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パーソナルスペースの違いから考える、「自分がされて嫌なことを相手にしてはいけない」の危うさ

人と接する時、そこには自分と相手の境界線があるよね。でも厄介なのは、自分と相手の境界線がずれてる事。

自分の境界内(パーソナルスペース)に相手が侵入してきて不快な思いをしても、相手にはそれはわからないんだよね。だからその不快感を態度で示す。そしたら逆に相手はその態度を失礼だと怒ったり…。だってそもそもその相手に悪気はない(不快な思いをさせているとは気づいていない)んだからね。

例えば、電車でくっついて座ってくる人や、列に並んでる時にピタッと背後に並ぶ人や、すごく個人的な事をズケズケと質問してくる人とかは、「相手が不快に思っている」ことに気づいてないんだよね。

だからね「自分がされて嫌なことを相手にしてはいけない」は、時には大きな間違いを犯しかねないんだよね。だって「自分が嫌だと感じる事」と「相手が嫌だと感じる事」は違うわけだから『自分はそれをされても嫌じゃないから、嫌がるあなたがおかしい』の危うさが潜んでいる可能性があるんだよね。

だから見えない境界線を「相手にわからせよう」「空気読んでわかってよ」とする事よりも、自分の不快な気持ちを言葉で伝え、お互いの認識の違いが「見えるように/気づけるように」可視化するのは、不快に感じた人だけができる解決策なんじゃないかな。「私は、そこはちょっとそっとしておいてほしいな。悪気がないとは思うけど」って。

そして不快感を知らずに与えてた人は、「私はそうは思わない」じゃなく「嫌だと相手が言うならやめておこう・気を付けよう」と思えたら、その場は丸く収まるんだよね。


ーー人とくっつきすぎたり距離をとりすぎたりする自閉症の人たちーー
自閉症の人たちは、そのパーソナルスペースの境界線があやふやな事が多いんだよね。

それは心の理論が未獲得だったり、感覚の問題からくるボディイメージの問題だったり…。「自分」と「外」の境界がないケースだと、相手に失礼な事を言っちゃったり、相手の顔に近づきすぎて話しちゃったり…。でも、悪気はゼロなんだよね。

でもね、社会の中で生きていく上で「悪気がないから」で済まされない事はいっぱい。だから、

●「物理的なパーソナルスペースを知る」→「相手にも同じくパーソナルスペースがあることを知る」ことや

●「自分の心や気持ちの境界線を知る」→「相手にも感情がある」って知ることで、

まず「自分を知る」ところからソーシャルスキルの獲得を始めて、そこから「相手」の存在や気持ちに気づいていけるようになると生き辛さが解消されていくんだよね。

相手との適切な距離の取り方を覚える為に「握手する為に手を伸ばした距離で立ち止まりましょう」と指導する場合もあるんだけど、私はこれでは「相手の気持ちや境界線の違いの存在に気づく」っていう大切なことを学べないんじゃないかなって思うのね。

だからね、息子がアメリカの小学校の支援級で繰り返しやっていたパーソナルスペースを知る方法がおすすめ。

 (1)相手と数メートル離れて向い合って立ち相手に近づいていく。自分が「話すのに丁度いい」と思う距離で止まり、その地点に印をつける 
(2)今度は同様に近づいて行き、相手が「話すのに快適な距離」と感じた所でStopをかけてもらう この距離の違いを知るのが大切

息子の場合、感覚の問題があってボディーイメージが弱かった(※自分の体がどこまであるのかと外の世界との境界があいまいだってことです)のと相手の目を見て会話をすることが当時できなかったから、このトレーニングを始めた頃は、顔と顔がくっつくくらいまで(1)の段階で相手に近づいていっちゃったんだよね。当然練習相手の子に嫌がられてた。「ちょっと寄り過ぎ!気持ち悪い!」って…。(そういう子たちは、また、適切な気持ちの伝え方・言い方を教えてもらってた)

それが、相手に「話すのに快適な距離」でストップをかけてもらって「自分の快適」と「相手の快適」に違いがあることを知る事や、相手の子の「ちょっと近づきすぎで気持ち悪いからもっと離れて」っていう「相手の子の気持ち」を知っていく事で、「パーソナルスペースが自分だけのものじゃなく、誰かとの関係性で変わる」っていうソーシャルスキルを学んでこれたんじゃないかなって思うのね。

息子とは逆に、体の感覚が過敏過ぎて、他の人や物との接触を避けようとする自閉症の人も多いんだよね。だからね、たまに列に並んでいる時に、ぜんぜん前につめない人がいたらもしかしたらその人にとっての安心できる空間(パーソナルスペース)が違うのかも。

近づきすぎる人、距離をとりすぎる人、原因はここに書いたことだけじゃないとは思うんだけど、こんな風に感じ方が違う人の存在を知ってもらえたら嬉しいです。

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