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着物で危うく死にかけた話

着物はいまやいろいろな着方があって、そこにその人のポリシーというか、「ファッション楽しんでます!」という気持ちがあれば、どのようにアレンジしてもいいではないか。
というのが、わたしの周辺で目にする「着物民」のご意見です。
わたしもそれに賛同します。

先日、お花見をしていたら外国人の旅行客が写真をとっていて、その人は背が高いので振袖を対丈ではおり、帯の代わりに帯締めで結んで、ハイヒールとパールのネックレス、赤のミニドレスを下に着ていました。
とても素敵でした。
ツアーガイドのお兄さんが、「ああいう着方、日本人はしないですよね」というので、「いえ、ヒールやブーツと合わせる方、結構いますよ。いま流行ってます」とお伝えしておきました。
そこに「きるもの」への敬意の念があれば、どうアレンジしてもいいと思います。

思う派のわたしですが、先日着物をアレンジして着ていて、うっかり死にかけたので、これはみなさんに注意してもらわなければと思いました。
もちろん、不注意だった自分が悪いのだし、普段だったらそんな間違いもしないのですが。

さて、その日わたしは、イベントもあるので洋装ミックスで出かけようとしていました。
以前見た「着崩しアレンジ」のインスタリールを2〜3回確認し、うん、これならできるな、と鏡の前に立ちました。
普段とは要領の違う着方だったので、リールを思い出しながら、「こっちを持ってきて、んでこっちを抑えて折って……

という感じでどうにか形になり、家を出る時間が差し迫っていたので(というかすでに遅刻していたので)、急いで外に飛び出しました。
駅までの道を、混雑した休日の商店街を縫うようにやや早歩きで急ぎます。

その時、事件が起きました。
というか、事件が起こっていたのに、ようやく気づいたんです。

ふと、Suicaを取り出して袂に挟んでおこう、とバッグからとりだして胸元を見ると、Suicaが入らない……?


あれ?
なんでだっけ???

カンのいい方はお気付きでしょう。

そう、「インスタのリール」です。

インスタのリールを「鏡のように見て」着付けていたことに、ここに至ってようやく気がつきました。
動画を撮って投稿する方は、よほど「着付け教室!」みたいな内容でない限り、左右反転をしていません。
つまり、鏡合わせで考えると、出来上がりが左右逆になるんですね。

そして着物で左右の合わせが逆になるとどういうことかというと。

左前。

といいまして、死装束になります。
(このあたりは諸説いろいろあるようですが割愛します。)

そのことに気がついた瞬間、わたしは手にしたスマホで胸元を隠しました。
どうしよう、どうしよう。
自分死んでるじゃん。

やばい、これからイベントなのに。
このままで行くわけには。
どこかトイレで着替える?
時間ある???

とりあえず駅まで行き、ホームで人目のないことを確認したわたしは、襟元をガバッと広げて帯ギリギリまで開けました。
洋装ミックスだからできる荒技。

こうして半分蘇ったわたしは、とりあえず一つ目の目的地に辿り着き、トイレに駆け込みました。
あとは時間との戦い。
10分くらいで脱いで着直して(鏡なし)。
どうにか生き返り、トイレの個室から出るわたし。

あーよかった。
あやうく死ぬところだった。

どこにどんな目があるかわからないこのご時世、いくら着物の着方が自由だといっても、左前だけはあかんて。

上級者の方はよもやうっかり左前で死ぬことはないでしょうが、動画を参考にするときは、十分注意が必要だなと思った次第です。

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