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日本語どこまでやるか問題③

カナダでも現地の子ども達に日本語を教えていますが、こちらでは日本語学習について日本とは違うニーズがあります。

それは「日本人とコミュニケーションを取れるレベルを維持したい。」というニーズです。

継承語としての日本語

これは、日本語を「継承語」として学ぶケースなのです。「継承語」とは、簡単に言えば「親から受け継いだ言葉」です。研究者の中島和子氏によれば、継承語は家庭やコミュニティで使われるが、社会や教育システムでは主要言語として用いられない言語を指します。

継承語として日本語を学ぶ子どもたちの背景は様々です。例えば、両親が日本人で子どもが幼いうちに海外移住をした場合、日本語は家庭内での主要言語となりますが、兄弟姉妹間では英語が使われることもあります。また、片方の親が日本人の場合、日本語の聞き取りは得意でも話すのが苦手なこともあります。

継承語を失うことは、親子間のコミュニケーション、コミュニティの文化の共有、国と国の橋渡しとなる能力の損失を意味します。つまり、継承語は家庭やコミュニティ内でのコミュニケーション、文化的な橋渡しの役割を持つ重要な言語です。

多くの場合、子どもたちが継承語を学ぶのは、親がその言語を受け継いでほしいという思いからです。カナダには平日の昼間に通える日本人学校が無いので、子ども達は放課後や週末に通える日本語学校で日本語を勉強しています。

非常に難しい、海外での日本語学習

ところが、海外で日本語を学び続けるのは、私が考えていた以上に難しいようです。確かに、日本語には漢字がありますし、難しい表現も多く存在します。漢字練習の宿題が嫌いで、毎週泣きながら何とか終わらせているという話もよく聞きます。小学生の段階で日本語の学習を止めてしまうケースがとても多くあります。

継承語学習で大切なのは、「完璧」でなく、「継続」

しかし、これは非常にもったいないことだと私は思います。継承語を身に付ける際に大切なことは、完璧な状態を目指すのではなく、学習を継続することです。漢字が書けなくても、表現が少し違っていても、日本語でコミュニケーションを取ることはできます。

そして、今の時代は、AIが翻訳をしてくれます。漢字や語彙などの細かいことを学校のカリキュラム通りに身に付けるよりも、AIを上手に活用しながら、コミュニケーション能力を上げていくことの方が、その子にとって価値があることなのではないでしょうか。

完璧でなくても、現代のテクノロジーを使いながら、日本語で実際にコミュニケーションを取る練習する。それこそが、子ども達にとって楽しくリアリティのある学びになると考えています。日本語個別指導スクールでは、毎月発表会を実施し、各自の発表だけでなく、質問タイムでリアルなコミュニケーションを取ることで、日本語学習が子ども達にとって楽しい活動になっています。

完璧でなくても、楽しく続けていく。これからもより多くの子ども達に、継承語としての日本語を学び続けてほしいと心から願っています。


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