母の鞄は重かった。
鉄アレイでも持ち運んでるのかってくらい。

20代前半までは、スマホとケースに挟んだPASMOにクレカ、リップだけ持って夜の街に繰り出した。
Bag ladyなんてみっともないと思ってた。身軽ってかっこいい。そんな価値観。

自分も歳を重ねた。あの時の母の年齢にどんどん近づく。世の中にはたくさん予期せぬ出来事がおこると知った。

頭が痛くなる
現金が必要になる
生理になる
転ぶ
靴ずれする
寒くなる
雨が降る
食べこぼす
急に泊まる

やれ、カードだ印鑑だ保険証だ。ティッシュだハンカチだ絆創膏だ。傘にカーディガンに薬だの。

なんやかんや重くなりつつある鞄。世の中のお母さんはもっと大変だと思う。さらに子どもの物も、なんなら旦那さんの分も増えちゃうのかな。

母の重い鞄は、備えあればの母の思い。

おばちゃんのカバンに入ったアメちゃんとお茶ちゃは、今日もどこかで誰かを助けてる。