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サンタさんになった話

サンタクロースをいつまで信じていたかなんてことはたわいもない世間話にもならないくらいのどうでもいい話だが、それでも、俺がいつまでサンタなどという想像上の赤服じーさんを信じていたかと言うと、これは確信を持って言えるが、最初から信じてなどいなかった。

涼宮ハルヒの憂鬱

サンタさんの話題になると、いつもこの小説の冒頭を思い出す。
「涼宮ハルヒの憂鬱」は当時、おそろしいほど流行した。
たぶんみんなハレ晴レユカイを踊れたんじゃないかと思う。

そんな私もいよいよサンタさんになる番がきたらしい。
といっても、直接子どもにプレゼントを渡すのではなく、本を寄付してサンタさんになろうという活動だ。

ブックサンタになろう

経済的に厳しい状況におかれている子どもたちに本をとどけるという活動を知ったきっかけは、ツイッターだった。
ずいぶんステキな人たちがいるものだと嬉しくなった。

中高時代はハルヒやなんやに踊らされた私だが、その原点は、母が読み聞かせてくれたたくさんの絵本や、家にあふれるほどあった小説や漫画だ。

本を読まない人が増えているとさけばれるいま、読みたくても読めない子たちをすこしでも支援できたらーー

ふだんあまり良い行いをしていない私だけど『クリスマス・キャロル』のスクルージ爺さんさながらに、聖夜くらいはちょっと良い人になってみることにしたのである。

とまあ、とりつくろった建前はあるのだが、実際にやってみると好きな本をどれだけ買っても罪悪感がないという麻薬的な快楽を得られる、ヤバすぎる行為だということがわかった。

自分で本を買うときは、すでに満杯になった本棚や、うず高くなかった積読の山を思い浮かべて手が止まるのだが、人に寄付するとなるとこのリミッターが外れるらしい。

いざ本屋へ!

ブックサンタへの寄付は、協賛しているリアル書店か、専用のオンライン書店、もしくはクラウドファンディングという方法がある。
私はせっかくなので実物を見ながら考えることにした。

都内の某書店に足を運び、まずは絵本のコーナーをぐるり。
小学生向けの読み物が不足しているとのことだったので狙いは児童文庫だが、いちおう全部まわってしまうのが本好きの習性である。

クリスマスフェアの棚を丸ごと買いかねない自分を抑えながら、かつて読んだ、好きだった本を選んでいく。
自分にとっては何百分の一冊にすぎないけれど、子どもたちにとってはかけがえのない一冊になるかもしれない。
自然と選書も慎重に、真剣なものになる。

30分ほどかけて、4冊の文庫本を手にとった。
ある程度事前にあたりはつけていたのだが、欠品しているものもあって、代替品を探しているうちに時間がかかってしまった。

レジに持っていって、ブックサンタでお願いしますと言うと、
「ありがとうございます」と店員さんがニコリ。
お会計がすむと、私が大好きな本たちはレジの向こうに消えていった。
きっとどこかにいる子どもたちに、楽しい時間を与えてくれることだろう。

引き換えにステッカー(なぜか2020年版だった笑)と、寄付者のみが見られるサイトのURLが書かれたチラシをもらって、おしまい。
あとにはほんのりと温かくなった気持ちだけが残った。

ステッカーが可愛い


購入した本をご紹介!

・そして五人がいなくなる

私の原点にして頂点のはやみねかおる先生の作品。
この本をきっかけにミステリーに触れたという人も多いのではないだろうか。
さすがに20年くらい前ほど流行ってはないけど、いつまでも読みつがれていってほしい。

・もしも病院に犬がいたら

物語は読めないけど、ノンフィクションなら好きという子も一定数いる。
犬猫は定番なんだけど悲しいやつも多いので、病院でファシリティドッグをしているお話を選んだ。
こんな犬が身近にいたらいいなーと感じてくれたら。

・カラスの教科書

私はけっこう生き物系の本が好きなので、そのなかでもイラストが可愛くて身近なものを選んでみた。
カラスはすぐそばにいる生き物だからきっとすぐ観察してみたくなる。
図鑑じゃない本でも楽しめることを知ってもらいたい。

・極夜行

これはちょっと趣味を押し出しすぎてしまったかもしれない……と思いつつ、3年前に読んだ本の中でいちばん面白かったので選んだ。
暗い暗い夜の中でも、ユーモアをわすれず冒険できることを伝えてくれる本。
ちなみに去年と一昨年のベストは「三体」なんだけどさすがに難しすぎるので断念。


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