見出し画像

フランス・季節の仕事~葡萄摘み⑦ストラスブールへ~

葡萄摘みの仕事が始まって、2回目の週末がやって来た。

先週は、コルマールと、二―デルモルシュヴィルへ行った。

以前にも書いたが、週末になると住み込みをしていたフランス人達は、自分の家へと帰り、週末を過ごしていた。

それで、今回は独りぼっちになってしまう私を、相部屋のフランス人女性が

「ウチくる?」

と、誘ってくれたので、いくいく!とお言葉に甘えたのだった。

彼女の自宅は、ストラスブールにあった。金曜日の仕事が終わった後、私達は荷物をまとめ、同じタイミングで帰宅する若いメンズの車に乗せてもらうことに。

音楽もかけて、5人乗りの車は満員。ちょっとしたドライブ気分で葡萄畑を後にした。

途中の駅で私達はメンズ達と別れた。トラムに乗りストラスブールへ。

私達はストラスブールに着くと、バーに入った。

ここで、彼女(以下・ラピン)の友人が合流するという。

アルザスに来てからの出会いが目まぐるしく、私は緊張していた。

やって来たのは、アジア系フランス人だった。

やって来るなり、女子のマシンガントークと共に、タバコの煙が漂い始め、尻込みしそうだった私は目の前のグラスをグイっと飲み、自分を奮い立たせた。

ここは、自転車だらけのバーだった。こんなところは、自分ではなかなか来ないので、新鮮だった。

夜の大聖堂。

その後、バーで会ったラピンの友人とは別れ、別の友人宅へ。

友人は姉妹だった。

着くなり、飲みものを出され、皆がキッシュを作り始めた。しかも、レシピも見ないで!これがフランスの家庭料理なのだと思った。確か、土台となる生地は出来合いのものだった。それに、材料もシンプルだ。それでも、凄い勢いで何も見ないで作るので、私はその光景を目を真ん丸にしながら見ていたのだった。

楽しいひと時。

その後ようやく家に辿り着いたのだが、一体何時だったか…。

フランスの家庭は、夜の明かりは間接照明のみで、あまり明るくする印象がない。落ち着いた照明の中にいると、とてもリラックスするので良いのだが、もはやBGM化したフランス語のマシンガントークと、仕事後の疲れにアルコール効果も重なり…心地よく頭を揺らす私なのであった。

ラピンは彼と住んでいた。

彼女は彼のことを”Mon lapin(私のうさぎ)”と呼んでいた。それで私は、Lapin(ラパン/うさぎ)を女性名詞風に言い換えてLapine(ラピン)と呼ぶようになった。念の為、そのようなフランス語はない。

彼らは、Bricolage(日曜大工)が得意だった。

自分たちのベッドも、上の写真の赤い壁の色も、はたまたソファ―カバーも、全て手作りだった。感動して、あちらこちらと写真を撮らせてもらった。

翌朝は、ちょっとお寝坊。朝食は手作りハンバーグとラタトゥイユだった。明るく、優しく、裁縫も得意で、料理も得意、トンカチOK…素晴らしすぎるではないか。

この日は、自転車でストラスブールを観光。

途中、軽めの動物園を通過。

その後、自転車を止めて昼ごはんにパスタをテイクアウトした。こうしてちょっと自転車を止める時も、しっかりチェーンを巻く。

紙パックに入れてくれたパスタを、川沿いに座って食べることに。

街はすっかり秋めいてきた。

大聖堂は、どこまで後ろに下がっても全体を写すことが出来ず、何度も確認しながら後ろに下がり続け…結局上にカメラを向け、下が入らないままパチリ。それ程までに大きな大聖堂なのだ。

美味しいケーキ屋さんがあるからと、連れて行ってくれた。

クリスチャンだった。愛読の小林かなえさんの本でも紹介されていた。

シャンパンムース

忙しそうな店内…懐かしい雰囲気。遠い日本を想い…

やはり、私はこの仕事が好きなのだと思った。

瓶に直接書いていて、可愛い。途中からラパン(彼)が合流し、一緒にティータイム。

ラ・プティット・フランス

ウェディングの撮影に遭遇。幸せのお裾分けをもらった。

夜は、また別の友人宅へ行った。なんという顔の広さだ。

私の頭の中は、フランス語で溢れ返り、爆発しそうだった。当時、サルコジが大統領になった頃だった。彼女たちは、こうなったら飲み明かしてやる!と言って、飲んでいた。フランスは、日本よりもずっと政治話を友人同士でするように思う。私は呑気に生きてきたのだ…そう思った。

そういえば、皆で乾杯する時、グラスの方を見ながらカチンとなるのを見ていたら、ラパンが教えてくれた。

「乾杯する時は、皆の目を見てするんだよ」と。

それで、全くそんなことを考えていなかった私は、雷に打たれたような気分になった。ちょっぴり恥ずかしかった。そうか!そうだよな…!と思い、乾杯をし直したのだった。今度は皆の目を見て。

翌朝は、サイクリングで公園までやって来た。

バーで会った友人も参加。なんと、手作りガトーショコラを持参してくれた。なんなのだ、フランス人…凄すぎるぞ皆!

芝生に寝転んだ。静かな休日…。フランス人の休日の過ごし方を見た気がした。

誘われて、何が何だか解らずに一緒にやったが、結局解らずじまいだった、ジャングルスピードというゲーム。

――この辺は、ドイツとの国境が目と鼻の先にあった。

川を渡ったらドイツだと言った。ライン川か。

この川を渡った所すぐに、ケーキ屋さんがあるという。

ちょっとケーキ買ってくる!とラパン(彼)が言い、自転車で一人、ドイツへと行ってしまった。

そして、ケーキを買って、すぐに帰ってきた。

しかし、ここにはフォークがない。ラパンがふいに立ち上がり、どこからか枝を持って来た。ノワゼット(ヘーゼルナッツ)の木だという。この木は安全だと言いながら、ナイフでお手製フォークを作り出した。

本場のアプフェルシュトゥルーデル…。

そして、彼があっという間にフォークを人数分作り、ケーキを切り分けてくれた。彼らが普通にやっていることが、私には大発見だった。生きる力といえばいいのだろうか…その力が彼らには十分備わっていると思った。

ストラスブールでの週末は、こうして終わった。

私達は、可愛らしい家を出て、ラパンに別れを告げ、葡萄畑に戻ったのだった。




この記事が参加している募集

旅のフォトアルバム

この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?