noteサムネ卒論3

ECサイトの顧客満足を上げるには?

私の卒論のテーマ「アパレルECサイトの顧客ロイヤルティに関する実証研究」です。今回の論点は、ざっくり『ECサイトのCS(顧客満足度)ってどうやって決まるの?』ということを掲載します。

最初から3ヶ月以上空いてしまって、やめちゃおうかと思いましたが、ずっと心の奥底にもやもやがあったので継続させていただきます。

顧客満足と部分構成要素の分析

「CS」というと最近ではNPSという指標が使われ始めています。NPSっていうのは実際に経験(使用)した製品・サービスに関する他者への推奨意図が顧客満足に比例する、という考え方です。(詳細は以下の通り)

Reicheld(2003)はNPS(Net Promoter Score)を提唱し、以下のように定義した。顧客アンケート調査において、自社製品・サービスの推奨を0(全く推奨しない)~10(絶対に推奨する)まで11段階で尋ね、9~10をPromoter(推奨者)、 0~6 をDetractor(中傷者)とする。その上で、Promoterの比率からDetractor の比率を差し引くことによって、NPS を導くというものである。2000年初頭の当時、 Amazon、eBayなどの企業のNPS は75%を超えていることから、業績との相関が高いと結論づけられている。

NTTコム オンライン・マーケティング・ソリューション株式会社は、ショッピングモール型アパレルECサイト8社(ZOZOTOWN、[.st]、SHOPLIST、&mall、CAN、MIX.Tokyo、丸井ウェブチャネル、フェリシモ)の利用者を対象に、Reichheld(2003)が提唱したNPSに則り、調査を実施した(有効回答者数6,242件、2017年8月実施)。

その中で最もNPSの数値が高かったのは、ZOZOTOWN(NPS:62.4%)であり、2位が[.st](NPS:51.4%)、3位が丸井ウェブチャンネル(NPS:46.8%)という結果になりました。(とりあえず、ZOZOTOWNってすごいんだよってことです)

まぁここまではいいとして、じゃあなんの要素が「顧客満足(CS)=他者へのおすすめ度合い」に響くんだ!ってはなしですよね

それを提唱してるのがSymanski and Hise (2000)です(しまんすきーあんどいせって読むらしい)。

(しまんすきーあんどいせ)は、電子商取引における顧客満足(e-Satisfaciton)の部分構成要素を「利便性」「娯楽性」「品揃え」「製品情報」「サイトデザイン」「価格の適切さ」の以上6つであると表しました。

でも、この人たちの研究分析対象はECサイトの中でも本、音楽、旅行であり、アパレル分野でこの研究は進められてません。

仮説提唱

仮説提唱にあたり、本研究の対象がアパレルのECサイトであることを考慮してしまんすきーといせの研究に乗っ取り仮説を立てます。堅苦しくなっちゃったので、グレーのところ(根拠となる先行研究の引用)は飛ばしてOK!

利便性
仮説1: total shopping time:注文してから届くまでの時間が短いことによって顧客満足は向上する。

角中(2008)は「リードタイムが短いことが顧客満足につながり、競争優位になっている」とある

娯楽性
仮説2: exciting feeling:このサイトを使っていて楽しいと感じると顧客満足は向上する。

Hunt(1993)によると、顧客満足は認知的側面だけでなく驚き、楽しさ、興奮といった感情側面に影響する。そして感情的側面は認知的側面と同じか、それ以上に顧客満足のプロセスに影響する可能性があると指摘した。Verma(2003)は喜びを体験する顧客には単なる満足だけでなく、顧客感動が喚起されると指摘した。よってポジティブな感情は顧客満足に影響を与えるとの仮説が導かれる。

品揃え
仮説4 : Quality of information:衣料品に関する情報が分かりやすいと感じると顧客満足は向上する。

Bianco(1997)によると、優れた品揃えは顧客のニーズが満たす可能性を高めると考えられる。さらに、Kim(2001)は、「経験価値マネジメントにおける小売業者の役割は、多様な商品カテゴリの編集を通じて魅力的な品揃えを提供し、顧客が満足のいくショッピング経験を得られるような小売環境を創造することにある。」と述べている

製品情報
仮説4 : Quality of information:衣料品に関する情報が分かりやすいと感じると顧客満足は向上する。

 Bronnenberg(1997)によると、オンラインショッピングの顧客は小売店舗に来る顧客に比べ実際に製品に触ることや試着することが困難なため、画面から読み取れる情報を頼りに商品選択をすることが多いと述べている。そのため、豊富な理解しやすい製品情報がより満足のいく製品選択を下すことが可能となると強調している。

サイトデザイン
仮説5-a : Screen operation:サイトの画面か操作しやすいと感じると顧客満足は向上する。
仮説5-b: information fast:サイト内で知りたい情報がすぐに出てくると感じると顧客満足は向上する。

Ulrich and Pearson (1998) や Veryzer (1995) は、デザインは「製品の使い方を消費者 に伝達し、美観 (aesthetic) に影響を与えるものである」と定義しており、Manes(1997)は、優れたWebのサイトデザインは簡単な操作や商品の探索に関するものであると報告している。

価格の適切さ
仮説6: Price appropriateness:価格が適切であると感じると顧客満足は向上する。

Zeithaml(1988)は金額に対して、品質や性能が見合っているかに関する評価が顧客満足に影響をもたらすと述べている。小野(2016)は、アパレルECサイトの多くは季節、日時、時間帯、さらに顧客のデモグラフィックなどの違いに合わせてクーポン配布やタイムセールなどの価格差別などが行われつため、品質の裏付けを伴った形で満足が規定される、と述べる。プレミアム会員費用や手数料など追加費用に対するサービスを享受できていると感じているかによって顧客満足に変化が生じる。

研究のモデル図

今回の研究モデルは以下のように図式化されます。

以上の仮説から導き出される質問項目を基にZOZOTOWN を事例に以下のアンケートを作成した。5点満点中何点であるのかを選択してもらう形をとった。1が最低評価で5が最高評価にします。


独立変数:「注文してから届くまでの時間は適切か」「このサイトは使っていて楽しいか」「品数、衣料品のバリエーションは適切か」「衣料品に関する情報が分かりやすいか」「サイトの画面は操作しやすいか」「サイト内で知りたい情報はすぐに出てくるか」「価格は適切であると感じるか」の7点。

独立変数が複数あるため、分析方法としては重回帰分析を用い、分析ツールはExcel2010の「回帰分析」を使用します。(イメージとしてはこんなかんじですね)↓

yが目的変数であり、顧客満足(e-Satisfaction)を表します。(x1、x2、x3 がアンケート項目。)
(β1 、β2 、β3)が偏回帰係数でこの値が大きいほど、顧客満足への影響度が高いってかんじ。

結果

重回帰式はy = -0.5865634407+ 0.06666158456 x1 + 0.3464089097 x2 +0.08459500067 x3 + 0.144157588 x4 + 0.1933268398 x5 + 0.216436301 x6+0.1303974221 x7

図式化するとこんなかんじ。

数値が高い項目を見てみると、「娯楽性」と「サイトデザイン」であることがわかります。(1. このサイトは使っていて楽しいか 2. サイト内で知りたい情報はすぐに出てくるか 3. サイトの画面は操作しやすいか )

この結果、ちょっとびっくりじゃないですか?

だって、ZOZOは自社専用の物流倉庫を所持することでリードタイムの短縮を可能にしてるし、ブランド数も(最近は現象傾向ですが、)どんどん増やしていました。

そもそも、オンラインショッピングの急激な成長の要因として、24時間どこでも必要に応じてアクセスすることができ、すぐに商品が届くといった利便性や、実店舗では不可能な品揃えや種類の豊富さが挙げられていました。でも、「注文してから届くまでの時間」や「品揃え(品数、衣料品のバリエーション)」の係数はまぁ大事ではあるけれど、強く顧客満足に影響しているとは言えないことがわかりました。

逆に「使っていて楽しいと感じるか」の項目が高かったことから、実店舗のみならず、ECサイトにおいても娯楽性が重要な役割を果たすことが明らかになりました。ECサイトを使用している顧客は「オンラインショッピングであるから、こういった要素が欲しい」といったニーズではなく、実店舗に求めていることを同じようにECサイトにも求めている傾向があると理解できます。

私の考え

UI、UXの観点から、ZOZOTOWNがどれだけサイト設計に優れているかは他の方がnoteに示してくださっています。

「使いやすさ」というのは顧客満足に影響している、というのはweb業界にいる方なら誰もが理解していることだとは思います。しかし、マーケティングの観点、経営学にも取り入れるべきなのではないか、というのが私の意見です。「デザインはマーケティングである」という考えを学術面からアプローチしたかったので私はこの論文を書きました。

論文一本をいくつかに分けて紹介する形になったので、別れていたり途切れ途切れになっている部分があるので、簡単なまとめにして最後に公開しようと思います。

読んでいただきありがとうございます。(恐縮ですが、♡がほしいです)

#EC #アパレル#ECサイト#卒論#ZOZOTOWN#卒論公開チャレンジ#顧客満足度#顧客ロイヤルティ#UI#UX


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