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フランス地方菓子の世界へようこそ!(フランス菓子の歴史と生まれた背景)

日本各地にその土地の銘菓があるように、フランスにもその土地ごとに親しまれている「郷土菓子」があります。その多くが、小麦粉と砂糖やバターや卵といった身近な素材を使ったもの。それぞれの風土や歴史の中で生まれたお菓子は、素朴でシンプル、だけど味わい深いものたちです。

フランス菓子の歴史

「フランス菓子」というと、華やかで美しいお菓子をイメージする方が多いかもしれませんが、フランス各地で食べられているお菓子は、焼きっぱなしで素朴なものが圧倒的に多いです。

フランス菓子の原点は、紀元前1世紀まで遡ります。この時代にはナッツやハチミツを使ったお菓子の原型がありました。またすでに祭りや宗教儀式の際には、お菓子の存在があったようです。

3世紀になるとフランク人がこの地に侵入し、やがて「フランク王国」が誕生し、多神教からキリスト教に改宗します。これが後々のキリスト教にまつわるお菓子の誕生に繋がります。

諸外国の影響を受けて誕生したお菓子も多いです。11から13世紀に行われた十字軍の遠征では、スパイスや砂糖などが東方からもたらされました。ケルト人、アラブ人、北欧からきたヴァイキング、領地争いをしたドイツなど、様々な外的要因によっても新たなお菓子が伝わりました。

ディジョンのパンデピス

近隣国からフランスへ嫁いだ王妃たちによっても新たなお菓子は伝わりました。イタリアのカトリーヌ・ドゥ・メディシスは「マカロン」を、スペインのアンヌ・ドートリッシュやマリー・テレーズは「チョコレート」を、オーストリアのマリー・アントワネットは「クロワッサン」や「クグロフ」を広めたといわれています。

コルムリーのマカロン
ストラスブールのクグロフ

フランスの庶民にとって、お菓子は宗教行事や儀式にまつわるもの、手に入りやすい食材や特産物を使った素朴なものでした。そしてその多くが、その土地の人々に継承され、長い時を経て現在も親しまれています。

フランスの地方菓子が生まれた背景

ひとつのお菓子が誕生するまでには、様々な背景があります。その背景を知ったらもっとお菓子が味わい深くなります。

〇土地の産物を活かしたもの

その土地で育った農作物や良質な乳製品は、自然にお菓子に使われるようになりました。たとえば、ノルマンディー地方の「乳製品」や「りんご」、ロレーヌ地方のフルーツ「ミラベル」、ペリゴールの「クルミ」などです。

ノルマンディのりんごのタルト

〇外国の影響を受けたもの

フランスへは、十字軍の遠征で東洋の国々からスパイスが運ばれてきたり、戦争による領土支配でその国の食文化が伝わったりしました。また近隣諸国から王妃を迎えることによって、新たに伝わった食文化もあります。

バイヨンヌのチョコレート屋さん

〇キリスト教の行事に関するもの

元々キリスト教の儀式には、パンや小さな焼き菓子が用いられていました。それが一般的に食べられるようになったものもあります。また、季節行事としては「復活祭」や「クリスマス」などがあり、そのときに食べられるスペシャルなお菓子もあります。

ヴィレ村のパン・デピス

〇伝統や歴史から生まれたもの

その地に伝わる伝説を基に、エピソードにのせてお菓子を作ることがあります。プロヴァンス地方では聖母マリアの伝説をもとに「ナヴェット」が、リヨンの伝説から「クッサン・ドゥ・リヨン」が生まれました。プロヴァンスのナヴェット

マルセイユのナヴェット
クッサン・ドゥ・リヨン

〇修道院で生まれたもの

中世のお菓子作りの重要な舞台となったのが、厳しい戒律の下で自給自足の生活を営んでいた修道院です。修道院には豊富な資金力があったので、一般には普及していないオーブンがあったり、高価な砂糖を手に入れることができました。

ナンシーのマカロン

〇偶然に生まれたもの

「タルト・タタン」のように、偶然や失敗から生まれ、その美味しさから作り続けられたお菓子もあります。菓子職人の代わりに女中が作った「マドレーヌ」や、乾いてしまったパンをお酒に浸してみたら美味しかったことで誕生した「ババ」などがこれにあたります。

ラモット・ブーヴロンのタルト・タタン
マドレーヌ
ストーレーのババ

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