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「「イギリス人は動詞で泣く、日本人は副詞で泣く」といわれている。」

窪薗晴夫編 『オノマトペの謎 ピカチュウからモフモフまで』(岩波書店、2017)

言語が好きなので、こういう本を見るとつい読みたくなってしまう。
しかもこれは「岩波科学ライブラリー」新書。
岩波の新書で内容を外すはずがない(岩波書店に対する圧倒的信頼感)。

さて、いま手元に辞書がないので、英語で「泣く」を思い出そうと必死なのだが、"cry"と"weep"しか思い出せなかった。
英文学を学んだ脳みそよ、もう少しがんばってくれ。

"cry"は日本では中学で学ぶ単語で、単に「泣く」と訳される。
んで、実際のところの"cry"の用法ってどうよ、というと、「大声で叫ぶ」という意味もある。
何かに驚いて、悲しんで、恐怖を感じて、などのネガティブな状況で叫ぶことが多いように思う。
この時、注目すべき点は声の出し方(突然である、大声である)であって、涙の有無は関係ない。

一方で、"weep"は日本語訳で「しくしく泣く」とされることが多いが、これには涙を伴う。
声は必ずしも出てなくてもいい。
いやでも、たとえば「彼女は静かに涙を流した」みたいになると"she dropped tears"みたいになる気がするので、おそらく"weep"も声を出している。
ただし嗚咽が漏れているだけで、大声ではない気がする。

というように、英語における「泣く」のニュアンスは、動詞で決まる。

日本語は、すでに上にあげているように「しくしく」があり、「すんすん」「えーんえーん」「ぎゃーぎゃー」「おいおい」など、副詞によって泣き方が決まる。
こういう、音で行動を表す言葉を、「オノマトペ」という。

んで、この本ではオノマトペについて、簡潔にしかしながら幅広い知見を与えてくれる。
なんで急に説明が大雑把になったかって?
読んだ内容を大抵忘れてるからだよ(お約束)。
でも書名に入ってる「ピカチュウ」は実のところそんなに論じられていなかった気がする。

「ピカ」というのはいうまでもなく「ピカピカ」というオノマトペから来ているのだろう。
「ピカピカ」というと、わたしは磨かれた金属の表面を思い出してしまうのだけど、そうするとピカチュウは鋼タイプになってしまう。
それではいけない。
仮にもあれは電気ネズミだから。
一方で、「ピカっと」という副詞にしてしまうと、電気がついたり、光が点滅したり、雷が光ったりと、急に電気系のイメージになる。
そしてネズミの鳴き声である「チュー」がつくと、電気ネズミの完成である。
ポケモンの名前って、すごいなぁ。
あ、でもわたしはライチュウの方が好き。

それはさておき、この本で面白かったのは、外国語にもオノマトペのある言語があるのか、というあたりと、日本語学習者もオノマトペを使えるのか、というあたり。
オノマトペのある言語は、もちろん日本語以外にもある。
たまたま世界強者言語である英語フランス語スペイン語中国語あたりに日本語のオノマトペに類する言葉がないだけだ。
日本語学習者にオノマトペは使えるか、というと、これはもう日本語の習熟度によるとしか言えないと思う。
でも、感覚的に使えるかというと、どうなんだろう、と思う。
日本人は結構適当にオノマトペを作り出して、というか、その場限りの表現として音を使ったりするので、それを聞いた学習者がすぐに理解できるかというと、難しいんじゃないかな。

だんだん本書の内容から外れてきた気がするけれど、もう一つ日本語のオノマトペが豪快なのは、ラノベやマンガだろう。
わたしの愛する「スレイヤーズ」シリーズはとにかく爆発とかツッコミとかの擬音が独特だった。
もう盛大にゴミの山に突っ込んだりしているのがよくわかる音だった。
あれは80〜90年代だから、結構新しかったのではないかと思われる。
マンガになると、音は背景として描かれる。
読者は登場人物のセリフを追いかけながら、同時に効果音として文字を認識している。
決して「片方を読んでから、もう片方を読む」ということをしない。
あれもなかなかな高等技術だと思う。
そしてわたしがいままで出会った効果音は、「ワンピース」のMr2ボン・クレーの登場音、「スワンっ!」なのだけど、あれってアニメでどうなってたっけ?
そんな効果音ある?
日本語ゆるすぎない?
でもボンちゃんには「スワン!」が似合うんだよ、その音で登場するんだよ、「バーン」とかじゃないんだよ。

つくづく、日本語って摩訶不思議だなと思います。

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