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3.11が思い出させてくれる人

【3.11が思い出させてくれる人】

お菓子作りや、ハンドメイドのセンスが
ずば抜けて高い彼女と初めて会ったのは
28才の頃だった。
   
 
大好きな男友達、三輪さんが
「2人には、共通する何かを感じるから
ぜひ紹介したい」

と言ってくれたことが、始まりだった。
 
 
でも、本当のことをいうと、ちょっと
躊躇していた。 
 
 
その頃、私の心は徐々に壊れていっていて
まだ見ぬ人に会うのが、怖かった。 
 
 
それに、彼女が半年前から難治性の癌と
懸命に向き合っているということを
三輪さんから聞いて
 
より一層私のような人間は彼女に
会うべきでないと感じていた。
 
 
でも、彼女の入院先近くの公園で彼女に
会った時
 
お互いに強く強く惹かれあった。
 
 
それからは、時々うちに来てくれたり
カフェでお茶をしたり、病院に行ったり
アメフトの試合を観に行ったりなんかもして
2人で、いろんな話をした。
     
 
精神的にとても不安定な時期だったけれど
彼女の前では、いつも心を開くことができた。
 
 
彼女は、もともと余命半年と言われていたけれど、半年を過ぎてからも、毎日を丁寧に生きていた。 
 
 
会うと、しょっちゅう
「お揃いのアクセサリーを作ったんだ」と
嬉しそうな顔をしてプレゼントしてくれた。
 
 
私が「最近、また心がつらくなってきて」
と言うと、
 
「そうか、そうか」と何も言わずに
そばにいて話を聞いてくれた。
 
 
ある時、彼女が
 
「私はずっと、自分のことが好きになれなくて、外の評価ばっかり気にして
生きづらい人生を歩んでいたんだ。

でも、病を得たおかげで、今は毎日大切なことに、気づかせてもらってる」
 
と教えてくれた。 
 
 
少し意外な感じがしたのと同時に
 
病を得るという表現に、彼女の病に対する
愛を感じた。 
 
 
一方で、今は自分の病を気嫌いしている自分がいる事にも、気づかされた。
 
 
当時の私は、今より相当頭でっかちで
 
「目に見えないものは信じない!根拠がないことは信じない!」
 
というタイプだったけれど

彼女が目を輝かせて、「この本、絶対読んで!」
と言いながら

著者の飯田先生との数奇な出逢いについて
たくさん話をしてくれたおかげで
   
私は自然と「生きがいの創造」を手に取り
その内容は何の疑いもなく
自分の中に入ってきた。
 
 
それからも、相変わらず私の精神は常に
不安定だったけれど、その頃から
少しずつ目に見えないものを当たり前の
ように信じられるようになっていった。 
 
 
このことが、のちに私の人生を飛躍的に
生きやすい方向へと連れていってくれた。
 

一方で、彼女は会う度に美しくなっていった。
 
 
魂が磨かれていくというのは、きっと
こういう人のことを言うんだろうと、感じていた。
 
 
私を含め、きっと周りの誰もが、彼女の
奇跡を信じていた。
 
 
彼女のような人は、生きてみんなに生きる
ことの素晴らしさを伝えて続けてほしい。

そう願っていた。
 
 
2011年3月11日、震災の翌日。


彼女が亡くなったと連絡があった。
 
 
その少し前、彼女に会いに行ったとき
呼吸をすることさえつらそうだった
彼女の表情を思い出し

彼女の死を素直に受け入れようと思った。
 
 
お葬式に行く途中、それでもやっぱり死ん
で欲しくなかった!

という気持ちが湧いてきた。 
 
でも、この気持ちは愛ではなく、単なる
私のエゴだと気づいたら

彼女がいのちを全うしてくれたことに
ただただ「ありがとう」という感謝の
気持ちが、溢れてきた。
 
   

あれから13年。今も、ことあるごとに
彼女のことを思い出す。
 
 

これは、彼女が残してくれた言葉。
 
 
<何もなくても、何も出来なくても、ただ生きているだけで人は、美しく尊い。
  

ただ、そこに存在しているだけで、誰かの生きる喜びになる>


当時は受け取りきれなかった彼女の言葉も、今ならすんなりと心の奥深くに入ってくる。
 
 

今日は、3月11日。 
  
 
 
どれだけ忙しくても、どれだけ心に余裕が
なくても、ほんの少しの時間だけ目を閉じて
私たちを生かし続けてくれている
 
「いのち」の存在に、気づいてみよう。  
 
 
そして、そのいのちが、あなたの大切な人にも
同じようにあるように、
 
あなたがどうしても許せない人にも
同じようにあるということに
ただ気づいてみよう。
 
 
そこには大きな違いなど、何もなくて
ただ、いのちがあるということが
わかるから。
  
 
誰に優しくできなくても、自分が自分の
内側にほんの少し優しさを取り戻して
あげるだけで
 
世界はもっと優しくなるから。
 
 
彼女が私に、いのちをかけて教えてくれたこと。

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