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逃げ道をつくっていてもいいですか?

あなたは首や顎のあたりに鳥肌が立ったという経験はあるだろうか。
私の場合、腕や足ではなく首や顎に鳥肌が立ったときは危険のサインなのである。動物的なこの信号を、今日、久しぶり受信した。

私は10月からあるジムに通っている。
そこでは45分間ただひたすら洋楽に合わせて、インストラクターの先生の指示の下、暗闇の中、自転車を漕ぎ続ける。全10曲ほど、立ったり座ったり、漕ぐ速度を速めたり負荷をかけたり……。ペダルと足は固定されているため、自分でも驚くほどのスピードで自転車を漕ぐことができるのだ。1レッスン最大30人ほど入れるそのスタジオの様子は傍から見ればちょっと異様なのかもしれない。

以前にこのジムに通っていることを同僚に伝えると、「何それ。同じ場所で自転車を漕ぎ続けるって……ハムスターかっ!」と突っ込まれたが、そんな可愛いものではない。新陳代謝がすこぶる悪い私でさえ雫の汗をかく、普通の人はシャワーを浴びたかのように汗をかく、結構過酷なトレーニングなのである。

今日もいつもと同じように自転車を漕いでいた。だけど3曲目あたりだろうか。ぶるぶると首筋から顎にかけて鳥肌が出た。体が悲鳴を上げていた。
「このままじゃ最後までもたない」
そう思ってペースを落とした。みんなが立ち漕ぎをしている間も座ったまま漕いだり、倍速で漕がずに自分のペースで漕ぎ続けたりした。

そして何とか最後まで漕ぎ切った本日のトレーニング。疲労感は通い始めてから過去感じたことのないものだった。出し切ったものの、もやもやが残ったままの帰り道。暗い夜道を歩きながらふとある考えが浮かんできた。

私はいつも逃げ道をつくっている……。

そういえば大学生の時、後輩に「ちよこ先輩にはATフィールドがある」と言われたことがある。ATフィールドとは、『新世紀エヴァンゲリオン』に出てくる、薄いけれど強固なバリアのようなもので、物理的攻撃に対する防御に使用することができるものである。
今回のケースの場合、近づいてもある一定の距離までしか近づけない、といったところだろうか。

「ここからは入ってこないで!」という私が持つ絶対領域。
何かあったときに私はいつもそこに逃げ込んでいるのだ。

過去来の友人と深い間柄にあるか、と言われればあまりそうではないだろう。もちろん、細々と連絡は取っているけれどどっぷり浸かった仲の友人は……いない。
会社の同期だって、同僚だって、すべてをさらけ出して話をしているか、と言われるとそうではない。ある一定の距離は必ず保つように心がけている。

多分私は無意識的に起こりうる「未来」を事前回避しているのだ。

親しいと思っていた友人との間にトラブルが発生し、今までの関係性が崩れてしまうかもしれない。会社の同僚や同期と仲良くなればなるほど別れるのが辛くなる。

悪い「未来」、悲しい「未来」が訪れたときにぱっと降ろせる壁を保険として用意しているのだ。よく、どこか冷静とか強いとかさばさばしているとか言われるけど本当は全然そんなことはなくて、ただ臆病なだけなのだ。
まるでオズの魔法使いのライオン。立ち姿は凛としているが、ハートはとても弱い。

いつからこんな生き方をするようになったのかは記憶にない。だけど、傷つきたくなくて、いい人を演じながら、時には壁を降ろしながら毎日暮らしている。

……これはいけないことなのだろうか。

オズの魔法使いのライオンは、勇気を求めて旅に出た。彼が旅に出たとき、フサフサのたてがみだってあったし、体もしっかりしていた。ライオンは既に大人だった。彼は旅の中で少しずつ、勇気を蓄えていった。

もし私にも同じことができるのであれば……閉じこもっている殻にヒビは入るだろうか。透明な壁は空気となって溶けてなくなるのだろうか。

いつ、どのタイミングでこの事象が発生するかはわからない。
だけどそんな日が来るという「未来」を信じてみるのも悪くない。
だからその日まで、起こりうる「未来」を事前回避することを、
許してはくれないだろうか。

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