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子どもの頃の怪我

子どもの頃の体育の授業でソフトボールをしてたんです。球を打ってバッターボックスから一塁に走る時、ボールが当たって。後頭部に。なんともなかったんだけど、大事をとって安静にしようと先生が言ってくれて少し離れたところで座って休んでたんです。そうしたら、次の打者が振り抜いた金属バットが顔面直撃。

痛くなかったんです。すごい血が出てたけど痛くなくて、ただ頭がクラクラするくらいで。学校近くの病院に歩いていきました。おんぶしようとする友人の申し出を「血がつくから」と断って。

病院に着いてからのことはよく覚えてないけれど、唇の裏側の鼻の下あたりを縫われるときに血がすごくて、血を吐き出したいから容器をくださいとお願いしたことを覚えています。私が血をペッペする度に縫合作業が止まるからか「(血を)飲んでもいいよ」と言われたのも覚えています。飲みたくないですよね。

唇の縫合前か後か覚えてないけど、駆けつけた母親に私が放った言葉は「テストは?」だった気がします。勉強がそこそこできた方だったので、前週にあったテストを受けたのか不安になったんですね。頭の中では数学の公式を思い出せるかセルフチェックしてました。変になってたんでしょうね。

諸々の処置が終わって、家に帰る頃には口元が腫れ上がってて。オラウータンみたいになってましたね。

後日談もあるんです。何日か学校を休んでいて、その間に同級生がお見舞いに来てくれました。バットを手から離してしまった子です。その子に悪気がないのはわかっているので、仕方ないと割り切っていたんですが、その子はバツが悪いですよね。部屋に上がってくれるものと思ったのですが、玄関先で暇つぶし用の漫画とケーキを渡してくれただけで帰って行きました。

ケーキは冷蔵庫に入れて、自室のベッドで漫画を読んで、眠くなったので寝ていました。10月終わり頃で寒かったので布団の中に潜り込んで簀巻きみたいな状態で寝るのが気持ちよかったんですよね。そうしていたら姉が学校から帰ってきました。元気な姉でして、階下で母と姉が話しているのがよく聞こえました。

「(姉)ケーキ!どうしたん!」「(母)お見舞いに来た子が…」「(姉)食べていいかな!」「(母)2階におるけん聞いてきよ」

姉が階段を駆け上がり、私の部屋に入ってくる音が聞こえましたが、半分寝ていて面倒だったのと寝ていると分かれば勝手に食べるだろうと思ったので、そのまま狸寝入りを決め込みました。しかし、姉は布団にくるまっている私を見つけられませんでした。トイレかどこかに行っていると思ったんでしょうね。

私を見つけられなかった姉は「おらんやん!」と言いながら、丸まった布団にかかと落としをしました。先ほども書きましたが、本当に元気な姉でして。まっさらな雪に足跡をつけるかのごとく、私が入っている布団にかかと落としをしました。私は布団の中から「ケーキ食べていいよ」と低い返事をしました。

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