[雑学] 鬼太郎をめぐる旅 - 鬼太郎からガンダーラへ
前に雑学系のブログを書いてたのですが、それの記事をnoteのも移植していきたいと思います。
情報が古いところはなおしたりしつつ。
これは鬼太郎の元ネタを辿って行ったお話です。
鬼太郎の映画が公開されて、目玉おやじが実はイケメン…ということでとある界隈は盛り上がっていましたね。
え、知らない?
私もまだ映画みてないのですが。
◎鬼太郎の誕生
鬼太郎の誕生のお話、知ってますか?
Wikiによるとこうあります。
鬼太郎のルーツについて、貸本時代くらいまでしか知らなかったので、その前に紙芝居があったとは知りませんでした。
思いのほか歴史が古そうなので興味を持って調べてみました。
それがそれがこんなに果てしない旅になるとは…。
◎紙芝居 『墓場奇太郎』
Wikiにあった伊藤正美 原作の『墓場奇太郎』のストーリーが気になったので調べて見た。
わお。
子供に見せるにはグロすぎないかい。
でも昔の日本ってこういう感じよね。
今でも子供向けのグロい話あるけど、これほどじゃないな…。
脚本が伊藤正美氏で、絵は辰巳恵洋(ケイ・タジミ)という人だったそうで検索するとこんな絵が出てきた。
◎怪談 『子育て幽霊』
さらに、この紙芝居 『墓場奇太郎』は、日本に広く伝わっていた怪談『子育て幽霊』が元になっているとのことだった。
このお話は、『飴を買う幽霊』 として、落語にもなってる有名なものなのでどこかで聞いたことがある人も多いと思う。
確かに、この物語は『墓場奇太郎』の始まりを彷彿とさせるね。
これの亜種みたいなちょっと設定の違う話もいっぱいあるよね。
この系統の物語について調べてみると、だいぶ古くから日本に広まっていたらしいことがわかった。
京都にある「みなとや」という飴屋には、この飴を買う幽霊の言い伝えが残っていて、「幽霊子育飴」 というのを売ってるそうで。
なんだかこのお店の言い伝えは具体的で、幽霊が飴を買いに来てた年代までわかっている。
今から400年ほど前の、慶長四年 (1599年) のことだそうな。
まさに、徳川家康が天下をとる直前。
秀吉が死んで、関ヶ原の戦いが始まろうとしてるところである。
落語では、この物語はこの飴屋のわりと近くの 「高台寺」 というところが舞台になっていて、「子がだいじ」 という駄洒落がオチになってたりする。
これだけじゃなくて、この飴と母と子にまつわるお話は探せば探すほどいろいろなところに伝わっている。
・いろいろな幽霊と飴
静岡県には 「夜泣き石(よなきいし)」 というのがあって、ちょっと内容が異なるが、やはり死んだ女から生まれた子供が飴で育てられた、という言い伝えがあるそうで。
ここでも、子育て飴をお土産で売ってるみたい。
石川県の金沢にもこのような伝説が残るお寺がたくさんあるっぽい。
道入寺とか。
https://iijikanazawa.com/news/contributiondetail.php?cid=6845
このお寺には、円山応挙の飴買幽霊の掛け軸があるそうで。
※円山応挙は足のない幽霊の生みの親として有名な画家。
三重県には、まんが日本昔ばなしの 『幽霊飴』 というお話の舞台となった飴屋があるらしい。
浄土寺というお寺の門前に、「飴忠」という飴屋があって、元禄半ば(1695年前後)に飴を買う幽霊が出たという。
飴忠はもうなくなってしまったけど、今でも幽霊が出たころにこのお寺で幽霊飴が売られるそうな。
長崎にも飴を買う幽霊の話がある。
光源寺というお寺に「産女の幽霊」の民話が伝わっています。
話の内容は、落語のやつに近いかも。
こうしてみると、少なくとも江戸時代ごろには飴を買う幽霊の話は日本に定着してたんじゃないかと思われる。
日本各地に伝承があるので、飴幽霊めぐりの旅もいいかもしれない。
では、この日本に広く伝わる怪談がどっから来たのか。。。
どうやら中国のようである。
◎中国の怪事 『餅を買う女』
1198年頃に書かれた 『夷堅志』 という今でいうオカルト本みたいなやつに、これとそっくりなお話が載ってるらしい。
青空文庫で日本語訳が読める。
ページ中ほどに 『餅を買う女』 がある。
一気に 800年も時代が遡ったわ。
この本は、政治家であり学者であった洪邁(こうまい)という人がいろいろ見聞きした怪事や異事などをまとめたものだそうだ。
これを読むと、なんとなく、昔のことを書いてるっぽい感じなので、洪邁の時代にも 『餅を買う女』 は既に昔話だったのかなと想像ができる。
洪邁が生きた時代、日本は鎌倉時代である。
『餅を買う女』 が中国の民間に広まっていた古い幽霊話であるならば、日本にいつ伝わっていても不思議はなく、何百年もたつうちに、それってあそこの飴屋らしいよ、みたいになってもおかしくはない。
こうして、日本全国に幽霊が来た飴屋が存在することになったんじゃないかな。
同じく、中国にも幽霊の飴屋がたくさんあったりするのかな??
ここまでくると、このお話の出所はそうとう古いんじゃないかと想像しちゃう。
◎死んだ女が子を産む話
鬼太郎から辿っていったこれらのお話に共通してるのは、「死んだ女が子供を産む」 という設定である。
この設定の元ネタを探していくと、もっと古くまで時代をさかのぼってしまった。
『旃陀越国王経』
中国の仏典である。
でた。仏典。
『旃陀越国王経』そのものの情報はネット上にはあんまりないんだけど、『熊野の本地』という御伽草子のひとつに酷似した物語があり、日本に伝わる「死んだ女が子を産む」系のルーツがここにあることがうかがえる。
では、この『旃陀越国王経』に出てくるお話の元ネタは何なのか。
中国の仏典は、インドから伝わったものから、中国で作成されたものまで様々な種類がある。
だから、必ずしもインドから来たお話とは言い切れないが、『旃陀越国王経』 は、沮渠京声【訳】と書いてあるので、 原本みたいのがあるってことかな?
つまり、インドから来た話の可能性もあるわけだよね??
沮渠京声って人は、探した限り中国語のページにしか情報がなくてよくわからないけど、4〜5世紀ごろのお坊さんらしく、仏典を翻訳したり広めたりしてた人物かな?
まあ、ともかく、このお坊さんの時代にはこの話があったということは、飴幽霊の元ネタが1500年前には既に存在してかも、ってことだ。
壮大すぎるわ。
◎ガンダーラへ
いろいろなサイトを調べていると、ガンダーラの仏教遺跡に 『死女が子を産む説話』 という像があるらしいことがわかった。
ガンダーラは紀元前6世紀〜11世紀ごろ、今のアフガニスタン〜パキスタンあたりにあった王国で、その土地に仏教は1世紀ごろに伝わってきたようだ。
上述した死んだ王妃が子を産む話が出てくる中国の『旃陀越国王経』は翻訳っぽいので、元がインドから来たお話である可能性は高い。
ガンダーラにも同じような 『死女が子を産む説話』 があるのは偶然ではないはずだ。
うわーー。その像、見たい〜!!!
って探したら、あった!!!!
インターネットすごい。
こちらのサイトに載っている。
こちらのサイトに乗っているお話は、『旃陀越国王経』のものとそっくり。
これが元ネタか…。
この彫刻がいつごろのものかはわからないんだけど、何となく1〜3世紀ごろに作らている彫刻と似てるかな。
同じくらいの時代のものなのかな。
さて、あとは、この物語が、一体どっから出てきたか、そしてどういうルートで各地に伝わったのか、であるが。。。
さすがに、もうこれ以上はわからなかった。
このサイトに書いてある物語を読むと、唐突にブッダが出てくるので、仏教と無理やりくっつけた感が漂う。
ブッダの登場よりももっと前からあるお話をブッダと関連づけてしまった可能性が高いのかも。
(ゴータマ・シッダルダ(ブッダ)は紀元前5世紀頃の人)
ガンダーラの文化はギリシア文化の影響も受けている。
探してみたら、ギリシア神話にこの母と子の物語があったりするかもしれないとか思ったけど…
もうムリ… 探せない。
もしも、ギリシア神話までさかのぼるのであれば、鬼太郎のルーツは紀元前15世紀ごろまでさかのぼってしまうわ…!!!!
とにもかくにも、日本の国民的妖怪ヒーローのルーツをたどっていたらガンダーラまで行ってしまうという、なんとも壮大な旅だった。。
鬼太郎ってすごいなぁ。
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