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京都喫茶店の歴史を尋ねる旅② 戦後の復興と喫茶店

京都は、全国トップクラスのコーヒーとパンを愛する街です。また、第二次世界大戦でほとんど空襲の被害にあっていないため、戦前からの喫茶店も残っています。そんな京都ならではの歴史を感じたくて、レトロな喫茶店を巡っています。

今回は、戦後1940年代から50年代に誕生した喫茶店をご紹介します。この時期に、京都に本店をおくチェーン店も創業しています。


1940年 イノダコーヒ

おそらく京都で一番有名な珈琲屋さんではないでしょうか?京都駅や地下街にも店舗があります。東京大丸や横浜高島屋にも出店しています。店名は、”コーヒー”ではなくて”コーヒ”。

1940年に創業者の猪田七郎氏が現在の場所で海外産コーヒーの卸売を始め、1947年にコーヒーショップを開業。この時、お客様が会話に夢中でコーヒーが冷め、砂糖とミルクがうまく混ざらなかったことから、初めから砂糖とミルクを入れた状態のコーヒーを提供していたそうです。
(今はどうするか聞かれます)

本店は、町家造りの外観で、重厚感のある照明やチェアなどのインテリアは、レトロな空間。これだけでも行く価値はあると思います。

朝食が特に有名で、その名も「京の朝食」というメニューがあります。開店7時なのですが、私が行った時は、日曜日の7時ぴったりに到着したら、すでに店内は満席。30分くらい待ちました。おそらく平日はここまで並ばないと思いますが…

イノダコーヒ本店
京都市中京区堺町通り三条下る道祐町140番地
電話:075-221-0507‎
営業時間:7:00~18:00(モーニングは11:00まで)
定休日:年中無休
アクセス:地下鉄烏丸線/東西線 烏丸御池駅より徒歩10分

1943年 祇園喫茶カトレア

1943年頃創業の純喫茶。現オーナーの祖母にあたる方が、高瀬川のほとりでお店を開いたのが始まりのようです。70年代に八坂神社の門前に移転。かつては現在の場所も神社の敷地内だったそうです。

お店の自慢は、神社と同じ水脈から汲んだ“御神水”で一杯一杯、丁寧に抽出した珈琲。前面の壁が黒くて、一見さんは入りにくいオーラを漂わせていますが、入ってみるとショーケースにケーキがあったりして、お店の方もフレンドリーです。

私が行った時は、店内もくもくしていて、そそくさと出てきたのですが、ついに2023年7月より全席禁煙に。

祗園喫茶カトレヤ
京都市東山区祇園町北側284
電話:075-708-8670
営業時間:10:00〜22:00(日曜は10:00〜20:00)
定休日:不定休
アクセス:京阪電車 祇園四条駅より徒歩5分

1948年 喫茶ソワレ

戦後間もない1948年(昭和23年)4月11日に雑貨店を営んでいた元木和夫氏が喫茶を開店。店名の「ソワレ」とは、フランス語で「夜会」「素敵な夜」という意味。

店内の青い照明は、染色研究家・上村六郎の「青い光は、女性が美しく見え男性は若々しく見える」とのアドバイスを受けて。彫刻家の池野禎春(いけのさだはる)氏によるブドウをモチーフにした木彫や、東郷青児(とうごうせいじ)氏の美人画が店内に飾られています。また開店当時からBGMを流さないので、とても静かです。

名物『ゼリーポンチ』は、2代目・元木英輔氏の妻、成子さんの考案。『ゼリーポンチ』は5色のゼリーがサイダーに入ったものですが、ゼリーミルクやゼリーヨーグルトなど『ゼリーの誘惑』シリーズで展開しています。

夕方伺ったら、外まであやしげな雰囲気。照明が青いので写真がうまく撮れないのが残念!グラスやコースターにも東郷青児のイラストが描かれていて、女子ウケ間違いなしです。

喫茶ソワレ
京都市下京区 西木屋町通四条上る真町95
電話:075-221-0351
営業時間:平日:13:00~19:00/土日祝:13:00~19:30
定休日:月曜
アクセス:阪急京都線 河原町駅より徒歩1分

1950年 六曜社珈琲店

京都のレトロ喫茶店を語る上で、このお店ははずせません。河原町三条に3代続く老舗喫茶『六曜社』。隣のビルで『コニーアイランド』という喫茶店を開いてからほどなくして、今の場所に移り、1950年地下のスペースからスタート。

1986年より、京都ではいち早く地下店の自家焙煎珈琲専門スタイルが始まり、現在は珈琲豆の販売もしています。

今は3代目の奥野薫平さんが、父・奥野修さんとともに店舗を分担しながら店を守っています。
*奥野修さんは地下店「Coffee & Bar」
*薫平さんは1階店「珈琲店六曜社」

1階店は、豪華客船をイメージして作られ、カウンター席がなく、すべてソファ席となっています。8:30からモーニングをやっています。そして飲める珈琲は1種類のみ。

地下店の地下に降りる階段は秘密基地への入口のよう。店内はテーブル席が3卓とカウンターは14席。かなりクローズドな空間。名物は、自家製ドーナツ。外はカリっ、中はふわり。もちろん珈琲とよく合います。

六曜社珈琲店
京都市中京区河原町三条下ル大黒町40
一階店 〜喫煙〜
電話:075-221-3820
営業時間:8:30~22:30(モーニングは12:00まで)
地下店 〜禁煙〜
電話:075−241−3026
営業時間:12:00〜23:00(17:00からは喫茶 +BARタイム)
定休日:水曜
アクセス:京阪電車 三条駅より徒歩5分

1952年 純喫茶ラテン

祇園四条、南座の裏にある純喫茶。創業者の井上硅子さんは、当時同じ町内の『フランソワ喫茶室』でバイトをしていて、そちらの奥さんに3か月間教育を受けて独立したそうです。

店内にたくさん飾られているステンドグラスは、なんと全て硅子さんの手作り!「ラテン」という店名は、「裸天」からきているそうです。

14時ごろにうかがいましたら、店内に人はおらず。確かにエントランスはちょっと入りにくいのですが、中に入ると象牙の裸の像やお花が飾られていて別世界です。

純喫茶ラテン
京都市東山区大和町大路通四条下る大和町8
電話:075−561−4245
営業時間:10:00~19:30
定休日:水曜
アクセス:京阪電車 祇園四条駅より徒歩2分

1952年 COFFEEユニオン

二条城の近くで70年以上も喫茶店を営む老舗純喫茶。TVドラマ「ちょっと京都に住んでみた」の2話で紹介されていました。

緑のテントが目印。店内はかなりクラシックで、結構広いです。入口左にカウンターの調理場。手前側はソファーの4人席。奥にはテレビとスピーカーがあって、2人掛けのソファー席が、みんなそちらを向いています。TVゲームのテーブルやコカコーラの自販機もありました。

3代目が調理担当、先代のマダムが接客をされています。お店は継ぎ足し、継ぎ足して大きくなっていったそうです。内装を手がけた作家さんが、「殺風景だから」と壁にブラジルのコーヒー農園の絵を描いてくださったそうです。そこに1953年1月15日とサインがあります。

全席喫煙可で、お昼過ぎに伺った時は、みなさん食事を済ませてからタバコを吸いに来ている模様。

名物は、バターで薄く焼いた卵焼きを折ってのせた玉子トースト。

COFFEEユニオン
京都市中京区室町通二条下る蛸薬師町281
電話:075-231-8722
営業時間:7:30~17:00(モーニングは11:00まで)
定休日:土日祝
アクセス:地下鉄烏丸線/東西線 烏丸御池駅より徒歩7分

1952年 小川珈琲

1952年創業の京都の老舗ロースター。創業者は小川秀次氏。1970年に直営喫茶店を伏見に開設。全国的なサプライチェーンで、京都に6店舗(駅ナカにもあります)、東京は下北沢や桜新町にも店舗があります。

また有機コーヒーでは、家庭用コーヒーの国内シェアNo.1を誇っています。社員が豆の買い付けから焙煎、卸、販売までを手がけ、スタッフには、協議会で優勝、入賞したバリスタが複数いらっしゃいます。目指しているのは100年先も続く店だそうです。

店舗によって内装もメニューも違います。私が訪れたのは、堺町錦店。2022年オープン、とってもモダンでおしゃれです。

小川珈琲堺町錦店
京都市中京区堺町通錦小路上る菊屋町519-1
電話:075-748-1699
営業時間:7:00〜20:00(モーニングは11:00まで)
定休日:年中無休
アクセス:阪急電鉄 烏丸駅より徒歩6分

1955年 はなふさ珈琲店

『はなふさ』は、現在の店主・山本一夫氏の父が裏寺町で開業。京都で初めてサイフォンを採用した店として賑わったそうです。

山本氏は別の店をやっていましたが、2001年に元祖『はなふさ』が閉店したのち『はなふさ』を名乗り、ふたつの店舗をそれぞれ『ノース店』『イースト店』として今にいたります。

自家焙煎豆とサイフォンでコーヒーを淹れるのですが、沸いたコーヒーをフラスコに戻して、再び沸かす「ツバメ返し」という手法で、濃厚なコーヒーを淹れています。

はなふさ珈琲店 イースト店
京都市左京区岡崎東天王町43‐5レジデンス岡崎1階
電話:075-751-9610
営業時間:8:00~翌2:00
定休日:無休
アクセス:市バス「東天王町」より徒歩1分


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