述べる。

この後どうなったのか

ほとんど都市計画に取り入れられなかった西廻りバイパスの構想ルートだが、「盛岡西バイパス」や「盛岡南道路」として、徐々に話が進んでいくことになる。

最初に建設されたのは西バイパスで、これが全線開通すると今度は南道路の話が出てきた。前潟以北の区間は現在、都市計画決定や計画段階評価(事業化する前の調査・検討)はなされていない。

次回以降、この西、南、北の3区間について順番に経過を見ていく。

第4回に続く。


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