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3分の白昼夢/エコバッグの真意

「これに入れてください」
私はエコバッグを差し出した。
一人分の食材と米を入れるには十分すぎるほどの大きさだった。
エコバッグを持ち歩いている人間。
その思想までとはいわないが、何故、エコバッグを使うのか。
客相手の仕事なら察して欲しいと、願う私が傲慢なのかもしれない。
しかし、店員は三日月型に口端を上げ、軽く頷くと、手際よく食材を入れていった。
この人なら、察したかもしれない。
私はやや期待を込め、アボカドを入れる様子を食い入るように見つめた。
彼女は、小分け袋に入れずに、そのままエコバッグへと収めた。
まるで、当然のように。
よし。
思った通りだった。
彼女は私の真意を受け取っている稀な人物だった。
これぞ、商人。きっと、マニュアルにはない行動だ。
安堵した私は、財布からお金を出すことに意識をやった。
レジに映し出される数字だけを見つめ、凡その合計額を財布から抜き取った。
その頃には袋詰めも終わっていた。
清算を済ませ、私は気分良く、エコバッグを受け取ろうとした。
すると、
「お米は分けておきました」
三日月型の口端が私の視界に飛び込んできた。
私の眼下には、エコバッグに入れられた食材と、店名が印字されたビニール袋に入れられた米が、得意そうに置かれていた。

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