柴犬チョロは異世界へ行くけど、夢の中で兄ちゃんを癒し続ける#4

(おばあさんに名前つけてもらったけど…兄ちゃんからすでに【チョロ】と呼んでもらっていたから、なんか変な感じ。でも以前の私のままでいていいんだって思えるから嬉しいや)


柴犬チョロは口角を上げ、ニコニコさせるような顔で老婆を見ながら、尻尾をフリフリと動かす。

老婆「あんた、喜んでるのかい。あはっはっはっはっ」
「しかし、尻尾を動かすのはあんまり上手くはないわねぇ~。」
「久々に癒されたよ。ありがとう。」

チョロ「うぉぁーん、ぅん(私こそ、ありがとう)」


老婆は背もたれのいい椅子から離れ、暖炉の前で伏せをしている柴犬チョロの小さくて狭いおでこを優しく何度も撫でた。
チョロも完全に安心している。老婆の手の動きが兄ちゃんによく撫でてもらっていたような同じ動きだったからだろう。反射的にかみつきたくなったり、警戒したくなったりはしない。


(えへへへ、この撫でられるのが本当に気持ちいいんだよね)


老婆「チョロよ、お前さんとじっくり話したい気分なんだが………よければ人間の言葉を話せるようにしてあげようかい?」

柴犬チョロは首を左右に何度も傾けながら、考えている様子。
そんなことが本当にできるのか、疑っている感じでもう一度首を傾けた。

老婆は両手を赤いフードにつかみ、自分の頭を出してみせた。鼻が少し高めで耳も大きめだ。耳たぶもしっかりある。しわが多いので目はちょっと細目になっているけど、目の奥には生命力に満ち溢れているように生き生きしている。髪の色は老婆なので白色だ。これは年相応だろう。

老婆「あたしぁ~ねぇ、これでも威厳のある立場として、ここで暮らしているのさ。」とチョロのふんわりとした喉元から胸のふさふさした毛をゆっくりさすりながら話す。
するとキラキラと光り始め、だんだんチョロの声帯のあたりに入り込むようにしてスゥーと消えた。

「さぁ、声を出してごらんな。」老婆がまたチョロのおでこを撫でた。


『これって魔法とかいうやつ?おばあさん…』


(!!!!!!?)

チョロは人間の言葉を発したが、同時にビックリして柴犬の両耳がぴんとアンテナを指すようになり、瞳なんかはもう真ん丸にして落ち着かなくなってしまった。


『しゃべった……わたし』

老婆「どうだい、初めて自分の声を人間と同じように話せて?」

(頭の中では人間の言葉を使えていたけど、″声”として音を発してさすがに驚いてしまった。私ってこんな声だったんだ。)

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