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藤岡佑介騎手の騎乗について思うこと


そのニュースはあまりにも突然だった。


ジャックドール、故障_______



明け6歳。見知った21世代の名馬も次々と引退発表する中、未だ現役続行し挑戦を続ける者もいる。
ジャックドールもその一頭だ。去年は武豊騎手を背に迎え、念願のGI制覇。そのキャリアの中でも絶頂とも言える、待望の瞬間が見れた素晴らしいレースを走り抜いた。

モーリス産駒とは言えど、多くの馬が5、6歳のピークから陰りを見せ始め引退する歳。ジャックドールの6歳初戦はダート転向。なんとサウジカップを目標にするローテが組まれた。

泣いても笑っても今年の挑戦が最後になるだろう。そんな考えを巡らせつつ、ダート挑戦に対して不安を抱きながら過ごしていた、そんな時だった。

ジャックドール、右前浅屈腱炎。全治9ヶ月。

心当たりは大いにある。それは、去年の天皇賞・秋
イクイノックスがレコードで駆け抜けた、そのレコードを作った要因。破滅的な大逃げ。シンガリ負け。絶望だった。


ジャックドールの鞍上、藤岡佑介。
キャリアの殆どの手網を握り、ここまでジャックドールを導いてきた。
ジャックドールと言えば、その煌びやかで燃えるような黄金の栗毛の馬体に、四白流星。黄金の貴公子とも呼ばれる彼のレーススタイルは、「逃げ」。
それも前傾型ではなく、前半もそこそこのペースで逃げつつ、後半にさらに加速するという、世にも珍しい後継型の逃げを打つスタイルが話題を呼んだ。

そのタイトにペースを刻み続ける正確無比な逃げのスタイルに、往年の逃げの名馬達の姿を重ねるファンの期待を集めた金鯱賞では、GI馬2頭を含む中距離の強豪古馬相手にハナを譲ることなくレコード勝利を飾った。

21年の年度代表馬エフフォーリアとの対戦を望まれる中、ついに両頭が大阪杯での対戦が決まった。
並み居る現役最強の古馬を打ち倒し、その強さを証明したエフフォーリアが1番人気、続く2番人気はジャックドール。2000mのスペシャリストが揃い立った。

しかし、どちらも勝つことは叶わなかった。

エフフォーリアは天皇賞・秋の後の輸送中、蹄に釘が刺さり、そのまま怪我をしながらも有馬記念を制した反動のケアが全く出来ておらず、全連対だった馬柱に初となる黒星を上げてしまった。

対するジャックドールの騎乗はと言うと、それは酷いものだった。
ラップタイムは前半3f34.6。恐ろしく早い数字である。
ジャックドールは後継型の逃げ馬なので、前半にこんなタイム出したらバテるに決まっている。
それにも関わらず、藤岡佑介騎手は逃げ宣言のアフリカンゴールドに後ろからつつかれ、ビビってアホみたいな数字で逃げてしまった。これでは勝てるレースも勝てない。


このレースは少なからず落鉄の影響もあると思うので、世間的にもそこまでだったが、やはり私はその騎乗スタイルに強い不安を覚えた。

😎


年4戦目は夏の王者決定戦、スーパーGII 札幌記念。
連覇を狙う白毛の女王ソダシ、香港ヴァーズ2勝を上げる屈指の実力者グローリーヴェイズ、後に香港ヴァーズを勝利する絶頂期のウインマリリン、マイネル初のクラシック勝利をもたらしたオークス馬ユーバーレーベン、京大を8歳にして勝った大人気の古豪ダービー馬マカヒキなど、錚々たるメンツが集まった中、レースを引っ張るのは2頭だと皆が考えた。

一頭はパンサラッサ。ドバイターフを逃げ切りGI馬になった彼のレーススタイルは「大逃げ」。
出来るだけ大きいリードを作り、その差を守り切れれば逃げ切り勝ち。そのスタイルが海外で刺さり、その後はサウジカップも制覇。獲得賞金ランキングが一瞬で破壊された。

もう一頭はもちろんジャックドール。大阪杯での逃げもあり、パンサラッサに競りかけるのかどうか注目を浴びた。
結果としてはパンサラッサをクビ差で下したジャックドールの勝ちだった。

パンサラッサに惑わされる事無く、人馬が折り合い、ひたすら自分のペースを刻む先行策。宝塚記念で逃げを打ち馬券内に残ったユニコーンライオンや、早め早めに動く武史とのコンビで重賞勝ちを収めたウインマリリンを見ながら、タイトにペースを刻み続け、ジャックドールは重賞二勝目。GIへの出走権を確実とするための土台としては十分すぎる、堅実かつ大きな勝利だった。


そして、秋の中距離王者決定戦と言えば天皇賞・秋。
ここまでのキャリアの全てが2000mのジャックドールにとって、ここはどうしても取っておきたいレースだ。

ここまで来たらやる事はひとつ。勝つ為には自分のペースで走りきる事。それが乗り役である藤岡の仕事だ。ここまでジャックドールと酸いも甘いも経験しているこのコンビなら、と信じて私は彼の馬券を買った。



_____結果は、散々だった。

大方の予想通り、もちろんパンサラッサは大逃げ。前半1000mを57.4で通過するという、サイレンススズカに匹敵する脅威の前傾ラップだった。

そしてジャックドールはそのパンサラッサの遙か後方、馬群を引っ張る実質的な先頭_____では、なかった。

特に不利もなく普通に逃げられる状況で、なんとバビットノースブリッジにハナを譲るという、信じられない光景を私はウインズのモニター越しに見ていた。

パンサラッサが大逃げし、後方集団はバビットノースブリッジがペースを刻みスローで進む中、一切ペース維持に関与せず控えて先行・・するジャックドールと藤岡佑介。あまりにも信じ難いその戦法に脳が理解を拒絶していた。

札幌記念の前向きな先行策とは違う、消極的な先行策を打ったのにも関わらず、キレ勝負で4着に来るという地力の高さを見せつけたものの、やるせない結果を残した。

しかもレース前の取材で、「ジャックドールを信じて乗る」だの「騎手人生をかけて乗る」と言っていたのにも関わらず、だ。

そして、更に酷いのはレース後のコメント。

藤岡佑介騎手(ジャックドール=4着)「スタートは上手に出てくれて、ポジション争いが激しくなると思って、それをやりすごしていい形で最初のコーナーに入れた。前が少し離れていたので難しい競馬にはなったけど、ペース的にはこの馬のちょうどいいところで入れたと思います。直線は馬場のいいところに持ち出したけど、最後は前をつかまえきれず、後ろからも差されてしまったので、もうひと押しといった感じでした。コンディション的にはまだ上がり目がありそうなので、この着差を詰めていければ、G1に手が届く思うので、また頑張ります」

正直、最低なコメントだと思う。
一つも悪びれる事もなく、あまりにも他人事かつ、次もジャックドールに乗せてもらえるような言いっぷり。
これではジャックドールがあまりにも可哀想で仕方がない。この騎手が乗り続けたスーパーホーネットの末路を考えると恐ろしくて仕方がないのだが、調教師は藤岡佑介の父、藤岡健一調教師だ。


そもそもジャックドールのような素質馬に乗り続けられたのも師、父による縁故騎乗そのものなのだが、今回の件でさすがに乗り替わりを望む声も多く見られるようになった。
その結果ついに次走はレジェンド武豊騎手に乗り替わりでのレースとなり、歓喜したのも記憶に新しい。

次走香港カップでは輸送や調整の関係もあり、ジョッキーの判断で無理をさせない騎乗でダメージを最低限に抑えながら7着と堪えた。

そして迎えるは大阪杯。
リベンジとなるこの舞台ではかつてのライバル、エフフォーリアは心房細動で引退、出走ならず。
結局エフフォーリアは蹄の影響でトモ、膝全て壊してしまいながらも、懸命に有馬記念で馬券内に残るなど兆しを見せたものの、偉大すぎる3歳時の戦績を考慮し引退。

そんな21世代を背負っていく立場になったジャックドールは、新たに武豊を背に迎え、全レース馬券内の抜群の安定感を誇る去年の二冠牝馬スターズオンアースを筆頭に、春の中距離王者を賭けた戦いが始まった。
絶好のスタートを決め、そのまま後続を引き連れタイトなペースを刻み続け、スターズオンアースをクビ差で凌いでGI制覇。最高の瞬間だった。

前半35.5 - 後半35.3で纏めあげる上手さと、武豊お得意のチョイ差し、チョイ残しの体現とも言える手綱さばき。名手の芸術的とも言える技術と、桜が咲き誇る仁川のターフに金色の春風を巻き起こしたジャックドールの姿に涙すらした。

私の中では23年ベストレースはこの大阪杯とイグナイターのJBCスプリントの2強と言えるほど印象に残ったレースだった。


続いて初のマイル挑戦となる安田記念や、連覇を賭けた札幌記念は惜しくも敗れたものの、向かうはやはり去年の雪辱を晴らすべく、秋の中距離王者決定戦、天皇賞・秋

そこで問題となるのが、ジャックドールの鞍上
武豊はドウデュースと共に参戦することが決まっていたため、その矢先が向かったのは…やはり師故か、大方の予想通り藤岡佑介だった。

1年ぶりにコンビ復活となり、「また頑張ります」とのコメントが叶ってしまった今回、去年の忘れ物を取りに行くべく、今度こそ、今度こそ藤岡佑介を信じてみようと思った。

流石に去年のような腑抜けた騎乗をする程、藤岡佑介はバカじゃない。
ローカルでは若手を纏めあげる立場にあると謎に責任を負いながらも、1番人気の馬で上がり最速4着を繰り返す彼でも、ジャックドールだけはお手馬として特別だ。伊達にキャリア最多コンビをやっている訳では無い。

今年はパンサラッサ程明確に逃げたい馬もおらず、絶好のチャンスだった。
外枠とは言えど頭数的にも不利は少なく、最内のノースブリッジさえ抑えればジャックドールの競馬に持ち込める。

東スポの田原成貴の記事でも「こう逃げろ」とラップタイム付きで藤岡に対して指南して居るのを見て、私が理想としていたレース展開と全く同じ事を言っている田原に感動を覚えた。
田原ですら勝ち筋を指南する程ファン達はジャックドールの真骨頂たる"あの"逃げによる勝利を望んでいる。

勿論、馬券も心の本命もジャックドール。イクイノックスに勝てなくとも、自分の競馬をして欲しい。いや、勝って欲しい。しかし、現実はそう甘くなかった。


シンガリ負け。
これが23年のジャックドールのラストレース、引いてはこのまま怪我が完治したとて来年は7歳馬。本当に現役のラストレースかもしれない。

そのレース内容は…あまりにも酷いものだった。
逃げ自体は前述の通り外から被せに行き成功するものの、そのまま勢いは衰えず加速。
入りの前半1000mを57.7で通過するという、去年大逃げしたパンサラッサ並のタイムを叩き出した。

パンサラッサは大逃げが自分のスタイルだが、ジャックドールはタイトなペースを刻み続け、後続馬に脚を使わせない、トップスピードが持続するタイプの逃げ馬なのはこの記事を読んだ上では重々承知だろう。

それに対して藤岡佑介騎手は前半を57.7で逃げる選択肢を取った。それは何故か?答えは22年の大阪杯と同じ。
ノースブリッジを被せてハナに立ったは良いものの、後ろからガイアフォースがつつく形になり、自分の競馬が全く出来ずに逃げていた。否、逃げさせられていた・・・・・・・・・

この走法は別に前に馬が居ても良い訳で、その最たる例が札幌記念。特段ハナに拘る必要はない。
だが、22年秋天の結果、今年こそはと藤岡佑介は逃げなくちゃいけなかった。恐らく、彼はそう思ったのだろう。何がなんでも逃げ。ジャックドールで逃げなければ。ジャックの為ではなく、自己保身に逃げたのだ。

ある意味、去年と同じと言えよう。消極的な先行、消極的な逃げ。GIレースに望むジョッキーとは考えられない。


結果、直線では全頭に抜かれシンガリ負け。
武豊と望んだ大阪杯では「これがジャックの競馬」と実況に評されたように、理想のペースを刻み続ける藤岡佑介とジャックドールが秋天でどこまで通用するか見てみたかった。相手はイクイノックス。負けたとてよくやった藤岡佑介と褒めてやりたかった。それがこのザマだ。

しかし、世間的には彼の騎乗を評価する声が大きかった。
「男を見せた藤岡佑介」「去年と違って逃げれてえらい」など、賞賛の声が上がり、更には「去年控えて叩いたくせに今年逃げても叩くのはダブスタ」などと批判意見に対する批判まで上がるほどだった。

これはもう言っちゃうけど、この結果に満足して藤岡佑介を擁護している人達、ジャックドールに大して思い入れないでしょ。
ずっと本命にしている身から言わせてもらえばそう見えてしまう。(てか仮に好きならシンガリ負けで満足するなよな普通に考えてこの負け方がおかしいとか思わないのかよ)

そしてその結果、右前浅屈腱炎を発症。
レース直後では無い為、100%そうとは言いきれないものの、走行中の負荷による炎症ともなるとその疑念は真っ先に天皇賞・秋の大逃げによるものだとしか考えられない。


レースに勝ちに行く騎乗というのは大事だ。かと言って馬をぶっ壊すような持ち味ガン無視の破滅大逃げが許される筈がない。
藤岡の騎乗は勝ちに行くものでは無く「逃げなければ」という自己保身の騎乗なので、もはや捨てに行く騎乗という言葉の方が正しい気がしてならない。

彼の唯一のGI勝ちであるNHKマイルCも武豊のお下がりで貰ったケイアイノーテックによるものだし、3歳春の短距離路線なんて紛れが多すぎて今後に繋がらない。もはやGIジョッキーと呼べるのかも怪しい。毛ぇ無いノーテック(テク無し)だろ

ジャックドールの1ファンとして、一刻も早い回復と、願わくば種牡馬として活躍出来る未来を信じています。

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