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「自由な働き方」と「多様な働き方」は似て非なるもの、働き方改革に必要な個人の主体性

「多様な働き方」の実現には「ある程度の自由度」が必要です。在宅勤務、モバイルワーク、フレックス、育児・介護休職、時短勤務、複業、といった勤務制度にしても、フリーアドレス、ABW、ノマド、コワーキングスペース、共創空間、といった場・環境にしても、画一的で自由度の少ない働き方しか認められていなければ多様な働き方は実現できません。

しかし、ちょっと立ち止まって考えてみたいのが「自由な働き方」と「多様な働き方」について。どちらも、働き方改革に関連してよく使われる言葉ですが、両者が持つ意味は同じではありません。

もう少し具体的に言えば、「制度から生まれた多様な働き方」と「自由から生まれた多様な働き方」は似て非なるものだ、ということです。例えば、以下のような働き方からはどんな印象を受けますか?

子育て期の社員はいくつかの勤務時間パターンから選んで短時間勤務が可能。申請すれば週に3回まで在宅勤務してもよい。また、営業職は自宅とセンターオフィスの間にある社内の別拠点をサテライトオフィスとして、そこで仕事をして直行直帰してもよい。

これは前者の「制度から生まれた多様な働き方」だと言えるでしょう。会社が社員のライフステージや職種・居住地などをふまえて、「こういう働き方を認めてあげよう」と社員に制度をプレゼントしている感じです。

では次に、以下のような働き方からはどんな印象を受けますか?

仕事の内容に応じて、あるいは、メンバーとのコミュニケーションに必要と思えばオフィスに来ればいいし、自宅での作業の方が捗ると判断すればオフィスには来なくてもいい。オフィスでは必ずしも仕事をし続ける必要はない。昼寝をしてもいいし食事だけして帰っても構わない。

もし、こういった働き方を社員全員が実践できているとしたら、それは後者の「自由から生まれた多様な働き方」であると言えるでしょう。会社は働く場所や時間を主体的に決めるよう従業員に求めていて、ワーカーが自ら「働き方をつくる」イメージです。

ここで例にした2つの働き方は、働き方改革というキーワードで括ってしまえば、どちらも「自由度のある多様な働き方」と表現できてしまいますが、決定的に違うのは "はたらく" をワーカーが主体的にデザインしているかどうか、という点です。

働く場所も、働く時間も、会社に決められていない、というような「自由な働き方」は、ヴイエムウェアなど大手企業でも実現している会社はありますが、共通しているのはワーカーの自律性が高く、"はたらく" を主体的に捉えられていること。

上の写真は2018年1月にオープンしたシアトルの "植物園型ワークスペース" として話題を呼んでいる " Amazon Sphere " の中にあるリラックススペースですが、こんなスペースがあったとしても、多くの日本企業では「周りの目を気にしてしまって、休める場所はあっても結局誰も使わない」となってしまうのではないでしょうか。

自由なスペースをうまく使いこなしながら、一人ひとりが自分に合った "はたらく" をデザインできてこそ、働き方は多様になるとともに、生産性も創造性の高い働き方が実現されるのだと思います。

主体性のない働き方改革からは、表面的な多様さは生まれたとしてもイノベーションは生まれない、と強く感じている今日この頃です。

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