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[コラム] 宅録・DTMにはまって気が付けば30年を振り返る

 このごろ、書いている物語の続きばかりを考えていて、頭がパンクしそうなので、脳みそのちょっと違う領域を使う文章でも書いてみようと思う。

 私は文章を書く他にも、音楽も作ったりしている。
 私の音楽の作り方は、楽器を演奏して作る方法ではなく、パソコンに楽譜等を打ち込んで作る、いわゆるDTM(デスクトップミュージック)である。

 初めて私がDTMに出会ったのは1991年ごろだ。
 とにかく自分が作りたいものが作れれば満足という状態でやってきたので、DTMに関して幅広い知識などはまるでないんだけど、30年という月日の中で、私がやっていたことをまとめてみたら、それなりに面白い記事になるのではないかな、どうかな。

 というわけで、かなり偏った記事になると思うのでこれからDTMをやりたい人などには全く参考にならないかもしれないけど、一つの物語として読んでもらえたら嬉しいデス。


PC-98で音楽作り

 冒頭で書いたが、私がDTMを始めたのは1991年ごろである。
 うちの父親がわりと新しいもの好きで、当時としてはめずらしく、家にはパソコンがあった。

 その名もPC-98という。

 当時のパソコンには、今のようなハードディスクの概念はなく、ソフト自体も作成したデータも全てフロッピーに入れていた。
 PC-98にはフロッピーディスクを入れるスロットが2つあって、上の段にプログラムが入ったフロッピー、下の段に作ったデータなどを保存するフロッピーを入れる。

 こんなパソコン。

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 最初に使っていたのは、ローランド社の「ミュージ郎」だったと記憶している。

 外付けの音源と、MIDIインターフェイス、DAWソフト(演奏データなどを作るソフト)がセットになったパッケージだ。
 これは弟のものだった。

 それを私がめちゃ使ってたw

 当時のパソコンには、ゲーム音楽のような音源は入っていたが、シンセサイザーの音みたいな美しい音色や、オーディオファイルを再生できるような性能はなかった。

 んだもんで、パソコンの音楽を作るときは、パソコンで楽譜の情報を作り、その信号をMIDIで外付けの音源に送って曲を奏でていたのだ。

 「音源」というのは、シンセサイザーの鍵盤がないものを想像してもらうといいかもしれない。
 見た目は、ただの四角い箱だ。

 この箱の中に、ピアノとかバイオリンとかサックスとかドラムとか、いろいろな楽器の音(音色)が入っていて、演奏データを送ると、そのとおり指定された楽器で演奏してくれるのだ。

 「ミュージ郎」に付属していた音源は、確か「CM-64」とかいうやつだったと思う。
 その音を今聞いたらおもちゃのキーボードみたいな音かもしれないけど、当時コンピューターが奏でる音と言ったら、ファミコン音楽に毛が生えたようなものだったので、それはそれは壮大に聞こえたのだ。

 そして、付属のDAWソフトも画期的だった。
 パソコンでマウスを使うことなんてあまりなかったような時代。
 「ミュージ郎」はマウスで譜面に音符を置いていく仕様を採用していた。

 パソコンで曲を作る時、何がすごかったかって、ピアノ、ベース、ドラムなど複数の楽器の楽譜を並列に打ち込んで、同時に音を出せることだった。

 楽譜の画面とは別に、ミキサーの画面もあって、ここで各トラックの音量とか左右のバランスを調整できた。

 ミキサーの画像をひと様のサイトから拝借してきた。
 こんな感じ。

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 見てのとおり、10トラックある。

 このソフトでは、トラックじゃなくてチャンネルという言い方をしてたかも。
 各チャンネルに音色を割り振り、同時に8音色出せたと記憶している。

 なぜかチャンネル1は使ってなかったな。使えなかったのかな?
 理由は忘れたw

 で、チャンネル10がドラム専用になっていて、楽譜がドラムスコア仕様になっていて、バスドラ、スネアなどのパターンをこのチャンネル10で作っていた。

 こちらも勝手に拝借した画像だけど、楽譜を打ち込んでいる画面。

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 左下がドラムスコアの画面。
 右下は音色を選んでいるところ。

 この楽譜を打ち込む画面なんだけど、おそらく今見たら驚愕の遅さだと思う。音符をいっこ載せると、画面が上からダダダダダと書き換わるのを待つ…という果てしない作業なのだ。。。

 それでも当時はこれしか知らんもんだから夢中で作っていた。

 これで実際に自分が作った曲が流れたときの感動たらなかった。
 そして私は以後30年間、パソコンで曲を作り続けることとなるのだ。

Windows 3.1 時代

 時代は進み、うちにもWindowsがやってきた。3.1だったな。

 使っているソフトは変わらないけど、確か音源を変えたと思う。調べた感じだと「SC-55」ってやつだったかな…。初代の音源より格段に音がよくなったと思う。

 それから、パソコンにハードディスクという概念が生まれ、ソフトはパソコンにインストールして使うものとなっていた。
 音源は相変わらず外付け。

 このくらいから歌を作るようになって、作った曲に合わせて歌も録音する、ということを始めた。

 と言っても、歌を録音するような機材はうちにはなかったので、マイク入力のできるラジカセみたいのを使って一発録りでやっていた。

 音源からの出力をラジカセに入れ、マイクもラジカセにつなぐ。それで、曲を再生しながら歌い、それをリアルタイムでカセットテープに録音するのだ。

 このころ実家暮らしだったが、防音設備などないので、昼間の人の少なそうな時間帯を狙って歌っていた。
 近所には丸聴こえだっただろう。

 その時の音のサンプルはこちら↓

 その後、カセットテープからMDに移行したんだけど、MDでどうやって歌を取ってたのか記憶がない…。
 MDプレイヤーの録音を押して、せーので始めてた記憶があるので、曲を再生しながら歌ってたんだと思うのだが。

 え? MDって何?って。
 知らない方はこちらをどうぞ。

JV-1010 と Singer Song Writer の革新

 やがて月日はながれ、私も社会人となり、家を出ることとなった。

 ここで大問題。
 当時、パソコンは一家に一台あるかないかの時代だ。自分のパソコンなんてものはない。
 しかも、「ミュージ郎」は弟のものだ。これも持ち出せない。

 私はバイトでためたお金でパソコンを買ってから独り立ちすることにした。曲が作れないと死んでしまう。冷蔵庫やテレビより、まずはパソコンだった。

 私はバイトでためた全財産を握りしめ、電機屋さんに行った。
 このころも、まだ音源は外付けの時代だ。

 私にはMIDIインターフェイスを繋げる入力端子がついてるパソコンが必要だった。
 USBとかない時代ね。

 その端子の名前は忘れてしまったが…全てのパソコンについてるものではなかった。

 電気屋さんでパソコンの裏を確認する不審な客、すなわち私を発見すると、店員さんが寄って来て言った。

「パソコンをお探しですか?」
「はい、〇〇端子が付いてるパソコンがいいのです。」

 私はかなり明確に用途を説明したつもりだった。
 でも当時はまだパソコンがやっと家庭に普及しはじめたころだ。

 たぶんだけど、店員さんもあまりパソコンに詳しくなかったのではないかと思う。
 その店員さんは、女の子が使うならこれがおススメです、的なことを言って、小さなノートパソコンみたいのを紹介してくれた。

 いや、そういうのじゃなくて…

 そんなこんなで私は晴れてマイコンピューターを手に入れた。
 モニターはブラウン管だったぞ!
 しかもWindows 95だぞ!!

 夢が膨らんだ。

 パソコンを手に入れたら、今度はDAWソフトと音源とである。

 DAWソフトは、もう決めていたので迷わずに買った。
 Singer Song Writerという株式会社インターネットが出しているソフトだ。

 「ミュージ郎」と概念的なところが似ているのでよいだろうとのことで、弟に教えてもらったのだ。

 当時のSinger Song Writerは、48トラック使えて、ドラム専用のトラックも任意で複数設定できたんだっけかな?

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 このソフトは、楽譜にCとかGとかのコード表記を入れられたり、歌詞を入れられたりして便利だった。
 しかもそれをA4サイズで楽譜としてプリントアウトできたりもする。

 続いて音源。

 音源は、ローランドのものがいいなと思って楽器屋へ行った。
 ローランドと言えば電子ピアノというイメージがあるくらいで、私はローランドのピアノの音が好きだったんだ。

 で、楽器屋に行って、「音源」を視聴したいと言ったところ、またもや話の通じない店員に出くわした。
 いきなり展示されているキーボードをジャラジャラ~んと弾いて、これなんかすごいですよ~、みたいに勧められた。

 いや、そうじゃなくて…鍵盤はいらないの…。

 困っていたら、奥からもっと詳しい店員さんが出てきて、私を外付け音源のコーナーへと連れて行ってくれた。
 それで、私は「JV-1010」という音源を選んだ。

 今でも、あの音使いたいなーと思うことがあるくらい、すばらしい音源だったんだ JV-1010。
 音色も1,000近くあったんじゃないかな?

 こうして私は、無事、音楽を続ける環境を整えて、独り暮らしを始めた。

 で、これで曲を作り放題!歌い放題!のつもりだったんだけど、ボロアパートだったので、隣に声が筒抜け。歌はコソコソ声で録る羽目になった。

 Singer Song Writerは、前に使っていたミュージ郎からものすごく進化して、なんと、パソコンにマイクを指して、歌を録音できる仕組みがついていた。
 これが何を意味するかというと、もうリアルタイムで一発録りしなくてよいのだ!
 しかも重ね録りも可能だ!!

 それから、リバーブやディレイなど、いくつかのエフェクトもついていた。

 この仕組みのおかげで、コソコソ声ではあるが、私の歌入りの曲作りは飛躍的に進歩した。

 今でも、この時録音した音源がいくつか残っている。

それがこちら↓

 歌入りの曲をデータにして、CDに焼いたりしてたんだけど、どうやってたのかまたもや記憶ない。。。

 ミキサー(実物の)を持っていたと思うので、音源からの出力と、パソコンからの歌の音声をミックスして出していたのは確かなのだが、それをどうやってデータにしてたんだろう???

 どっかの時点で、パソコンにライン入力できるアダプターみたいのを使ってはいたんだけど、それはUSB接続だったので、もっと後だったように思う。

 …方法は置いておいて、、、この時期はとにかく四六時中、曲を作っていた。
 パソコンを酷使していたんだ。

 そしてその日は突然やって来た。

 打ち込みが完成した曲の歌を録っていた時のこと。
 ボンッという音がして画面が真っ黒になったかと思うと、パソコンがうんともすんとも言わなくなったのだ…!!!

ぎゃ!!!

 バックアップ…とってなかった…。
 私は当時、パソコンがこんな風に吹っ飛ぶということを想定していなかった。
 10年くらいの月日が一瞬で無に帰った瞬間だった。

 それからしばらく私は情緒がおかしくなり、夜の街を徘徊したり、友達と遊んでいても急に泣き出したり、ひどいもんだった。
 パソコンのない家に帰りたくなくて、人の家に入り浸ったりしていた。

 とにかくお金をためてパソコン買わないと…。

 私はがんばって人生で二台目のパソコンを買い、白紙になってしまった私のレパートリーをまたイチから増やしていったのだった。
 そして時代もちょうど、21世紀へと突入していく。

MTR

 パソコンボンッ事件の前後あたりから、自宅ではパソコンに直接歌を入れていたが、バンドの方の録音ではMTRという機材を使っていた。
 これは多重録音ができる機械で、ピアノの音を録音したら、次は別のトラックに歌を録音して…ということができるのだ。
 録音はトラックごとにやり直しもできるし、途中から録音とかもできる。

 最初はたぶんテープのやつを使っていた。
 テープのは、何度も取り直していると、ノビノビになってくる。

 で、次に使っていたのが、MDのMTRだ。YAMAHAのMD-8だったと思う。

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 そして、ハードディスクのMTRが最終形態だった。
 これを使って曲をミキシングする時は、パソコンで打ち込んだ曲の1トラックずつ録音して、パソコン上ではなくMTR上でバランスを作る。
 各トラックのスライダーの動きなどを保存することもできて、録音した曲を流すと、スライダーが自動でカシャとか動いてかっこよかった。

 このMTRは完成した曲をそのままCDに焼くこともできた。

 Singer Song Writer、JV-1010、MTRの組み合わせは、結構長く採用してたと思う。

 一時期、ライブで音を出すのにもMTRを使っていた時があって、アホみたいに大量の機材を抱えて、バイク二尻でライブハウスに向かったりしていた。

バーチャル音源の時代

 2000年代に入ると、パソコンの性能が飛躍的に進歩し、全てがパソコン内で完結する時代へと移行していった。
 我が家にもその波が押し寄せて来て、ついに私はSinger Song Writerと JV-1010 を卒業することとなった。

 世の主流は、デジタル音源が内臓されてるソフトになっていた。

 有名なところでは、「Cubase」とか「Logic」などがある。

 これらのソフトは、今までリアルな機材をそろえてやっていたことを、全てパソコンの中だけで完結できるものなのだ。
 一つのソフトの中に、音源が何種類もあり、サンプラーとかドラムマシーンとか、各種エフェクターも入っている。

 外付けの音源の時と大幅に違うのは、作った曲をそのままオーディオに書き出せるところだ。
 トラックの録音はもう必要ない!

 さらに、複数のDAWソフトを連携して、ひとつのソフトで他のソフトの音色を奏でたりとかもできる。

 そんな中で私が選んだソフトは、「Reason」だった。
 2005年くらいだったかな。

 選んだ理由は、単純に操作画面が好みだったんだ…。

 こちらが、「Reason」の最大の特徴であるラック型のインターフェース。

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 たくさんの機材を並べて、摘みなどを操作し、実際に使っているような感覚で設定をするんだ。

 そして、ウケるのがこの裏側。

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 適当に作ってると配線がぐちゃぐちゃになるという、無駄なリアルさw

 これだけでも「Reason」好き好き大好きなのだが、さらに、気に入ってるところは、音色である。
 シンセの音がとても好き。

 他のソフトを触ったことがないので、比較はできないんだけど、それでもわかるほど、個性的な音色の数々なんだ。
 作っている曲の雰囲気によっては、「Reason」だと合わないという人もいるかもしれないけど、私にはフィットした。

曲のサンプルはこちら↓

 で、後から知ったんだけど、「Reason」を使っている人はまあまあレアのようだ。
 「Reason」を使っているというに出会うと、なんだか妙な親近感がわいてしまう。

 ちなみに、こちらが、演奏データを打ち込む(シーケンサー)画面。

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 今のソフトは、この棒みたいなので音程と長さを作るのが主流になっている。
 ずっと楽譜で打ち込んで来たので、この形式はやりにくいんだけど、楽譜がわからなくても作れるという利点がある。
 100年後の楽譜と言えばこっちになってたりして。

PRO TOOLS

 かつて、MTRでポチポチとボタンを押しながらやっていたレコーディング作業も、今では全てパソコンの中で完結させてしまうことが多い。

 「Reason」でもボーカルを録って、切ったり貼ったりして曲の中に埋め込むことも可能なのだけど、その機能にはあまり特化していないので、ちゃんとレコーディングをする時は「PRO TOOLS」というソフトを使ったりもする。

 私の得意分野は「Reason」などで曲のデータを打ち込むところで、録音やミキシングには疎いので、あまり詳しく説明できないけども、生楽器の音を重ねたり、歌を録ったり、打ち込み以外の方法で曲を作る場合は、圧倒的に「PRO TOOLS」みたいなオーディオ編集ソフトがやりやすいそうな。

 と言っても、最近はどのソフトも進化をしてるので、「PRO TOOLS」を使わないというケースも増えてるみたい。

オーディオ・インターフェース

 さて、これで曲を作って、ただ聞く分にはこのままでよいのだが、パソコンに入ってる曲をライブとかで流す場合には、オーディオ・インターフェースなる機材が必要になる。

 パソコンから音声を出力する場合には、デジタルからアナログ音声に変換されて出てくるのだが、パソコンに内臓されているものだと音質がよろしくないので、音質のよいオーディオ・インターフェースを使って出力させるのだ。

 このシステムを導入する前は、音源をCDに焼いて、CDJでライブしたりもしてた。
 荷物が半端なく多くて、やがてパソコン1台で済むようにしていったのだった。

おしまい

 ひとまず、私の30年の振り返りはこれでおしまい。
 記憶違いとか抜けとかすごいあるかも。

 今の時代は、スマホでも気軽に曲が作れるし、歌を録ったりもできる。なんならボカロが歌ってくれる。曲を作ったらヒョイっとアップして世界中に配信だって簡単だ。

 楽器が弾けなくたって、歌えなくたって、イメージした曲をすぐに形にできるこの時代は天国みたいだよ。

 みんなもどんどん自分の曲を作ってみよう~!

 DTMはとにかく楽しいので、私はずっと続けると思うよ。


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